4日目  『      』

 ──パキキ

 ……この音の始まりはいつだっただろうか。

 昨日か、一昨日か。それとも、僕が気づいていないだけで、もっと前からなっていたのだろうか。

 ──パキ

 また、鳴った。今度は足元から聞こえてくる。

      の執事になってから、不定期にこの音が聞こえるようになっていた。

 最初は、何処か遠くから。

 ──パリパリパリ

 数日前は、胸の奥から。

 昨日、一昨日は、お腹や鎖骨のような胸回り。

 そして今は……身体の周り。

 この音は、波紋のようにゆっくりと伝わって来る。

 まるで蠅が辺りを舞うように、硝子ガラスの割れるような音が聞こえてくるのだ。

 そして、この音から数秒、後から更に痛みが襲ってくる。

 ──ピシ

 割れ目を裂くような痛み。似ているモノを強いて挙げるなら……切り傷を皮膚を伸ばすように裂いていくような、剥がれていた皮膚を無理矢理に捲り切ったような痺れと熱気を帯びた痛覚だ。

 ──パリン

 最後に、砕け散るような音によって全ての感覚が無くなり、痛みは終わる。

 これが起こった後、僕は必ず自分の身体を確認する。

 旅において、どんなに小さな怪我だろうとも、それは致命傷になりうるからだ。

 だが、外傷は無い。

 まるで、『そんなものなんて無かった』かのように。

 残っているのは、言い知れない恐怖感と寒気だけ。

 これは何なんだろう。

 ……僕は、どうしてこんな幼稚な、子供でも分かる疑問を抱いているのだろう。

 お前はもう知っているだろう。

 これは、     が起こしたものだって──

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