第7話 認めてもらうためには

「……神様さんはそれでいいんですか?」

「うん?」

「私よりも都合のいい人間が現れたら、私を捨てるんでしょう?」

「それはないよ」

「即答なんですね」

「僕と君の縁はあの春に始まったわけではないからね。君が生まれたその瞬間から、僕は君と結ばれる運命だったから」


 眼差しはいつも以上に穏やかで、その目で見つめられると胸がときめいてしまう。

 絆されているよなあ、私。


「それ、前にもおっしゃってましたけど、運命だと言って縛られることもないんじゃないですか?」

「僕は君に縛られるなら本望だよ」

「……ふふ」


 なんか胸の奥が温かくなった。いつもなら突っぱねるところを素直に受け取ってしまったあたり、疲れが溜まっているのかもしれない。


「僕は弓弦ちゃんのこと、好きだよ」

「ここぞとばかりに告白しないでほしいんですけど」


 しかも、両手をギュッと握ってきており、私は拘束されている。

 神様さんは私の顔を覗き込むようにわずかに傾げた。


「彼氏として認めてもらいたいなあって。そのためには必要でしょう、愛の告白」

「神様さんのことは私も好いていますけど、彼氏ではないです」

「ふぅん……体の関係だけかあ」

「いいじゃないですか、それで」


 外聞はよくないけれど、そもそも説明する必要があるのは兄貴くらいであり、この関係はすでに知られている。問題はないはずだ。


「弓弦ちゃんは僕に願っていいんだからね、なんでも言うんだよ」


 少し残念そうに告げて、神様さんは離れた。


「言いたいことはちゃんと言うようにしていますし、欲しいものはちゃんと自分で買えていますよ」

「年末年始の休暇、しっかり休めるように僕もお祈りしておくね」

「奇跡は起こさなくていいですから」

「それは……状況次第?」


 これは何かあったらやらかすやつ……

 彼が出ないといけなくなるような事態が起きませんようにと私も密かに願った。切実である。

 すると、神様さんがポンッと両手を合わせた。


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