第12話 ヒールと再生

 俺はギルド内を見渡すがヒーラーの数が少ない。アネットはすぐにけが人の治療を始め、俺に言う。

 「アニー、ボーッとしない。」「はい。」

俺は腹の傷が深い冒険者の治療に当たる。するとダリアが俺に声をかける。

 「その方は・・・」

彼女は悲しい目をして首を振る。もう助からないと判断したのだろう。俺は諦めない、集中してヒールウインドで腹の傷を塞いでいく。冒険者は意識を取り戻して言う。

 「死んだのか。天使がいる。」「死んでいませんよ。もう少しで傷がふさがるから頑張って。」

俺は傷を塞ぎ終える。そして次のけが人の元に行く。この冒険者は肩を大きな角か何か貫かれたのか、右腕がちぎれかかっている。彼は痛みに耐えきれずのたうっている。

 アニタが彼を暴れないように押さえつける。これはヒールウインドで傷を塞げても右腕を失うだろう。

 俺は再生魔法ジェネレイトで失われた体の組織を再生していく。冒険者は痛みが和らいだのかおとなしくなる。彼は俺に言う。

 「俺の腕はどうなる。いや、あのケガだ。無くなってしまったか。」「いま、体の組織を再生しています。腕は無くなりませんよ。」

 「本当か。ありがたい。あんたは天使だ。」

彼は涙を流し始める。ちなみに詠唱は「失われしものを形を成せ。ジェネレイト」である。

 俺がけがのひどい冒険者を治すうちにアネットは5人の治療を終える。

 俺とアネットはギルドと冒険者から感謝される。結果としてギルドに運び込まれたけが人は全員助かったのだ。

 俺たちはダリアにどうしてこのようになったのか聞く。

 「森の中で魔物化したホーンボーアと遭遇したの。ホーンボーアは2か所に現れて4つのパーティーが戦ったけどかなわなかったわ。」「それでみんな逃げてきたんですね。」

 「いいえ、森で死んだ人は置いて来ているわ。17人の冒険者のうち4人が死んでいるの。」「ホーンボーアはそのままなんですね。」

 「そうよ。あなたたちが魔物化したホーンボーアを倒せたのは運が良かったのよ。」「私たちなら1人でも倒せますよ。」

 「本当に強いのね。」「私たちの報告はどうしますか。」

 「教えてちょうだい。」「24匹のゴートラビットを狩ってきました。」

 「そんなにいたの。」「はい。交代で戦いましたから1人8匹づつ狩りました。」

 「パーティーで戦わないの。」「相手が弱いので仕方ありません。」

ダリアは頭が痛いのか、頭を抱える。彼女は少し休憩すると俺たちに報酬をくれる。報酬は昨日より多い。アネットが訳を聞くと冒険者を治療した報酬も入っているそうだ。

 ギルドからの帰り道の途中、アネットが俺に言う。

 「アニー、再生魔法を使っていたでしょ。」「ジェネレイトのこと。」

 「そうよ。私にも教えて。」「いいわよ。アネットも使えたほうが便利だからね。」

再生魔法は高等魔法のため使える者が少ない。それに人体を再生する時は体の組織をイメージしなければならないため難しいのだ。

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