第96話


「凄いな、ルナ。そんな事までわかるのか。俺は美味しいって事しかわからないよ」


「えへへ、もっと褒めていいんだよ」


「でも、ルナのご飯も美味しいよ。本当、毎日食べたいよ。ん? ……これからは、毎日食べれるのか? いやでも、他の町に着いたら色んなご飯をたべるんだから、道中だけか? な、ルナ」


「えへへ、えへへ~。褒め過ぎだよ~」

 

 返事が返ってこない。どうやら途中から聞こえてなかったみたいで、上機嫌で「クルクル」回っている。



「あっ、ちょっ……ルナ! 前、前! 」


「んぎゃ! 」


 そのままアンリおばさんの家に激突した。


 顔から外壁に激突したルナはそのまま、壁と一体になった。


 変換器を付けているからケガは無いと思うのだが、固まったまま一向に動かない。



「おいルナ。大丈夫……」


 ルナに声をかけようとした時、家の中から「バタバタ」と足音が響いてきた。



「誰だい! 家の壁を殴るのは! 」


 アンリおばさんが凄い形相で顔を出した。



「ん? なんだい、アレクスちゃんじゃない。誰かと思ったよ。……おや、ルナちゃんはどうしたの? 今日は一人かい? 」


「アンリおばさん、こんばんは。今日もお世話になります。えっと……ルナは……そこ……に」


 ゆっくりと外壁の方を指差す。そこには壁を抱きしめているルナの姿があった。

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