カク03:ただ見上げ伸ばす角無き蝸牛

ただ見上げ伸ばす角無き蝸牛

ただみあげのばすつのなきかたつむり


季語:蝸牛



 蝸牛も蛞蝓も共に季語。生物としては似た存在になるが、殻があるかないかだけで大きくイメージは違うかもしれない。

 蛞蝓は狭い隙間に隠れることが出来るが、蝸牛は殻がある為に隠れることが出来ない。丈夫なのか脆いのかも分からない殻に閉じ籠る蝸牛。


 それならば、殻のない蛞蝓の方が自由なのかもしれない。


 ベッドで寝たきり。そして点滴に繋がれ、自由に動けない。でも、私は蝸牛ではなく人。大きく伸ばし、覗き見る蝸牛の角も持っていない。

 もし蝸牛が角を失えば、空を見上げるように首を伸ばすのだろうか?


 シンプルな有季定型。蝸牛の動きの遅さ。そして、「伸ばす」した後に「無き」で消す。僅かな動きをすら出来ない、不自由さを意識した句。

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