第30話 ギルド認定試験終了

『これは一体どういう事でしょうゥゥゥゥ!! 《セラフィックドラゴン》が春陽選手の前に現れたと思うと、突如彼の身体に吸い込まれたように見えましたが、これは……どう勝敗をつけたらいいのでしょうかァァァ!!』


 なんだこれ?

 俺の体内に神龍の魔力を感じる。


 (春陽、我は今、お主の体内に潜んでいる。 クローンとは言えど外の世界が気になるのでな、少し邪魔するぞ )


 おいおい、どういうことだ?


 (外の世界に口出しもせん。 少し着いてまわるだけだ。 それに自分と同等の強さを持つお主にも興味が出た。 )


 つまり俺の身体を宿にして、外の世界を旅したいってことか?


 (そういうことだ。 それと我は昔、人々には神龍と呼ばれていたが、『アウロラ』という名前があった。 そう呼んでくれて構わんぞ。ではな、春陽よ! )


 アウロラはそう言うと、俺の体内の深層へ潜り込み、彼の魔力も同時に感じなくなった。

 あくまでそういう感覚がした、というだけだから本当に深層へ潜ったのかは分からんがを

 というか、名前を教えてくれたということはあいつちょくちょく出てくるつもりなのか?


 アウロラと会話していた間、会場と解説者リリアンは沈黙が続いていた。

 さてこの状況どう説明するかなぁ。

 まぁ適当に誤魔化すか。


「えーっとですね、俺の魔法で吸い込んだので俺の勝ちでいいですか? 」

 実質俺はアウロラに実力で負けた。

 これで勝ちにするのも皮肉だが、レオンとの賭けのためだ。

 エレナをガッカリさせるわけにもいかないしな。


『なんと!! 詠唱こそしてはいなかったですが、あれは春陽選手の魔法だそうですゥゥゥゥ!!! にわかには信じがたいですが、これほど強力な魔法の数々を見ていれば信じざるを得ないでしょうゥゥゥゥ!! それに《セラフィックドラゴン》の姿も見えないことから、こちらとしても春陽選手の勝利は間違いと判断致します! 皆さん、初のSSランク冒険者誕生に大きな拍手を!! 』


 パチパチパチパチッ───


 これ以上ない拍手、声援が鳴り響いた。


 え……!?

 俺、SSランク冒険者なの?

 これは予想してなかった。

 とりあえず冒険者としては、今のところやっていくつもりないから荷が重いんですけど……。


 そして鳴り止まない声援の中、俺は待機室に戻った。


「主様ぁ〜♡ やっぱりエレナが選んだ王子様は強いんだね!」

 いつもの調子でくっついてきた。


 いつも通りのエレナは置いといて、レオンだ。

 アイツはどこにいる?

 待機室を見渡すとすぐに見つかった。

 端の方で3人揃って俯いている。


「おーい、そこのモブ三人衆! 」

 俺の言葉にビクッと肩を震わせこっちを見てきた……が、何も言う素振りはない。

 なので俺は続けて、

「賭けの件だけど、とりあえず冒険者辞める云々は置いといて、俺とエレナ、あと魔術学院の生徒にはちょっかい出さないでくれ! 学院の生徒のミアとカイルは友達なんだ 」


 と言うとレオンは拍子抜けした表情で、

「……え? 俺、冒険者辞めなくていいのか? あんなひでーこと言ったり、調子乗って賭けまでして…… 」


「まぁそれもそうだ。 確かに腹立ちはしたけど、お前が冒険者しようが辞めようが関係ないし、興味もない。 ただ、俺の友達に次ちょっかい出すようなら容赦なく叩きのめすから、その時はよろしくね! 」


 レオン、ディラン、ヴィクターのモブ三人衆は怯えた様子で、うんうんと首を縦に振り、それ以上は何も言ってこなかった。

 周りの人もいるので、一応気を使って優しく言っておいたが、それでも怖いもんかねぇ。

 もしかしたら笑顔で言ったのがいけなかったのか。

 やはり同じ人間相手から怯えられるのは気持ちいいもんではないなぁ。

 喧嘩を売られた時以外は良好的な関係を築きたいものだ。

 今回の件で俺は改めてそう思った。


 これで終わりと思いきや、残り3人の挑戦者いる。

 ここまでSランク冒険者2人、SSランク冒険者が1人と前代未聞と会場が盛り上がってる中試験を受けるのは苦しいものがあるだろう。

 心中お察し致します。


 と、残り3人はAランクモンスターにやられるという普通の展開で試験は幕を閉じた。

 うんうん、これが普通だよきっと!と思って見ていたが、会場の盛り下がりってたらありゃないな。

 原因は俺たちなんだろうけど。

 ともかくこれで試験終了だ。


 ◇


「……春陽さん! エレナちゃん! お疲れ様です! 試験……とっても感動しました!! 」

 冒険者ギルドへ戻った俺たちはミア、カイルと合流したが、ミアは珍しく興奮して感想を伝えてくれた。

 カイルは俺たちの試験を見て、自分も戦いたくなったのか、「うぉぉぉぉ」とか言っている。


 エレナが少し疲れを見せて、ミアに身体全てを預けるほどもたれかかったところで寮に戻るかという話になったので、俺たちは各自寮に戻りゆっくりと過ごした。


 そして2日が経過して、魔術対抗試験の日となったのだった。

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