第17話

海外転勤を打診された時、俺は子供のように駄々をこねて拒んだ。彼女、白石智花と離れたくなかったからだ。

それでも、しがないサラリーマンはそんなことは許されず、アメリカへ転勤となった。

そこで俺は条件を付けた。


「白石智花を異動させないこと」


公務員じゃあるまいし、課の在籍年数で異動するわけじゃないが、入社して3年が経つと、希望する部署へ異動の希望を出せることになっていた。

もし彼女が異動願いを出したとして、なんだかんだと理屈をつけて、異動を阻止出来るのは五代だけだと思っていた。


「自分だけさっさと秘書を彼女にしやがって」

「お前がのんびりしすぎだからだ。何か訳でもあるのか? それとも臆病なだけか?」


白石智花は特別だった。

周りとも関わらないし、笑うこともなく、同僚たちと話をしているところを見かけたこともない。

最初はいじめにあっているんじゃないかと気がかりだったが、そうではなかった。

白石の方が、交わることを拒んでいるようだった。



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