第16話 強盗団の襲撃

 ベンたちは、さらに屋根裏から監視を続ける。そして、ベルントの雇った2人の腕利きのうち1人が一味であることが判った。

 そして、襲撃日時が判る。26日午前2時だった。俺は再びランベルズ商会へ行く。ベルントはすぐに俺を執務室に招く。

 今回も探知魔法を使い魔法が仕掛けられていないか調べ。ウインドシールドを部屋に張って盗聴を防ぐ。

 「アニエス様、襲撃の時間が判ったのですね。」「はい、それと強盗団の一味が入っています。」

 「誰ですか。」「雇った腕利きのうちの1人がそうです。そして、襲撃は26日の午前2時です。」

 「分かりました。よろしくお願いします。」「任せてください。」

アニタは俺に聞く。

 「騎士団に知らせなくてもいいのですか。」「こんなおいしい獲物、私たちでいただなくてどうするの。」

 「分かりました。頑張ります。」「その意気よ。」

俺たちは襲撃の日を待つ。その間、午後はベンたちに勉強を教える。ベンたちは早く独り立ちできるようになりたいのだ。

 当日、俺とアニタは館を抜け出しランベルズ商会へ向かう。そして、強盗たちの侵入口である裏口を見張る。

 人通りのない深夜、商会の裏口に黒づくめの4人が来る。そして、合言葉をかわす。

 「月」「ウサギの耳」「モフモフ」

そんな合言葉でいいのか。裏口の扉が開く。俺は内側から扉を開けた者をウォーターボールを撃って倒す。同時にアニタが飛び出す。

 彼女は木剣を抜く。強盗の4人は真剣を抜く。アニタが1人に殴り掛かる。すると2人が俺の方に迫って来る。

 俺はファイヤーボールを2つ撃ち出す。2人はファイヤーボールをかわすが俺にコントロールされている。2人は次々と捕まり炎に包まれる。

 2人はもがくがそのうち動けなくなる。俺は炎を消してウインドバインドで拘束する。

 アニタは2人を相手に戦っている。俺は加勢したいが動きが早くてついて行けない。彼女は剣の横ぶりをかわしながら相手の懐に入ると右こぶしを水月に打ち込む。

 相手は体をくの字に折り飛ばされる。アニタはトラの獣人であるためか力が強い。もう1人が後ろから切りかかる。アニタは後ろに目があるようにかわす。

 そして振り向きざまに胴を入れようとするが後ろにかわされる。このころになつて館の中で悲鳴がする。強盗は5人だけのはずなのにおかしい。

 俺は残りの1人をアニタに任せて館に入る。すると廊下に人が倒れている。ベルントも執務室から出てくる。ベルントが言う。

 「何があった。」「護衛の方が血を流して倒れています。」

使用人の女性が答える。ベルントは俺に聞く。

 「アニエス様、どうなっています。」「強盗のうち4人は倒しました。残りの1人はアニタが相手をしています。私は悲鳴を聞いてきました。」

 「捕り物の邪魔をして申し訳ありません。」「いえ、そろそろ決着がつく頃です。」

 「では衛兵を呼びに行かせましょう。」「お願いします。」

俺が裏口から外に出るとまだ決着は着いていなかった。しかし、騒ぎになって相手は焦っているはずである。

 相手の剣さばきが明らかに大振りになってきている。アニタは、相手が上段から剣を振り下ろす瞬間木剣で剣を打ち払い、相手の頭に一撃する。

 相手はそのまま昏倒する。見ていたベルントが拍手をする。しばらくして、衛兵ではなく騎士団が到着する。

 騎士団長はアニタに気づき質問する。

 「アニタ、こんな時間に何をしているんだ。」「強盗退治です。」

俺はこの場から去ろうとするが騎士団長は逃さない。

 「アニエス様、どこに行かれる。」「急用を思い出して。」

 「お二人とも立派です。しかし、時間と場所が悪い。」「お父様に報告するのですか。」

 「はい、罰が軽くなるように報告します。」「そうですか。」

この後、俺とアニタは父に怒られることになった。代わりにアニタの木剣は父のプレゼントした真剣に変わる。

 このことがあってからアニタは騎士団内でも白い悪魔と呼ばれるようになる。

 そして報奨金を渡されたが、すべてベンたちに渡した。一番の功労者は彼らなのだ。

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