第5話 父、学校へ登校する

家を出て娘が車で出勤したことを確認すると俺は娘の通学路をスマホのマップを見ながら歩き出した。

いつも車移動なので歩いてどこかへ向かうのが新鮮だった。

(こうやって、歩いてると学生時代を思い出すな)


通学路を歩いてると、ランドセルを背負って駆ける小学生、娘みたいに制服を着て通学する高校生、犬と散歩中のおじさん色々な人がいた。

普段、見ている街だが実際に歩いてみないとわからない発見がたくさんあった。

歩いていると、スマホの道案内の音声が鳴る。

(あ、この角曲がってまっすぐ行けばやっと駅か…。しかし、なんで今更いい歳こいて学生なんてしなきゃいけないんだ…。しかもスカートとか足がスースーして寒すぎだろ!)


俺はそう不満いっぱいに思って歩いていたらもう駅に到着した。

(うわ、すげー人。まあ、通勤ラッシュの時間帯だし当たり前か…)


そう思いながら駅のホームに立つ。

そして、改めて入れ替わった娘の体を見る。

(俺ら、本当に入れ替わったんだな。しかし、こいつも大きくなったなあ。もう高校生か…)


娘が成長したことを実感し嬉しさと寂しさ両方が込み上げてきた。


「まもなく、1番線に電車がまいります」


電車がホームに入線する。

(うわーギチギチの満員電車!満員電車なんて何年ぶりだろうか…)


そして、俺は押し込まれるようにして電車に乗った。

電車の中は、人でぎゅうぎゅうだった。

そして、電車は音をたてて駅を出発する。


人がぎゅうぎゅうにも関わらず静かな車内には、多少音漏れしてるイヤホンで音楽を聴いてるサラリーマン、SNSをみている娘と同じ歳くらいの女子高生、様々な人がいた。

そして、俺はチラチラみられているような感じがした。

(なんか視線を感じるな…。でも気のせいか)


そう思い、駅から降りた後の経路をスマホで確認していた。

すると、お尻に違和感があった。

後ろを振り向くと、知らないおじさんにがっつり触られていた。

(うわっ!なんだよこのおじさん!いい歳こいて痴漢かよ!て言うか視線の正体コイツか!)


俺もいい歳こいたおじさんか…。そう思ってるとまたお尻に違和感を感じた。

(コイツまた!ていうか娘の体に触るな!気持ち悪ぃ!)


ずっと触られていたので俺はそのおじさんを膝で思い切り蹴り飛ばした。


「痛あああ!」


おじさんが叫ぶ。

その声は、静かな車内に瞬く間に広がりこだました。

そして、周囲の乗客がガヤガヤとざわめき始めた。

(ざまあみろジジイ。尻触った罰だ)


俺は、痴漢おじさんを駅員に突き出そうとしたがその人は次の駅で逃げるように降りて行ったので作戦は失敗に終わった。


(こんなの女子高生からしたらトラウマなるよな…。咲希も色々苦労してるんだな…)


その後は平穏に学校の最寄り駅まで着き電車から降りた。

学校は駅から真っ直ぐだった。

(また、歩くのか…。この体あまり疲れは感じないけどさっきのこともあり俺のライフは残り少ないぞ)


そう思いながら思い足取りで学校に向かう。

(もう着くな。学校では目立たないでってあいつ言ってたな無難にやり過ごすか。でも驚かないでってなんだ?)


その疑問を考えながら、学校の昇降口へと到着する。

(やっと着いた。咲希はえーっと2-A組か)


そして、下駄箱を開ける。

すると、ペットボトルやらお菓子のからやらゴミがびっしり入っていた。

(なんだこれ!咲希が言ってた驚かないっでってこれか!あいつ整理整頓できないんだな…)


すると周りからクスクスと笑い声が聞こえてきた。

(なんだ?)


俺は、意味不明な笑い声を無視してゴミだらけの下駄箱から強引に靴を取り出して履き教室へと向かった。


(これから、授業か…。上手くやれるかなー。て言うか咲希のやつ会社で上手くやってるかな?)

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