博士は背中を撫で回し、小幸は太腿に鳥肌を立てる
博士が小幸を連れて屋敷の外に出ると、須藤は相変わらず門の前に車を停めて煙草をふかしていた。
「須藤でかした!! 今回の助手は中々期待が出来そうだ……!!」
そう言って博士は後部座席の扉を開けて小幸をシートに押し込むと自分もその隣りに乗り込んでいく。
……密着感が半端ない……
車内空間を無視するように、博士は小幸を反対側のドアに押し付け、身体をぴったりと密着させて言う。
「ほれ! 早く出せ! 先立つ不幸だ……!」
「善は急げだ。変態じじい……」
いつの間にか肩に回された腕に困惑しながら小幸は恐る恐る博士に尋ねた。
「あの……ちょっと近い気が……」
「なに気にするな。君の不幸エネルギーにあやかっているだけだ。やましい意味は何も無い」
そう言いながら背中を撫で回す博士の手に、小幸の太腿にぞわぞわと鳥肌が立つ。
……んあっ……
これ以上撫で回されまいと、シートと背中で博士の手を圧迫しながら、小幸は意を決して博士に言った。
「あの……こんな事言うと変に思われるかもしれないんですけど、凄く嫌な予感がするんです! わたしの嫌な予感は、何ていうか必ず当たって…今日の嫌な予感はヤバいんです! 今すぐ帰ったほうが……」
ちらりと博士に目をやると博士はギンギンに目を輝かせ、興奮で小刻みに震えている。
鼻息荒く顔を近づけ、鼻が付きそうな距離で囁くように言った。
「素晴らしい……!!」
「あーあ……お嬢ちゃん……それは逆効果だ……このじじいの仕事聞いてないの?」
「何かの博士ということしか……」
須藤が呆れたように溜め息を吐くと、博士は立ち上がらんばかりの勢いで高らかに宣言した。
「何を隠そう、吾輩は医学博士にして
呆然と口を開けたまま小幸が固まっていると、一軒の住宅の前で車が止まった。
どす黒い気配がぴったりと閉じられた窓から溢れ出し、静けさの中に骨の軋むような呪怨が鳴り響く。
「着いたぞ。正真正銘の呪われた一軒家だ……」
そう呟く須藤の顔には、わずかに緊張の色が差していた。
博士は紳士的に車のドアの横に立つと、手を差し伸べて囁いた。
「さあ……行こうか。小幸くん……!」
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