第165話 見張り
「あれがアジトの入り口だな」
「ああ。見張りもいるし、間違いなさそうだぜ」
森の中をしばらく歩き、コレットちゃんのおかげで盗賊たちのアジトを発見することができた。
岩肌に大きな洞窟があり、その入り口にはひとりの見張りがいる。
拘束した盗賊たちの話によると、暇な時は中で寝ていたり博打をしたりしているようだ。
「ここまでは予定通りだ。あいつらから聞いていた情報も間違いないし、これならいけそうだな」
「ええ、早くフー太様の仲間を助けに行きましょう!」
キャンピングカーで走りながらこのあとの流れについては可能な限り相談してきた。今のところは想定の範囲内で、盗賊たちの話も一致している。
これなら誰も怪我を負うことなく森フクロウを救出できるはずだ。
「ここからアジトまで少し距離があるな。中にいる仲間を呼ばれたらまずいし、こっそりと近付いて倒すぞ」
「よっしゃあ、任せておけ!」
ブロロロ
少し離れた場所にキャンピングカーを出して乗り込み、ゆっくりと透明化したキャンピングカーを走らせる。アジトの洞窟の前は開けた場所になっており、誰かが近付けばすぐに見張りが気付くところだが、透明化したキャンピングカーには気付かれていない。
この開けた場所がぬかるんでいたり、草むらだったりした場合には透明化したキャンピングカーの轍がくっきりと残ってしまうのだが、ここは硬い土なので、車体が通った跡はほとんど残らない。
問題はエンジン音だ。これだけはどうしても音がしてしまう。
「……んっ、何か変な音が?」
見張りからあと数メートルというところで、見張りの男がエンジン音に気付く。武器に手を掛けて見えないはずのこちらの方向を見てくる。
ガサガサッ
「むっ! なんだ、魔物か?」
しかし、こちらとは反対の方角から草木の揺れる音がして、見張りがキャンピングカーと逆の方を向く。
その瞬間を見計らって、車内からジーナとカルラが飛び出した。
「そこっ!」
「おらっ!」
「なんっ、ぐはっ……」
ドアを開けて飛び出したジーナのロングソードが見張りをの男の左肩にヒットし、続けてカルラの強烈な蹴りが再びこちら側に振り向いた見張りのみぞおちに直撃した。
そしてそのままジーナが見張りの口を押えようとするが、今の二撃ですでに見張りは気絶したようだ。すかさず見張りをアジトの入り口から遠ざけ、洞窟の中から倒れているところが見えないようにした。
「うまくいったね。コレットちゃんとフー太のタイミングもバッチリだったよ」
「うん!」
「ホー!」
草木を鳴らしたのは事前にキャンピングカーから降りて反対側へ回ったコレットちゃんとフー太だ。見張りがキャンピングカーのエンジン音に気付いた瞬間により大きな音を立てて、見張りの視線をキャンピングカーから外してもらう作戦だったが、見事に決まったな。
さすがに見張りも透明化できる魔法なんかは想定していなかったらしい。突然ジーナとカルラが姿を現したから相当驚いただろう。
「これで残りは5人だ。それに中の連中は気付いていないみたいだな」
視線を洞窟の中へと向けるが、奥からこいつの味方は現れてこない。今の攻防で見張りが大きな声を出す前に無力化させることに成功したようだ。ここで気付かれていたらこのまま待機し、洞窟から出てきた盗賊が倒れている仲間に気を取られてところで再び透明化したキャンピングカーから奇襲をする作戦も立てていた。
今のところ順調すぎて少し怖いくらいだ。
この見張りを離れた場所に拘束し、いよいよ洞窟の中へと入る。ここからはより慎重に進んで行かなければならない。洞窟は酸素を取り入れるためか、かなり大きな入り口となっていた。とはいえ、さすがにこれ以上はキャンピングカーでは入れないため、ここからは歩きとなる。
キャンピングカーはアジトの入り口に透明化した状態で停めておく。ドアを閉めると完全に透明になってしまうが、俺にだけは半透明に見えている。もちろん退却する時にみんながドアを開けることもあるから、しっかりとドアの場所を確認してもらった。すぐに逃げ出せるよう、エンジンも入れたままだ。
「よし、少し目が慣れてきたな。それじゃあ先へ進もう」
いよいよ敵のアジトへと入る。
中は薄暗いため、まずは洞窟の入り口で目を慣らした。ランタンを持ってはいるが、洞窟の奥にいる盗賊たちにバレてしまうとまずい。
盗賊たちから集めた情報によると、この中はいくつかの部屋に分かれているようだ。森フクロウが捕らえられているのは戦利品などを入れている倉庫となる。
俺たちの目的は森フクロウの奪還だ。可能なら盗賊を討伐したいところだが、それよりも自身の身の安全が大事なので、森フクロウさえ奪還したらすぐにここを離れて街へ逃げて衛兵や騎士団に通報するつもりである。
うまく戦闘を避けられればいいのだが……。
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