俺って幸せものじゃね?

「天上へのお出かけ、お疲れ様でした」


「まったく、アマテラスの奴、相変わらず頭が固くて困ったぜ。おい、クシナダヒメ。新居探すぞ、新居」


 そうだ、俺はこれから妻と平和で幸せな日々を過ごすんだ!

 新居はどこに構えようか。出雲国のあたりはどうだろうか。



「おい、新婚旅行がてら、出雲行こうぜ!」



◇ ◇ ◇



 さて、出雲に来てみたが、すっごく気持ちいい。ここに決めた!



「盛んに湧き起こる雲が、八重の垣をめぐらしてくれる。新妻をこもらせるために、八重垣をめぐらすことよ。あのすばらしい八重垣よ」


「あら、あなたが歌を詠むなんて、どうしたの?」


「いや、あまりにもすばらしい場所だから、いつの間にか口からでた。ここにしよう。宮の首長は……そうだな、クシナダヒメ、お前の親父にしよう。喜ぶに違いない」



 俺は自分の親父を憎んでいる。だが、クシナダヒメの親父は違う。あいつはいい奴だ。それに愛するクシナダヒメの親父、俺の義父だ。どれだけ礼を尽くしても足りない。これくらい、当然だろう。



 あれ、クシナダヒメと会ってから、俺、落ち着きが出てきてね? これが大人になるってやつか。案外悪い気はしない。あとは幸せな家庭を築きたい。子供も何人か欲しい。




 俺の武勇伝もそろそろ終わりかな。あれ、なんで国を飛び出したんだっけ? まあ、幸せな気分だから、どうでもいいか。

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母親に会いたいと言ったら、なぜか国を追い出された件 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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