第044話 不運は重なる

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」


 普通なら2日程かかるところを最深部まで1日で辿りついた。一切休むことなく、走り続けたおかげだ。


 皆からの恩恵のお陰で夜目も鼻も利く。これなら2日間は探索に充てられる。


 サーシャに手伝ってもらったおかげもあって、最深部の東側と北西部分は粗方探したから残っている南西に懸ける。


 ルナ、プルー、クロロを牧場から外に出して手分けして探し始めた。


『シャアアアアッ!!』


 しかし、こういう時に限ってなぜかモンスターに見つかり、戦闘になってしまう。


 しかもCランクモンスターの群れと。


 今戦っているのはジャイアントスネークの群れ。


 どこもかしこもウネウネしていて気持ち悪い。


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『シャァアアアアッ!!』

「邪魔だぁああああっ!! アイスニードル×8!!」


 襲い掛かってくるジャイアントスネークに、弱点である氷属性の攻撃を仕掛ける。


『ギャアアアアッ!!』


 ジャイアントスネークは攻撃の瞬間以外はそれほど素早くないため、全ての個体に直撃した。


 それで奴らの動きがさらに鈍くなり、一匹ずつ首を斬り落とす。


 魔石を抜いている時間はない。


 幸いサーシャによるスパルタなレベルアップによって、従魔たちのレベルがかなり上がったのと、相手に弱点があったおかげでどうにか一人でも倒すことができた。


 戦闘が終わるとすぐに探索を再開する。


 しかし、探せども探せども神秘の祈りは見つからない。無情にも時間だけが過ぎていく。


「ぐぁっ!?」


 集中力を欠いたところで、いきなり飛び出してきた木の根に足を取られ、宙吊りにされてしまった。


 ちっ、トレントか!!


 この森にはトレントがいることをうっかり忘れていた。


「はっ!!」


 俺は蔓を斬り落として地面に着地する。


「うわっ!?」


 すると、地面の至るところから木の根が噴出して俺に襲い掛かってきた。


 感覚を集中させると、この一帯の木が全てトレントだということが分かった。多すぎてステータスボードが確認しきれない。


 俺はいつの間にかトレントの巣に迷い込んでしまったらしい。


 無数の木の根や蔓が俺に襲い掛かってくる。


「はぁああああああっ!!」


 俺は全力で斬り払う。


 しかし、トレントの数が多すぎた。


 木の根や蔓の数が増し、徐々に対応しきれなくなって、頬や足などに掠って切り傷が増えていく。


 くっ……このままじゃジリ貧だ。


 本来森の中では火魔法はご法度だけど、トレントは普通の木よりも燃えにくい。周りが全てトレントなら燃え広がらないはずだ。


 死ぬわけにはいかないので俺は火魔法を放った。


「ファイヤーボール!!」


 ――ドォオオオオンッ


 威力の上がったファイヤーボールは、トレントの根や蔓を焼き払って本体に直撃。


 火が付いたトレントはガシャガシャと枝葉を動かして抵抗するも、徐々に動かなくなって燃え上がった火が小さくなって消えた。


 後に残ったのは炭のように黒くなったトレントの死体。これならファイヤーボールを連発しても大丈夫そうだ。


「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール……」


 俺は剣から魔法主体に切り替えてファイヤーボールでトレントの数を減らし、ある程度減ったところで、再び剣に切り替えて切り殺していった。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……倒せた……急がないと……」


 俺は疲れた体を引きずって探索を再開する。


 しかし、俺への試練は終わらない。


「今度はブルーベアかよ……勘弁してくれ……」


 さらにブルーベアの群れと遭遇した。


 まさか、こんなにモンスターの群れに発見されるなんて厄日に違いない。


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 幸いなのは、このブルーベアの群れの個体は若くてレベルが低いことだ。


 ブルーベアは弱点らしい弱点がないけど、これならどうにか倒せるはず。


『グガァアアアアッ!!』


 俺は襲い掛かってくるブルーベアの攻撃を避け、隙をついて剣で斬り裂いた。ヒット&アウェイに徹することでどうにか退けることに成功した。


「はぁ……はぁ……これ以上は頼むぞ……」


 俺の願いは届いたのか、それ以上モンスターの群れと遭遇することはなかった。


「クゥッ」

「ピッ」

「ニャーンッ」


 その後で皆と合流したけど、全員成果なし。


 丸1日かけても神秘の祈りの影も形も見つけることができなかった。

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