第16話 支える意味

「よくも飛ばしてくれたな」

「お前のお陰でアメリカの事業所も順調な滑り出しで、感謝しているよ」

「貴重な時間を奪っておいてよく言うな。絶対に取り戻してやる」

「言っておくが、恨まれるようなことはしてないぞ、お前の要求を守り抜いたんだからな」

「当たり前だ」

「何はともかく、お疲れ」


相変わらずきちんと整理された家だ。

俺はまだ段ボールが山積みの家の中で生活している。帰国してすぐだからと言い訳をしているが、そもそも片づけは苦手だ。片づきすぎる家はなんだか落ち着かない。


「で、どうなんだ彼女は?」

「ああ……」

「なんだか深刻だな」

「ああ……これからだよ。そっちこそどうなんだ? 社長」

「俺はちゃんと収めたぞ、色々と大変だったけどな」

「あの秘書の事だから、ちょっと違う大変さだろ?」

「わかるか?」

「わかる」


ファイブスター製薬社長の五代は、俺と大学が同じで、同級生でもあった。

ゼミで知り合って頭の切れる男だなと思ったら、社長の息子だった。


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