第112話 2人目のエルフ

ガギーンッ!ガギーンッ!ガギーンッ!

サリアのダガーと、ソーマのチャクラムが激しくぶつかり合う。


「はははっ!久しぶりに楽しめるじゃねえか、エリカリット!ここで出会えたのも運命だな!」

「運命なんて言わんといてや!あんたのせいで、サリアリットは無駄な悲劇ばかりを経験させられてんや!」

「悲劇?何言ってやがる、喜劇の間違いだろうが!」

「このゲス兄貴!あんたは、うちがここで! 初舞ハジマリノマイ剣舞ブレイドダンス!」


グルンッ!

ガギーンッ!ガギーンッ!

軽やかに動きながら、ソーマを襲っていく。


今までのエリカリットの力も、サリアと比べたらかなり大きなものであった。



だが、



今回の戦闘においては、一撃一撃が命を奪い去ろうとする火力。



「サリア……いや、エリカリット!俺たちも力を貸すーー。」

「そこで見ててや、クロの兄さん!アーの姉さんもそうや!」

「なんで!そのエルフは、あなたと同じかそれ以上の力を有しているわ!1人じゃ無理よ!」

「確かに今のままじゃ厳しいかもしれへん。けど、やらなければならないんや!!」


ガギーンッ!

さらに2人のぶつかり合いは増していく。


辺りには強風が巻き起こり、地面にも傷が。


「くそっ、手を貸したいのにこの戦いの展開が早すぎる、力を解放しなきゃ俺たちでも手に負えねえ。」

「けれど、ここで私たちまで力を解放したら他に敵がいたら終わりよ。」

「アーシェリーゼの言う通りだ、見守ることしかできないっていうのか……。」


ダガーとチャクラムのぶつかる金属音が止むことを知らない。


「いいな、何十年ぶりに会ってもてめえの強さは変わらねえな!」

「うちはあんたを絶対許さへんぞ、ソーマ!テーベで起きたこと、アンジュ様にやったこと!サリアのこれまでの苦労をあんたにも味合わせてやるわ! 降り注げ!光の雨ライトシャワー!」


シュイーンッ!

ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!

魔銃から放たれた無属性の魔法が雨の如く降り注ぐ。


「近接以外も覚えたか、いいな!いいな!」


スススススッ!

雨のような魔法を一つも当たらずに避ける。


「ソーマ、あんたは、あんただけは!! 壊せ!根の侵攻ルーツバスター!」


バゴーンッ!

地面から根が生え、ソーマ目掛け突っ込む。


「やっぱり、お前はそう言う植物魔法の使い方だよな!おら!迎えうて!」


バゴーンッ!

真っ黒に染まった木の根が、エリカリットの技を弾く。


「ちっ、あんたはなんでそんな事ばかりするんや!植物だって生きてる、なのに強制させて力を使わせて!気持ちを考えたことはないんか!」

「そんな事どうでもいい!!使えるものは使う、殺したい奴が目の前にいたらなんでもやるのが俺の王道だ!」

「そんなふざけた王に、テーベは壊された!サリアリットのおかげでうちは生き残れたけど、多くの同士が火の海に飲み込まれてしもうた!散って行った仲間のためにも、うちがあんたを倒す!」

「じゃあやってみろよ!もう何年も俺を楽しませてくれる奴がいなくてな、お前で俺も発散させてもらうぜ!!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

さらに2人の戦いは激しくなる。


ピシャッ。

ズザーッ!

やはりエリカリットだけの力では押し切れず、腕や足から血が滴り落ちる。


「くそっ、サリアリットの体を傷つけたくはないんやけど、やっぱソーマ相手に無傷はきついか。」

「ほらほらほら!急がねえと体が持たなそうだぜ!」


バゴーンッ!

ソーマの放つ衝撃波で、さらにエリカリットが後ずさる。


「ちっ、やっぱり少しずつエリカリットがおされてる。アーシェ、俺が力を解放する!2人は待っててくれーー。」

「おいおい、そこの観客はこいつとでも楽しんでな!起きろ、ラーゼ!」


ピカーンッ!

バゴーンッ!

ソーマが種をクロウたちの前に投げつける。



地面に埋まり、少しずつ光を放つ。



「なんだ、この違和感。」

「気をつけて!何か出てくるわ!」




すると、



「ガルゥゥ!」


ドスンッ!ドスンッ!

約10mほどの全長を持つ、全身白色でウサギのような耳が生えた筋肉ゴリゴリの生き物が。

体はどうやら枝や木でできていそうだ。



ズーンッ!

目の前のモンスターから、異様なものを感じ取る。


「なんだ、こいつ。今までのモンスターとか、ゴーレムとは訳がちがう。殺気とも威嚇とも違う、なのに体が震えてやがる。」

「私も同じよ、この震えは武者震いなんかじゃない、心底こいつに恐怖を感じてる。」

「あの黒いエルフだけでも危険なのに、こんなモンスターまで。このままじゃ町が壊れてしまう、なんとか対処しないと。」

「分かってる、俺たち3人でまずはこいつを倒す!着いてこいよ、アーシェ!ノエル!」


ズザッ!

クロウは大剣を構え突撃する。


「ガルルルゥ!」

「邪魔をするなら容赦しねえぞ!  獣の声ケモノノコエ三式サンシキ獅子の閃爪スフィンクス!」


バギーンッ!

ラーゼの拳と大剣の突きがぶつかり合う。


こちらも戦いが始まってしまった。

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