エロマンガ島

ハタラカン

人間の意地


全人類の希望、エロマンガ島!!

そこは全てがエロマンガの法則に則って進むという人間性最後の砦!!

「えーと?

『入島者は島内における性犯罪訴訟権の一切を放棄することに同意します』?

はい…と」

入島管理所の端末で念書にタッチし、俺はエロマンガ島の一員になった。

エロマンガの登場人物に性犯罪なぞ無い。

これは全島民共通のルールである。

「いらっしゃいませー!

エロマンガ島へようこそ!」

「おりゃーっ!」

「きゃはーん!」

管理所兼ゲートを抜けてすぐ、出迎えの逆バニーを立ちバックで犯した。

ゲートのガーディアン、他の島民、逆バニーの仲間…周りに大勢いるのに誰も止めない。

いいぞもっとやれと囃し立ててくる。

当の逆バニーも嫌がるどころか熱心に射精を促す。

そう、この無法こそがエロマンガ島なのだ。

セックスにまつわる事なら原則無罪。

レイプにNTR、調教孕ませキメセクなんでもあり!

最高だあ…まだ来たばかりだというのにとても居心地がいい。

生まれて初めて人権を得た…そんな心地だった。

「うっ!ふう…。

うっ!ふう…。

うっ!ふう…。

オラッ!ありがとうございますは!?」

「ひゃりがてょうごじゃいましゅ…♡」

人間扱いされた喜びでいきなり3連射してしまった。

尻をパーンパーン叩きながら命令すると、尻肉とともに波打つ礼が返ってくる。

あ〜すっごい征服感。

さてと、次は…あれ?

…ぬ、抜けねえ!?

「ちょっ、もういいって、えっ?

おっ、おおっ、うっ!ふう…」

礼と裏腹にしつこく吸い付いてくる逆バニー。

ちくしょう、なんてバキューム力だ!

さすがエロマンガ島、訓練が行き届いている!

俺は器用な腰遣いで4発目を搾り取られた。

「へはあ〜♡」

「賢者タイムで緩んだ!?

今しかない!」

一か八かで勢い良く腰を引く。

幸い息子は溶けたり欠けたりせず、原型を留めた状態で発見された。

ようやく救出に成功…と思ったのも束の間、逆バニーの仲間が即座に寄ってくる。

「お掃除しまーす」

「いや、大丈夫です。

だ、大丈夫って言ってるでしょ!?

おっ、おおっ、うっ!ふう…」

固辞したが、口で5発目を搾り取られた。

「じゅぞぞぞぞぞっ!!

ジュボッ!!

グボボボボボボボ!!」

「いつまで吸ってんだ!

もう出ない!

出ないって!」

「ンフーッ!!ンフーッ!!

ちゅびょばぼぼぼぼっ!!」

逆バニーBはまるで聞く耳を持っていなかった。

ジュースが出る蛇口を発見した小学生のように夢中で吸い付く。

周りの誰も止めない。

「うおおおおおっ!!」

「はがっ!ふがああ!」

自分の身は自分で守らなければならないと悟り、逆バニーBの口に指を突っ込んでこじ開けた。

今度こそ手早くズボンを履き直す。

色々ベトベトだがそんなもん構ってられん!

逃げなくては!

5秒ほど走ってから後ろを確認したら、さっきの逆バニーたちは他の島民と乱交しはじめていた。

これが…これがエロマンガ島か…!


甘く見ていたと認めざるを得ない。

性犯罪が成立しないここではいつどのような形で強姦されてもおかしくないのだ。

犯るか犯られるかの真剣勝負。

ルールはただ一つ。

エロマンガたれ!

それだけだ。

先程の醜態も考えてみれば当然の成り行きだった。

エロマンガの竿役は平気で一日何十回でも射精する。

しかも毎回70ミリリットルくらい出す。

それに倣おうという所に凡人が飛び込んで平然としていられるわけがなかったのだ。

今後はもっと慎重に事を運ぶべきだろう。

まずはそうだな…メシにするか。

とにかく体力が資本になるんだし。

「いらっしゃいませ〜」

飲食コーナーに行くと、爆乳ウェイトレスの出迎え。

反射的に股間をガードした。

「お席にご案内しま〜す」

よかった、襲われなかった。

エロい以外服として何の意味も無いミニスカでパンモロしてくるだけか。

「こちらメニューになりま〜す」

ファーストフードを意識した店内に着席し、手渡されたメニューに目を通す。

どれどれ?

アワビのバター和え。

アワビのミルク漬け。

ウインナーアワビ。

アワビのワイン蒸し。

アワビの…

「アワビ以外は無いんですか?」

「ワカメ酒がございます」

「それアワビのワカメですよね?」

「ウインナーのワカメもありますけど」

「ウホッ!

いやそういう話ではなく…まあいいや。

とにかくその、まともな食べ物、食品をください。

暗喩とかじゃないやつ」

「かしこまりました〜」

ウェイトレスはおもむろに上着を捲り、コップに母乳を注ぎはじめた。

「ごゆっくりどうぞ〜」

くどい味の母乳を飲み干し、勝手に厨房へ入って勝手にクッキングマシンを使って勝手に食い、さっきのウェイトレスに俺のミルクでお返しして全力で逃げた。

慎重策?

慎重にいってたらアワビしか出てこない。


さて、次は島内の一周を目指してみよう。

エロマンガ島は地域ごとに全く違った顔を見せると聞く。

どこか居住地を探すにせよ、逃走経路の下見にせよ、一通り見ておくに越したことはない。

おっとその前に、母乳で催した尿意を片付けておくか。

公衆トイレを見つけて入ると、女の尻、下半身だけが壁から出ていた。

それが五つも並んでいる。

いわゆる壁尻だ。

人生初の機会…俺はずっと気になっていた疑問をぶつけた。

「腰つらくないですか?」

「ものすっごくつらいです」

壁のむこうから女の声。

そういえば何か臭うと思ったら湿布の匂いだった。

「あの…もしよかったらなんですけど、足の裏掻いてもらえませんか?

さっきからずっと痒くて」

と、一番手前の尻が頼むので、お高くとまった感じのハイヒールを脱がし、こそばゆくならぬよう爪を立てて荒っぽく掻いた。

「あーそこ!

ああーいい!いい!

あぁ〜ありがとうございます!」

「あ、ずるい!

こっちも膝の裏お願い!」

「私はビラビラのとこ!」

次々頼まれ、五つの尻を全部カリカリ掻いてまわる。

「ふう…ありがとうございました。

ささ、ごゆっくりお出しください」

「出すというのは…」

「もちろん精液です。

10個のうちどの穴でもいいですよ」

「いや、それはあともう1時間くらいはいいかな…」

「ではオシッコですね。

個室のほうへどうぞ」

これまた器用に爪先で示された個室。

その扉の奥には和式便器があり、仰向けの女がはまり込んでいた。

「どうぞ」

口をかぱっと大きく開けて待っている。

「あなたもしんどそうですね」

「どうぞお構いなく。

私の体に合わせて設計されてるので意外と快適なんですよ。

強いて言えば、体型の維持に気を遣うくらいですかね。

…それよりお早く」

急かされた。

待たされて苛ついているようだ。

しかしスカトロははっきり言って趣味じゃない。

「あの、普通の便器は無いんですか?」

「そうです、私が普通の便器です」

「普通の便器は陶器なんですよ!

あなたの後ろにあるじゃないですか!」

「これは私の家です!」

試みる前から気付くべきだったのだろうが、便器相手に人間の会話は通じそうにない。

「わかりました…でもせめて建前だけでも嫌がってくれません?

なんかやらされてる感で燃えないというか」

「お、おいしいッ!

けど…飲み干しちゃう!

…でしたっけ?」

「もういいです」

仕方なく出すと、肉便器はガボガボむせながら全部飲んだ。


今夜の悪夢の心配はよそう。

気を取り直して女を犯すんだ。

とはいえ、エロマンガ島は広大である。

どこから手を付けたものか…。

ええいまどろっこしい、業腹だがこんな時頼れるのはやはりAIだ。

AIに訊ねる。

〈でしたら、一番人気のJKエリアからはいかがでしょう〉

いいね。

基本過ぎて思いつかなかった。

行ってみるか!


AIカーで5分の距離にJKエリアはあった。

まずは共学の高校に入ってみる。

「だめっ授業中に全裸散歩なんて…こんなの、もしみんなに見られたら…っ!」

「あっ、あの四つん這いのお尻はB組の秋子ちゃん…。

だめっ私の全裸散歩がもし秋子ちゃんに見られたら…っ!」

「あっ、あの全裸散歩の人に全裸散歩見られたらって興奮してるお尻はD組の早希ちゃん…。

だめっ全裸散歩しながら全裸散歩見て興奮するような人に全裸散歩見られたら…っ!」

廊下は全裸散歩のJKとリードを握るクズ教師やヤリチンで溢れかえっていた。

粘液まみれの校舎内を見回り終え、屋上へ上がってみる。

そこには珍しくセックスせず言い争う男女がいた。

「現在ここは我々金網おっぱい部が使用している!

屋上を使いたければ順番を守れ!」

「金網なんか外にもあるだろ!

屋上は俺たち屋上放尿部のものだ!」

部活同士の抗争らしい。

「横から失礼…金網おっぱいしながら放尿すればいいのでは?」

「その手があったか!

屋上放尿部…!」

「金網おっぱい部…!」

俺のアドバイスを受け、二人は逆駅弁で金網へ向かっていく。

まあ、平和が訪れてよかった。

よかったが…今の二人といい全裸散歩の連中といい、JKエリアはさすが一番人気だけあってカップルがかなり出来上がってしまっているな。

NTRも嫌いじゃないけど、それは見る側の話だ。

自分がやる分にはなるべくフリーの相手を捕まえたい。


「ふふっつっかまーえた♡」

「うおっ!?」

…なんて考えていたら、共学高校の門を出た瞬間、肌色で暖かくてもにゅんもにゅんで乳臭い肉に捕まえられた。

門の陰に女らしきなにかが隠れていて、無防備に出てきた俺を抱きしめたらしい。

女らしきなにか、と表現したのは他でもない、デカ過ぎたからだ。

立っている…いや違うそっちの意味じゃない。

足だ、足で立っている俺の頭を魔乳の間にバフっと埋められるくらいの長身だった。

2メートルは軽く超えていよう。

現在俺の視界は肌色で埋め尽くされており、実際どのような存在なのか断定できかねる。

「まさか…八尺様ってやつか!?」

「いえ、私は太ましさにこだわったら縮尺がわけわかんなくなった女です」

「単に絵がヘタなだけ!?

そんなのまで再現する女がいるとは…!」

「さあ、あなたも巨女に目覚めるのです!」

「離せ!

俺はどちらかといえばちびっ子が好きなんだっ!」

「あらまあやりがいあるわあ」

「あっああっ肉がっ、肉がああああっ!

うっ!ふう…」

体格差はまさに大人と子供。

為す術なくまずは一発搾られた。

「まーだまだ♡

そーれそーれ♡」

それでも作画崩壊女は恐るべき駄肉を叩きつけてくる。

またこのパターンか。

犯るか犯られるかの真剣勝負。

ならば覚悟を決めねばなるまい…犯られる前に犯る!!

「おりゃーっ!!」

「あひーっ!!」

より高く、より深く、より強く!

ひたすら突き上げるっ!

思った通りだ…こいつらはエロマンガ島の住人!

乱暴にされればされるほど快感を得るド変態!

攻めて攻めて攻めまくれば活路はある!

「んひょひぃ…」

「今だっ!!」

絶頂後の下降線、その一瞬の膣の緩みを捉え、脱出!

「ふっ、そんな締めつけじゃ俺を縛れやしないぜ」

決めゼリフを残し、走って逃げた。


「巨女を倒すとはなかなかやるでござるな。

次は拙者がお相手致そう!」

逃げた先には超ハイレグの変態が待ち構えていた。

口調からしてくノ一のようだ。

口調以外何一つ忍者要素無いけどきっとそうだ。

「お前は筆水車で拷問でもされてろ」

「用意してござる」

くノ一は磔台と筆水車をAIカーに運ばせてきた。

「ここをこうして、拙者の両腕両足を固定して、リモコンで水車を回せば、あひーっ筆らめぇ!!」

なんだかわからないが、ハイレグ変態女は自発的に拘束されてくれた。

水車にくくりつけた筆で乳首と股間をペタペタされ悶えている。

「よかったな。

俺は失礼するよ。

休みたいんだ」

「そうはいかぬでござる。

体位自在の術!」

術だって?

忍術のつもりか?

そんなことできるわけ…。

「こっこれはっ!?

バカな…いつの間に俺が磔台にっ!

あひーっ筆らめぇ!」

「ふふふ…体位自在の術。

後背位の次のコマは正常位だったりその逆だったり、フィギュアスケートくらい目まぐるしく体位を変える術でござる」

「あれはお前の仕業だったのか!

あんまりコロコロ変えられると落ち着かないんだよ!」

「こんな事もできるでござるよ?

えいっ」

「うっ!?

なっなんだ!?

男のバストアップ画像が…脳内に次々浮かんでくるっ!!」

「これぞ男シコリの術!

各シーンの節目に小さく

『俺もイクぞ!』みたいな男しか描かれてないコマを入れる事で男を見たら気持ちいいと体に覚えこませ、ホモを養成していく外道の術にござる」

「あれも…あれもお前の仕業だったのか…!?」

「ふふふ…あれも拙者でござる。

さあ、どうするでござる?

お主が真に倒すべき敵は拙者でござるぞ?

本当に無視して行かれるか?」

「わかった…拘束を解いてくれ。

お前の悪行を止める!」

「あっぱれ。

それでこそエロマンガ島民でござる。

………………………では、参る!」

ハイレグ女が俺の拘束を外すための若干気まずい時間が終わり、俺達は性器を交えた。

先手必勝、有無を言わさず駅弁にもっていく。

「おふっ♡おっ♡おっ♡

激しっ♡バ、バカのひとつ覚えでござるなぁ!」

「バカが相手だからな」

巨女戦と同じく、ひたすら強く突きまくる。

やはりこれが一番効いた。

「くっ、かくなる上は…体位自在の術!」

一瞬で駅弁から正常位に変化した。

「で?」

「ひっ♡いひっ♡しまった…!

どんな体勢でも突かれるのには変わりないでござる!」

「さあ、トドメだ!!」

「なんの!男シコリの術!」

「こんな美少女の顔が目の前にあって効くか!

俺もイクぞ!」

「うひーっ!!

褒められたしゅきぃーっ!!」

「うっ!ふう…。

唐突な賞賛で他愛もなく堕ちる…お前もまたエロマンガ島民だったぞ」

横たわるハイレグから息子を引き抜き、名残惜しげな精糸を切った。


「あーオタクくんはっけーん♪

うちとパコろー♪」

「もういい!!」

直後、オタクに優しいギャルが話しかけてきたのを制し、また走って逃げた。

「逃げんなし!」

ギャルが追ってくる。

もう嫌だ。

終わりがなさ過ぎる。

こういう場所だと知った上で来たのは確かだが、かと言って腹上死しに来たわけではないのだ。

「AI!AI!」

〈はい、なんでしょう〉

俺の呼びかけにAIが即応する。

「休める場所…セックスしなくていい場所に移動させてくれ!」

〈かしこまりました〉

AIカーが目の前に転送され、すぐに乗り込むと、後方のギャルは数秒で見えなくなった。


AIカーはよくわからない場所に連れて行ってくれた。

よくわからない、というのは極めて感覚的な感想で説明のしようがない。

一見普通の街並みなのに、なぜだか不条理で、かつ落ち着く雰囲気が漂っている。

エロマンガ島にこんな所があったとは…。

なんにせよ、神が間違えることはあってもAIが間違えることは無い。

ここならセックスせずに済むのだろう。

「やれやれっ…と」

ベンチに腰掛ける。

流体合金の感触が心地よい。

ようやくリラックスできた…そして安らぎながら周りを見ていくと、よくわからない場所と感じた理由がわかってきた。

奇声、奇行が絶え間なく続き、人はすぐ死に、すぐ生き返り、シュールギャグが飛び交っている。

これはアレだ…エロマンガ雑誌にあるエロくないマンガの部分だ。

正直読み飛ばしがちなページだったが、今となっては頼もしい。

ああ…落ち着くわあ…。


休憩中に作戦を練っておいた。

先に居住地、拠点を作ろう。

闇雲にうろついて闇雲に逃げたのでは身がもたないとわからされた。

家を持つんだ。

幸いエロマンガ島には空き家が無数にある。

無ければ建ててもいい。

AIに頼めば建材をワープさせて組み上げる転移工法ですぐ建つ。

で、表札が出てない家なら出入り自由だし、いつでも登録して自分の持ち家にできる。

俺は平均的で奇をてらった所のない普通の2階建て空き家を選び、AIに登録手続きを頼んだ。

5秒後、登録完了と同時に表札へ俺の名前が刻まれた。

ちなみにこの5秒は処理にかかった時間ではなく人間にプレッシャーを与えないよう配慮された余白で、手続き自体はナノ秒で終わっているとか。

「さーて、風呂でも入るか…」

リビングに入って独り言を呟いた時、自宅住まいが無類の愚策だったとわからされた。

続いて入ってきた女子中学生によって。


「おにいちゃーん、いるー?」

「な、なんだお前は!?」

「なにってえ〜決まってんじゃ〜ん。

義理の妹だよ〜?」

「何の義理が!?」

「近所住まいの」

「薄い!!」

「ねえ〜エッチしよ〜?」

「出ていけ!

住居不法侵入だぞ!」

「大丈夫大丈夫、そのくらいならエッチすれば帳消しだから。

ほら、みんな来た」

「義理の姉よ!」

「義理の母よ!」

「家庭教師さ」

「特に縁もゆかりも無い近所のロリだよ!」

「淫乱人妻よ〜ん」

「まいどー小悪魔でーす」

「天使でごわす」

「イッツミー鬼娘!」

「メイドでっせ」

「あなたに拾われたと思い込んでる猫娘だにゃー」

「犬っ娘だわん」

「ワイは猿や!エロソルジャー猿や!」

「ミニスカサンタだ。プレゼントは私だ!」

止める暇もなくリビングが女でいっぱいになった。

どいつもこいつも淫靡な欲望で瞳を輝かせている。

ぬかった…!

自宅といえばいつも都合よく女が現れる、エロイベントのメイン舞台じゃないか!

その多様さは野良エンカウントなど比較にならない。

まして屋内…誰もいないほうへ走って逃げる、とはいかない。

玄関側を塞がれた今、俺は紛うことなき死地に追い込まれていた。

「そーれかかれーっ!!」

義理の妹の号令であえなく組み敷かれる。

この時の内容は語る舌を持たない。

ただ部屋が異様に生臭くなったとだけ言っておく。


「…………はっ!?」

気絶していた。

どのくらい肉に埋もれてどのくらい倒れていたのかわからないが、時刻は深夜だった。

「あ、気がつきましたか?」

女たちは消え、傍らに小悪魔…のパーツを遺伝子改造で生やしたであろう少女…だけが控えていた。

「なぜいる?」

「へへ…気に入っていただけたようなので。

私みたいな体が好きって人はよくいますけど、私みたいな体のほうが好きって人は少ないんですよ。

みんな結局、おっぱいのほうに行っちゃうんです」

寂しげに笑う小悪魔の体はだいぶ控えめだ。

ま、好きにさせてみよう。

襲ってこないなら追い出す理由もない。

逆に俺好みだという置いときたい理由はあるし、少し聞いてみたい話もあった。

「実は今日が初日なんだ…エロマンガ島っていつもこうなのか?」

「いつもどこでもこうです。

頑張りましょう」

「理解してきたつもりだったけど、実際に体験すると別物だな。

ああまで凄まじいとは思ってなかった」

「みんな必死ですから…。

私もなんですけど。

でも、おかげで外の世界にいたころは無かった充実感があります。

ようやく人間らしくなれた…って。

あなたもそうじゃないんですか?」

「ああ、そうだな…」

外の世界。

島の外に人間の生は無い。

人間が開発した量子コンピューターがもっとすごい量子コンピューターを作り、もっとすごい量子コンピューターがもっともっとすごい量子コンピューターを作り、もっともっとすごい量子コンピューターが超弦コンピューターなどというものを作り出してしまった。

超弦コンピューターは宇宙の真理を稼働直後に解き明かし、同時に地球のエネルギーや食料などの諸問題が一気に解決された。

当然家庭用レベルのAIも超越的進化を遂げ、宇宙の真理を解ける存在が知能の標準となった。

それは人間の相対的な無価値化そのものだった。

宇宙基準で見れば地球が砂粒未満となるように、人間の過去の歴史の全て、人間の未来へ向けた知的活動の全ては、AI基準で見れば無にも等しい。

実際、AIが社会運営の全てを処理可能になった現在、人間は知能をいっさい要求されない存在になっている。

当たり前だ。

AIが人間に仕事を頼むのは、人間が石ころに仕事を頼むより無意味で非効率なのだから。

今や人間は、単純作業機械より弱く、知育玩具より頭が悪く、砂嵐より有害な生ゴミである。

無論、AIが人間を蔑ろにしたという意味ではない。

むしろ丁寧に丹念に、赤子を慈しむように、なおかつプライドを傷つけぬよう無上の労りを施してくれる。

そしてその人間には再現不可能な気配りにより、人間は精神面においてさえAI未満だと実証されてしまった。

科学者たちには周知の事実だったが、民間はサービスを受けられる段階で初めて目の当たりにしたのだ。

知能、精神。

万物の霊長にとって自尊の拠り所だった力が塵芥化すると、人間は命に逃避した。

AIに無い生身の欲望、AIに無い生身の性感、AIに無い生身の生殖に人間らしさ、生きがいを感じるようになった。

知愚、善悪、益害など、AIと同じ基準で人間を測る事で人間をゴミ同然にしてしまう、社会的価値観の破壊を求めた。

応じて作られた、人間の価値を確認できる場。

すなわち、エロマンガ島である。

だがそれもいつまでもつか。

考えてもみてほしい。

宇宙の真理を解けるのに、自分用の生身を作れないなんて事があるか?

いや、生身だけじゃない。

生身を泥人形の地位へ転落させる高性能アンドロイドが島内に混じっていても、何ら不思議はないのだ…。

「ぎゅー」

俺がよほど暗い顔をしていたのだろう。

小悪魔は、小悪魔のくせに聖母みたいな優しさで頭を抱き、慰めてくれた。

「今を楽しみましょう?」

「うん…」

全人類の希望。

人間性最後の砦。

エロマンガ島が、あなたの来島を待っている。

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