第11話 派閥?

 と。考えていたのはどうやら私だけじゃなかったらしくブルーが突然。

「なるほど。となると毎週日曜の朝に敵の怪人を倒すという受け身だけではなく、今後は他の時間帯でも積極的にそやつを探していく必要が出てくるのでは?」

 えっ?

「ちょ、ちょっと待って! 他の時間帯って私平日は会社あるし、土曜はミーテイングで日曜は戦闘だからスケジュールかなり厳しいんだけど?」

 確かに不可能なスケジュールじゃあない。けど現実的に考えてかなりタイトで厳しいスケジュールになるのは否めない。なので簡単には賛成出来ないな……としていると意外な事にあの男が乗ってきた。

「俺もだな。平日は学校があるから無理だ」

「え? レッドって学生だったの?」

「ああ、現役の高校生だ。異世界転移でスローライフと言えば学園に入って無双するのがお決まりだろう? だから俺も高校で青春を謳歌している」

 いや、その常識は私にはちょっとわからないけど……でも理解は出来なくもない。ただ勉強はどうだかしらないけどオリンピックに出場したら1人で金メダル何十個も取るだろうコイツが本気だしたら体育の授業で世界新記録がバンバン出ちゃうけど大丈夫なの? ……と思ったけど、そうならないようにスローで学園生活を満喫してるのか……。


 というところでグレーちゃんが片手を上げ。

「あの〜皆さん忙しいようですがご存知のように私はフリーターなので土曜のミーティングと日曜の戦闘以外は基本暇なのでスク水探しはいつでも出来ますけど?」

 そこに続いてブルー。

「私も歌って踊れる独裁者なので基本は暇ですな」

 独裁者って暇なのっ? あ、いやツッコムところはそこじゃなかった気もするけど面倒臭いからもういいや……。


「つまり現状俺達は忙しい組と暇組に分かれているワケだが――」

 とまとめに入る感じのレッド。

「忙しいのを理由にスク水探しを怠るのは危険――バナナワニ園のバナナが脱走するのと同じくらい危険だと考える」

 バ、バナナが脱走するのっ? ワニじゃなくてっ!?

「確かにそれは危険ですな。ライオンの檻にシマウマの檻だけを放つようなもの……」

 いやそれライオンの檻が狭くなるだけじゃん! 危険の譬え下手くそかレッドもブルーもっ!


 しかしその下手くそな譬えでも何故かグレーちゃんには通じたらしく。

「なるほど。大変危険だというのは良くわかりました。では忙しいレッドさんとピンクさんはこれまで通りのスケジュールで。そして暇で3日に1回は犬のウンコを踏んでしまう私とブルーさんが他の時間帯でもスク水を探す……というのが現実的ですかね?」

「確かにそれが現実的だが、そのウンコは本当に犬のウンコなのか?」

 なんの心配してんだレッド?

「はい。ちゃんと犬がしたのを確認してから踏んでいるので大丈夫です」

 全然大丈夫じゃなくない? なんでワザワザ確認してから見えてる地雷うんこ踏みに行くかな? 新手の宗教の儀式か何かか?

 と私が考えているとレッドが続ける。

「ならいい。だが実際問題本当にその組み合わせで大丈夫なのか?」

「ん? どういう事?」

 これは私。

「例えばだ。俺は『赤いきつね』と『緑のたぬき』だったら『緑のたぬき』派だ」

 レッドのクセに?

「ピンク。お前はどっち派だ?」

 え? 私? どっちかっていうとうどんの方が好きだから――

「赤いきつねかなぁ?」

 と小首を傾げていると、まるで用済みと言わんばかりのスルー気味でレッドは次へ行く。

「グレー。お前はどっちだ?」

「私も赤いきつね派です」

「ブルー。お前は?」

「私は緑のゴリラ派ですな」

 赤いきつねと緑のゴリラ……後半急にゴツくなったな!


「な? わかったろ?」

「何が?」

 同調を求めるレッドだけど今ので何を覚れというのよ?

「ならピンク。お前は『きのこの山』と『たけのこの里』ならどっち派だ? 因みに俺はきのこ派だ」

「えっ? た、たけのこだけど……さっきから何なの? これになんの意味があるの?」

 と言ったところでやっぱりレッドは私を無視。

「グレー、ブルー。お前達は?」

「たけのこです」

「きのこですな」

 ここでようやくレッドは私に視線を落ち着かせ。

「わかったか? 高々2つの質問でもこうして派閥が生まれる。なのに安易に組み分けをしてよいものか……と俺は懸念していたのだ。特にきのこたけのこ問題は人命に関わるほど深刻だ。きのこ派だった織田信長はたけのこ派だった明智光秀に裏切られて命を落としたくらいだからな……」

 ほ、本能寺の変ってきのこたけのこ戦争の延長線上だったのっ? 歴史家もビックリな私怨じゃん!


「いやあのさ、私とレッドも極力グレーちゃんとブルーに協力するって事で私達は妙な派閥作らないでスク水探ししようよ。でないと地球の平和は守れないと思うんだけど?」

 するとレッドは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ。

「くっ。俺とした事が……すまないピンクその通りだ。俺達は血こそ繋がってないが家族のようなもの。シルバニア家族ファミリーだ。きのこの山でもたけのこの里でもない……『パイの実』派として全員で一丸となって事に当たろう」

 だから妙な派閥作るなって言ってんじゃろがい!

 と。しているところにグレーちゃんとブルー。

「おっ? パイの実?」

「おっぱいの実?」

 やめろ。

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