第18話

「なあ……」

「なんだ?」

「守りたい人が大きな悩みを抱えていたとしたらどうする?」


今日の出来事は衝撃的だったし、心配で仕事が手につかなかった。まさか、倒れてしまうとは、いったい何があったんだ。


「彼女か?」

「……ああ」

「すでに彼女だったら、そばにいて支えられるが、まだその段階じゃないだろう? そもそも彼女にとってお前は上司にすぎないし、そこから抜け出さないことには何もできないじゃないか。 でも、好きとか嫌いとかの感情を抜きにしても、部下が悩んでいたのなら、話を聞いて対処するのが上司としての役目じゃないのか? まずはこそからだよ。焦りたい気持ちは分かるけど、まずは白石さんから頼られるようにならなきゃな。お前から白石さんのことを聞いて、俺なりに気にかけていたが、ちょっと特殊というか……近寄りがたいというか・・・ん~悪い……」

「いいんだ、言いたいことは分かるから」


彼女が変わっているわけじゃない。少し人と違うだけだ。だけど、職場での彼女しか知らない俺に、何が出来るというのだろうか。


「だいたいな、お前がアメリカに行けと言わなきゃ俺は、今頃白石を彼女にしてたんだ」

「自意識過剰だな、彼女がお前を好きだとでも?」

「それは・・・嫌味なやつだな」

「俺はお前が必要だ。ゆくゆくは俺の右腕になって欲しいと思ってる。それは同級生とか関係なく、大東の能力を買っているからだ」

「先に言っておくが、俺はこれ以上の昇進を望んでいない。部長になることすら望んでなかったし、これからある昇進試験も受けるつもりもない」

「なに?」

「そういうこと。だから最後にお前の命令を聞いてやったんだ、ありがたく思え」

「それは受け入れられないな」

「それなら辞めるしかない」

「それもダメだな」


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