精霊魔法と始源魔法

 精霊せいれい魔法まほう。それは精霊せいれいの声を聞くことができる長い耳を持つエルフ族だけが使える魔法である。

 人族をふくめてこの世界には十四種類しゅるい人型ひとがた種族しゅぞくが存在し、特殊とくしゅ魔人族まじんぞく以外の種族は全て魔法を使うことができるのだが。

 エルフ族の精霊魔法は精霊と思念しねん直接ちょくせつ会話かいわすることで魔法を使うため、精霊へ意思いしつたえるための呪文じゅもん詠唱えいしょうを必要としない。

 そのためデュランが世界を変えるまではエルフ族はおそれからか、他の多種族たしゅぞく以上の迫害はくがいを受けていたが。今は関係かんけいないのでいておく。


 アリスの開発かいはつした始源しげん魔法まほうはデュランの天下てんか無双むそう見本みほんとして完成かんせいしたものであり、魔力を体外でひかり属性ぞくせいやみ属性へ分けてからもう一度合成ごうせいすることで魔法のレベルを天下無双状態のデュランがんでいる神の領域りょういきとどかせたものだ。

 そのため本来ほんらいならばかみなりほのおかぜみずつちの五つの属性ぞくせいの内どれか一つに適合てきごうし、適合した属性の魔法しか使えないというルールをやぶり。属性にしばられない魔法を使うことができる。

 それゆえに始源魔法は空間くうかん干渉かんしょうしたり自然しぜん現象げんしょう再現さいげんなどができるため、アリスは自然災害級の・・・・・・攻撃を使い放題・・・・・・・というバグじみた存在である。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082215821994


 とはいえ。今回はあくまでもドラゴン牧場でデュランが今の状態じょうたいれるための修行しゅぎょうをするだけ、そこまで大規模だいきぼな魔法を使う必要はない。

 なのでアリスはデュランの魔力まりょくよろいでちょうどこわれるくらいの石ころを始原魔法で大量たいりょうに出そうと決め、即興そっきょうで技名を考えた。

 ……ちなみにアリスは詠唱はロマンだもん!! が口癖くちぐせであり、言う必要ひつようのない技名わざめいをいつもさけんでいる。 


手加減てかげんはいらないからな、アリス! い!!」


「分かった! 行くよデュラン!! 始原魔法――ライトストーンレインッ!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082215667748


 デュランは四方しほう八方はっぽうからおそいかかる石の雨を迎撃げいげきすることなくけ出し、最低限さいていげんの動きで石の雨を切りけようとしたが。

 少し力を入れただけで前のばい以上動いてしまうため、完全かんぜんけきることができず。何度も地面にたたきつけられてしまう。

 それでも少しずつ攻撃を避けられるようになっていくのがたのしいのか、デュランは笑顔で修行し続け。三日目にはほとんど今の状態へれかけていた。


「始原魔法――ストーンチェイサーレインッ!!」


「アハハッ、楽しくなってきたァッ!!!」


 しかしデュランは前と同じ水準すいじゅんまでもどすだけではダメだと考え、石の雨へ追尾ついび機能きのうをつけるよう頼み。修行の難易度なんいどさらに上げるのでした。

 そして五日目には追尾する石と石がちょうどぶつかってこわれるように石の軌道きどう上手うま誘導ゆうどうしたり、 回天かいてん剣舞けんぶ要領ようりょうで石が体にぶつかった瞬間しゅんかん――回転かいてんしながら石のいきおいをながして別の石達へぶつけたりできるようになり。

 上がった身体能力しんたいのうりょくと魔力の流れを前以上の精度せいどあやつることができましたが、それで満足まんぞくすることなく。デュランはアリスと次の修行へついて考えるのでした。

 ……ドMかな。


「すごいよデュラン! 五日でもう完全に慣れちゃうなんて!! 次の修行はどうする!!!」


「う~ん、そうだなぁ。じゃあ次は実践じっせん形式けいしき模擬戦もぎせんにするか! うつを五体出して闘うからアリスはさっきの石で時たま妨害ぼうがいしてくれ!」


「分かった! デュラン頑張がんばって!!」


「あぁ、がんば――ッ!? だれだ!!!」


 デュランはそうして次の修行の内容ないようが決めると修行を再開しようとしたが、一瞬いっしゅん何者なにものかの気配けはいかんじ取り。あせながしながら天晴てんせいいた。


「……見つかった」


「えっ、つるぎ!!? お前いつからそこにいた!!!?」


「……最初から」


「――マジで!!?」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818023211720731745


 デュランは感じ取った気配の正体しょうたいつるぎだったことに驚愕きょうがくし、最初からいたというつるぎの言葉からもしもつるぎてきなら不意ふいちでころされていたとかんがえてきもえたが。同時どうじにその底知そこしれない才能さいのうがどこまでびるのか想像そうぞうしてワクワクした。


「……よし! 一緒に修行しようぜつるぎ!! アリス、現し身じゃなくてつるぎを相手に修行する!!! だからさっき言った通りにしてくれ!!!!」


「分かったよ! 二人とも頑張って!!」


「……うれしい」


 なのでデュランは自分の修行をしながらつるぎ稽古けいこをつけることにしたのですが、元々格上かくうえつるぎ技術ぎじゅつあたえてしまったことで七日目の昼には完全敗北かんぜんはいぼくしました。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082220426964


 負けたことがくやしくてデュランは一時間ほど大泣おおなきしましたが「この敗北が俺をもっと先までれてってくれる!! いてる場合ばあいじゃねぇ!!!」とさけんでから修行を再開するのでした。

 ……やっぱりドMだったわ。







「ナハト! むかえにたぞ!! カッコイイの作ってもらったか!!!」


「カッコイイかは分からないがいい物を作ってもらえたと思うよ、デザインが気に入った。

 ……デュラン、それはそれとして風呂に入った方がいいよ。くさいから」


「アハハッ、悪い悪い。そういやさっきまで修行してたんだった。

 リーベ!! 風呂ふろりるぞ!!!」


「ハァッ、勝手かってに使いたまえ。というか、そんなことで一々いちいち話しかけてきてほしくないね」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082267695851


 デュランはリーベの小言こごとを完全に無視むしして風呂場へ向かって走って行った。

 その光景を目にしたリーベは頭をおさえながら「可能かのうならあのバカを実験体じっけんたいにしたい……」とつぶいてから研究室けんきゅうしつへ向かって歩いて行った。

 それから全員でリーベの秘密基地ひみつきち一晩ひとばんまり、出発前しゅっぱつまえにリーベへたいしても事情じじょう説明せつめいして協力きょうりょくをお願いしたが「研究けんきゅういそがしい、他を当たりたまえ」と素気すげことわられてしまった。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082268506288


 デュランはその場の全員と話し合い。もうギガント王国への用事ようじがないことを確認かくにんし、何でかかおあかいステラと共にギガント王国を旅立たびだった。

 それを見届みとどけたリーベはデュラン達のたたかいをサポートをするための研究を再開さいかいするのでした。

 ……ツンデレで草。

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