1月15日(月)

第59話

 四時間目が終わり昼休み。

 遥と三咲の二人は教室で琴葉が来るのを待っていた。


「まだかな〜」

「落ち着けって。すぐ来るでしょ」

「だって〜早く会いたいんだもん」

「三時間目の帰りに会ったじゃん…」

「それじゃ足りないの!もうずっと一緒に居たいの!」

「ふふふっ…私もですよ遥先輩」

「あっ!琴葉ちゃん!座って座って!」


 タイミングよくやって来て話に混ざる琴葉。

 遥は琴葉に自分の隣に座る様に声を掛ける。


「遥先輩、実は今日は紹介したい人が居るんです。こちら、クラスメイトの飛鳥あすか ひなさんです」

「は、はじめまして…飛鳥 雛です…」

「こ、琴葉ちゃん…?」

「遥先輩、心配しないでください。飛鳥さんはお友達ですから」

「ほ、ホントに?」

「はい、今日は狭山先輩と一緒にご飯を食べたいとの事だったのでお連れしました」

「ひ、柊さん!?」


 琴葉の紹介した人物に、一瞬嫌な気持ちになってしまった遥だが、続く琴葉の言葉で何とか持ち直した。


「ん?あぁ…あの時の娘か」

「あの時って?」

「ほら、冬休み前にはるが柊さんの教室に突撃したでしょ?その時柊さんと喋ってた娘じゃん」

「あぁ!確かに」

「は、はい!そうです!」


 三咲に覚えてもらっていたのが嬉しかったのか笑顔になる雛。


「きょ、今日はお昼をご一緒させて頂いてもよろしいでしょうか…」

「もちろんいいよ。椅子はそこの席の使っていいよ」

「は、はい!隣失礼します!さ、狭山先輩!三咲先輩とお呼びしてもいいでしょうか!?」

「ん?いいよ。じゃあ私も雛ちゃんって呼ぶね?」


 三咲の隣に座りさらにニコニコになる雛は、三咲にグイグイ話しかける。

 周囲から見ればモロバレなのだが唯一三咲は気付かなかった。いや、気付いていたが「そんなわけないよな」と流していたのだ。


 そんな雛の様子を見た遥は琴葉に小声で話しかける。


「ね、ねぇ…琴葉ちゃん?」

「なんですか遥先輩?」

「飛鳥さんって、もしかして?」

「はい、そのもしかしてです。一目惚れだそうですよ」

「そうなんだ!応援してあげなきゃだね!」

「そうですね…ですが、ひとまずは見守ってあげましょう」

「それもそうだね。既に結構いい感じみたいだしね」


 小声で話す二人を怪訝に思った三咲が声を掛ける。


「何二人でコソコソ話してんの?」

「ん!何でもないよ!何でも!」

「そうですね。今日お風呂を一緒に入るかを話してました」

「んぐっ!けほっ…けほっ…」

「琴葉ちゃん!?」

「三咲先輩!大丈夫ですか!?こ、これ飲んでください!」


 琴葉の発言に噎せてしまった三咲。すかさず雛が三咲に自身の飲み物を渡した。その時小さく「あっ…間接キス…」と聞こえたような気がしなくも無いが、貰った飲み物を口に含む三咲。


「あ、ありがと…んっ…んっ…はぁ…二人ともイチャつくのは構わないけど場所を考えなさいね…」

「場所を考えたので小声で話してたんですよ?」

「そういう問題じゃないでしょ!」


 三咲は顔を真っ赤に染めて俯く雛に気付かないまま、遥と琴葉に注意をする。

 しかし、対面に座っている遥達はもちろん気付いており、雛の様子を微笑ましく眺めていた。




 余談ではあるが、たまたま近くで話を聞いていた男子生徒が前傾姿勢で動けなくなり、クラスの女子達から白い目で見られていたのはご愛嬌…。

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