第33話 ギルドまでの付き添い
「く、クソ!」
「黙ってろ」
モンドは無事に荷物を取り返しひったくり犯を持っていたロープで縛り上げた。流石に手際が良いな。
「ありがとうございます! おかげで助かりました」
被害にあった中年の女性がお礼を伝えていたな。これで一件落着、となればよかったんだろうが。
「油断は禁物だぞ」
「え?」
「ヒャッ!」
中年女性の悲鳴を聞きながらも俺はモンドの前に立ち、飛んできた矢玉を受け止めた。ひったくり犯の仲間がいたようだな。
屋根の上から弓でモンドを狙ったようだ。俺は掴んだ矢を投げつけて屋根の上の仲間の足を射抜いた。
「ギャッ!」
悲鳴を上げて仲間が屋根から落下する。他に仲間はいないようだな。
「あんなところに仲間がいたとは。助かったよ」
「何大したことじゃないさ」
その後は屋根から落ちた仲間も捕らえられ駆けつけた他の兵士に連れて行かれた。
「それにしても凄いですね。腕に自信があるというのは本当だったようですね」
ちょっとしたトラブルも片付き改めてギルドに向かう途中でモンドに褒められた。この件で俺が冒険者になれる実力があるとモンドは判断してくれたようだ。
「ここが冒険者ギルドですよ」
「ありがとう」
「いえ。これも仕事ですから」
冒険者ギルドにたどり着いた俺はモンドと一緒に中に入った。中には荒くれ者っぽい冒険者がそれなりにいたな。恐らくそういう奴程実力があるのだろう。
モンドは俺が冒険者登録を済ませるまでは見ているようだな。もっとも既に疑っている様子はないが。
さて、それじゃあ受付を済ますとするかな。
「冒険者登録をしたいんだがここで問題ないか?
」
俺は受付にいた女性に話しかけた。女性は見たところ二十歳前後の人族のように見えた。
「冒険者志望ですか。では先ず鑑定を行いますが宜しいですか?」
受付嬢がそう返した。鑑定がいるのか。しかし俺にはステータスそのものがないんだがな。
「鑑定が必要なのか」
「はい。冒険者になるにあたって最低限のステータスを把握しなければならないんです。ご了承ください」
「別に構わないが俺にはステータスがないぞ」
「はい?」
ステータスがないと言った俺に受付嬢の女はキョトンとした顔を見せた。まぁ仕方ない。実際にステータスがないのだからな。暗殺者の俺には無用の長物だったから召喚された時に捨ててきたのだ。
「えっと、一応鑑定を行うまでは冒険者登録はできませんので見せてもらっても宜しいですか?」
「そういうことなら仕方ないな」
まぁそう言うなら見せるぐらいは問題ないだろう。俺は受付嬢から鑑定を受けることにした。
「ところでステータスは神官でないと見れないのではないのか?」
「それは神官にそういった力を持っているのが多いというだけで、この水晶を使えば見れるんですよ」
そう言って受付嬢が机の上に水晶玉を乗せてきた。なるほどこれで見れるのか。そう考えたらあの王女の言っていたことがどれだけ適当だったかわかるな。
そうこうしている間に受付嬢が俺の鑑定を済ませたようだが。
「確かに全くステータスが出てきませんね……極稀にそのような人がいるとは聞いたことがありましたが」
どうやらステータスが無いというのはこの世界でも全くない話でもないようだな。まぁ召喚された時にも王や王女が無能と馬鹿にしていた。馬鹿にできるということはそういう事例もあるということだからな。
「その、ステータスが無いとなると流石に冒険者登録はオススメできませんが」
「ステータスがないと冒険者になれないのか?」
「特にそのような規則はありませんが、それでも死ぬとわかってる相手を登録させるわけにはいきませんから」
受付嬢が真顔で言ってきた。ステータスが無いという理由で戦えないと判断されたわけか。この世界の生活がステータスありきで成り立っているのならそれも仕方ないことか。
しかしそうなるとどう証明すべきか。
「ちょっといいですか? 私は彼の冒険者登録を見届けるためについてきたのだけど、彼の実力は本物ですよ。私が保証します」
そこで助け舟をだしてくれたのは兵士のモンドだった。
「え? どうして兵士の貴方が?」
「途中でちょっとした事件があったんですよ。その時に彼が協力してくれて私は難を逃れることが出来た。その時の動きといいとてもステータスがないとは思えない程でしたよ」
モンドがそういって俺の肩を叩いた。話を聞いた受付嬢が目を丸くさせる。
「そこまで言われるなら……少しだけ待っていてもらえますか。マスターの意見を聞いてきますので」
そう言い残して受付嬢がカウンターから離れていった。どうやらモンドのおかげで門前払いは食らわずに済みそうだな――
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