俳句47:凍て風は妻の振るいし歯みがき粉

凍て風は妻の振るいし歯みがき粉


季語:凍て風


 我が家には、些細な勝負がある。それは、誰が歯みがき粉を交換するか。振れば出てくる歯みがき粉を、どこで無くなったと判断するか。そして何故か、交換する方が負けた気がする。


 些細なことで始まった争いは、一年以上続いているが、私は負け続けていた。もうこれ以上は出ないと思っても、そこから簡単に一回分を出す妻。


 しかし、遂にその争いは終焉を迎える。


 蓋が完全にしまっていなかったのか、それとも振りが強過ぎたのか。残り少ないとはいえ、ブブブッという音と共に洗面所に歯みがき粉を撒き散らした妻。


 貴重な朝の時間を浪費し、惨劇を繰り返すまいと、ほぼ空の歯みがき粉は捨てられるようになった。しかし、空が捨てられるだけで、新しいものは用意されていない。


 こんなことをしているのは、きっと我が家だけ。負けず嫌いの似た者同士。

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