反作用
(ルナの視点)
私はホログラムシミュレーター室横の待合室で、力なく座り込んでいました。壁の一つ向こうではヒカリ少尉が闘いに挑んでいます。でも、私にできることはありません。
つい先ほど、船長に呼び出され、意見を聞かれました。私はどうしても、ヒカリ少尉について、客観的に良い評価をすることができませんでした。ある程度、主観評価で取り繕ったとはいえ、結果にはネガティブに作用してしまうことでしょう。
そのせいか、私の気分はどん底でした。
――作用・反作用、か。
ヒカリ少尉は訳の分からない人です。
正直、私とは正反対です。不真面目ですが、何でも楽しんでしまう。ああいう人の方がきっと、私よりもずっとずっと先に行ってしまうのでしょう。キリギリスよりもアリが、うさぎよりも亀が勝つのは童話の世界のお話です。
そう考えると、私の胸の中で、嫉妬の炎がメラメラと立ち上るのです。いつの日か、私は内側から焼け死んでしまうのだろう、そんな気がしています。
私は薄々感じていました。ヒカリ少尉とは友達としては長続きしない。なぜなら、どうしても嫉妬心が邪魔をして、これ以上歩み寄れないからです。
ヤマアラシのジレンマという言葉があります。ヤマアラシ同士身を寄せ合えば、その鋭い棘でお互いを傷つけてしまう、というたとえ話です。私とヒカリ少尉の場合、私だけがヤマアラシです。ヒカリ少尉は「ふへへへ公式の供給マジ感謝でござるぅ~」などと言って棘が刺さるのを喜びそう……むしろ自ら刺さりに来る姿が目に浮かぶようですが、私は友達として彼女が私の棘で傷つくのを見ていられません。
……だから、ましてや親友になど、なれそうもありません。だから、犠牲を伴わずして、これ以上、親しくなることはできないのです。
ヒカリ少尉は来るもの拒まず、去る者追わず。そんな人のような気がします。二年間の任務が終われば、きっと疎遠になってしまうのでしょう。いっそのこと、試験に不合格となり、二人でこのエスプロリスト号で五年、十年と勤務するのも悪くない、という考えが過ってしまうのです。
……でも――。
ホログラムシミュレーター室に、船長と副長が入っていきました。そろそろ口頭試問が始まるのでしょう。
(ルナの視点 おわり)
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