第301話 試験
「導師。試験ではドラゴンシールドも使えないといけないんですか?」
僕は夕食の席できいた。
「宰相はそのつもりらしい。龍属性を階級ごとに分けるようだ。少なくとも龍帝級は、魔法のドラゴンブレスとシールドを使えないとならないらしい」
「ハードルは高いですね。他の魔術を魔法にするだけで、苦労していると聞きますよ」
「龍属性は特別視されている。ドラゴンブレスを使える。それだけで魔術師でも特別視される。それだけ強い魔法なんだ。おまえは簡単に使っているが、ふつうは違うと覚えてくれ。嫌味になるからな」
「わかりました。……それで、僕の仕事は、なんですか?」
「審査員だな。宮廷魔導士の代表でもドラゴンブレスは使えない。なので、ドラゴンブレスを使えているか見て欲しいようだ。それに、魔術だけか、魔法になっているか、判断して欲しいようだ」
「では、魔術師と魔法使いの区分けには参加しないんですね」
「ああ。龍属性の話だけだ」
僕が呼ばれた理由に納得した。
貴族でドラゴンブレスとシールドの魔法を使える人はいないようだ。
導師だけで判断してもいいが、審査員が一人では不公平になりやすい。なので、仕方なく僕を使うようだ。
家庭教師のギードは帰ってくるが、家庭教師の仕事はしていない。
魔法使いとして、裏庭で練習していた。
「一週間の辛抱です。その間は私が教えます」
礼儀作法を教えるアデーレ・カペルマンはいった。
「魔法陣は描けるんですか?」
「できません。ですが、読み書き計算はできます」
僕は魔法の授業をして欲しかった。
「最低限の読み書きはできないと、将来、笑われます。宮廷魔導士が資料を読めないと笑われますよ」
アデーレの中では僕は宮廷魔導士になるようだ。
「僕でもなれるんですか?」
「私の知る宮廷魔導士より魔法は使えています。魔法陣は勉強中と聞いているので、考慮には入れてませんが、できるようになると思っています」
「宮廷魔導士になれる方法を教えてくれませんか?」
「それなら、簡単です。お母様の推薦でなれます」
「それだけですか?」
「ええ。シオン様は伯爵です。貴族なので宮廷魔導士になれます。ですが、養子のため地位は低くなりますが」
貴族社会の中では、宮廷魔導士でも同じらしい。
「計算はできると聞きましたが、読み書きはふつうと聞きました。今回は読み書きを集中的に覚えましょう。ギードさんが帰ってくるまでの辛抱です」
アデーレがいう通り、辛抱するしかないようだ。
僕はこの世界の言葉を覚えるという苦痛に耐えていると、魔法の試験の最終日になった。
僕は朝から導師に連れられて城に登城した。
係の人とに連れられて、一つの塔に入った。そして、二階に登ると、外の風が吹き抜ける場所に出た。
外との扉はない。その代り、街が一望できた。
導師にきくと、今日の審査会場らしい。
ドラゴンブレスという危険な魔法なので、空に向かって撃つように配慮しているようだ。
「こちらにお座りください」
係の人にいわれて、導師と並んで座った。
「導師。机が邪魔で前が見えません」
僕の身長では大人用の椅子は合わなかった。
導師は係の人にいうが、高いイスはないらしい。
「半日、浮かべるか?」
「ええ。問題ありません」
僕はイスに座ることなく浮遊魔法で浮かんでいた。
紅茶をすすっていると、宰相が現れた。
そして、続いて係員を先頭に、受験者がぞろぞろと現れた。
数は二十人ぐらいだった。
身なりはキレイな人もいれば、すり切れた服を着ている人もいる。術士は少なく、傭兵が一番多いようだ。
「では、龍属性の階級試験を行う」
宰相は拡声器のような魔道具で話している。
「皆にはドラゴンブレスとドラゴンシールドを見せてもらう。だが、その前に階級の判断基準を話す。龍属性は魔法のドラゴンブレスとシールドができて、龍帝級とする。そして、龍公級は魔術のドラゴンブレスとシールドとする。それ以下は候級とする。質問はあるか?」
「はい」
一人の杖を持った魔法使いらしき男は手を挙げた。
「ドラゴンブレスだけを魔法で使えても、候級でしょうか?」
「もちろん、そうなる。ブレスとシールド。二つそろって認められる」
「シールドはどこで習えばいいのでしょうか?」
「以前、城で教えたのだが、不評で今は教えていない。巻物を買って欲しい」
「わかりました」
男は手を下げた。
「他に質問はあるか?」
一人の女性が手を挙げた。
「審査員はランプレヒト公爵のお二人と聞きました。ですが、子供がいます。彼がシオン伯爵なのでしょうか?」
「そうだ。見た目と年齢は見ての通りだが、ドラゴンブレスとシールドを魔法で使える。そのため、審査員とした。ザンドラ・フォン・ランプレヒト公爵だけでは不公平になる可能性がある」
「ですが、子供ですよ」
女性の意見はよくわかる。僕でも文句をいいたいだろう。俳優の審査員が子役で有名でも僕は受けたくない。
「ドラゴンブレスを使える人間は少ない。貴族でも
宰相はいった。
女性は僕に嫌な視線を飛ばすのをやめた。
「では、最初に見本としてドラゴンブレスとジールドを実演してもらう。シオン伯爵。ここに」
僕は導師を見た。
「おまえは使えるのを見せないと納得しない。見世物だが、こらえてくれ」
僕は浮遊魔法をやめて、地面に立った。
実演は最初から知っているので見世物でも構わない。
「行ってきます」
僕はそういって宰相の横に歩いた。
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