第24話『茜色の中で』




上総かずさ町住宅街 17:34]



 仁は夕暮れの住宅街をゆっくりと歩いていた。

 新太はこれから道場とやらに行くらしく、早々と帰ってしまった。

 夜までの手持ち無沙汰な時間。

 何気なく上へと目線をやると空は既に茜色に染まり、どこか物寂しさを感じるような気がした。


「天」


《……何だ》


 仁の呼びかけに応じたのは、「天」こと霊獣型の式神、つまりは真っ白な仁の相棒だった。


「新太の、やっぱりそういうことだよな?」


《……恐らく、私もお前と同じ考えだ》


「だよな……」


 先ほど目の前で繰り広げられた光景を仁は思い出していた。

 霊力のみで起動する式神―――――見たところ、構造も術式も簡易的で、恐らく老若男女問わず陰陽術を使用可能にしたものなのだろう。

 その式神を新太は起動することすら苦労していた。

 挙げ句の果てに起動すらできなかったが。


 ―――――俺と天が、新太に感じた違和感。

 それは……。


 霊力の貯蔵が少なすぎる。


 陰陽師云々いう前に、一個体、一人間としての霊力が絶望的なまでに微弱。

 まだ生まれたての子どもの方が生命力に満ち満ちている分、マシな霊力をたずさえている。

 陰陽師志望であるなら、明らかにマイナスと言っていい特異体質ではある。

 ……いや、違うな。

 もっと根本的な問題だ。

 俺は、

 あれは言うならば。



 不意に。

 思考の最中、夕暮れで伸びたが視界に入った。

 仁、そして当たり前だが天のモノではない。


 視線を前にもどすと、仁の進行を遮るかのように、誰かが立っているのが分かった。


 そして。

 その人影とことに気付き、仁はゆっくりと口を開いた。



「……俺に、何か用?」





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