第164話 救出作戦
「それじゃあ、どうしても話す気はないんだな?」
「ご、拷問しても無駄だぞ! 絶対に仲間のことは売らねえからな!」
「仕方がない。あんまりこういうことはしたくないんだけれどな……」
俺は拘束された盗賊の目の前にキャンピングカーを取り出した。
「なっ、なんだそれは!?」
「こいつは俺の召喚魔法によって召喚した魔物だ。餌をやる時間だったからちょうどいい。こいつに生きたまま食われるのは楽に死ねないぞ。まだ他に代わりは3人もいるから、そっちに話を聞くことにしよう」
「ま、待ってくれ! わかった、何でも話すから殺さないでくれ!」
「………………」
こいつも他の盗賊と同様、キャンピングカーを見せたところ、すぐにこちらの質問に対して素直に話すようになった。さすがに実際の拷問なんかはする気はなかったので助かった。
やはりキャンピングカーはこの世界の人にとって魔物に見えるらしい。こんなに格好いいのになあ……。
「残り人数は6人ほどか。それほど大きな盗賊団ではないみたいだけれど、どうしたものかな……」
4人の盗賊たちにそれぞれ話を照らし合わせながら情報を集めた。最初の1人は俺たちがすでにアジトを制圧したと勘違いをしていたので、残りの3人にはアジトのことについてを聞いた。仲間をかばおうとしていた者もいたが、キャンピングカーを見せたらすぐに吐いた。盗賊の仲間意識なんてこんなものだろう。
別々に話を聞くことによって嘘で話を合わせられることを防ぐ。予め捕まった時のために口裏を合わせている可能性もあるのかと思ったが、最初の盗賊がアジトへ目線を送った方向と、他の者が喋ったアジトの位置が一致しているので間違いはなさそうだ。
盗賊のアジトはここから見える山の麓に洞窟があり、そこには一羽の森フクロウが捕らえられている。
「それくらいなら問題ないと思います」
「ああ。さっきみたいに奇襲できれば楽勝だぜ」
確かに先ほどの4人の盗賊を一瞬で倒した2人なら残りの6人くらい問題ないように思える。それにこの透明化したキャンピングカーなら、相手に気付かれずにかなり接近することができる。
「わかったよ。だけどさっき以上に気を付けていこう。もしも不測の事態があったらすぐに逃げるからね」
「ホホーホー!」
「うん、わかった!」
ここから街へ移動して盗賊たちを引き渡し、そこから討伐部隊を送るのを待っている間に逃げられてしまう可能性のほうが高い。森フクロウであるフー太の仲間が捕らえられているわけだし、俺たちにできる限りのことはしよう。
アジトは洞窟の中ということだし、いろいろとやりようもある。ただし、少しでも危険だった場合は迷わず撤退だ。フー太の仲間も大切だけれど、俺にとってはそれ以上にみんなのことが大切だからな。
キャンピングカーを走らせ、盗賊たちのアジトがある山の麓まで移動してきた。拘束した盗賊たちは道の真ん中に置き、こいつらが盗賊であることと、アジトの方角を書いた書き置きを残しておいた。俺たちが戻ってくるか、先ほど追い越した馬車が街まで連行して通報してくれるだろう。
「ここからは歩いて進もう。音を立てないように気を付けてね」
「了解です」
ここから森に入り木々が邪魔になるため、キャンピングカーを降りて歩いていく。
「一応アジトへの目印はあるらしいから、うまく見つかるといいんだけれど……」
「……シゲトお兄ちゃん、たぶん匂いで跡を追えると思うよ」
「おおっ、それはすごい!」
「とっても臭かったからね……」
「あっ、なるほど……」
言われてみるとあいつらはだいぶ臭っていた。俺たちは毎日キャンピングカーに備え付けのシャワーを浴びられて、石鹸やシャンプーにコンディショナーまであるけれど、盗賊たちはあまり川で水浴びをすることがないのかもしれない。
さっきまで嗅覚のいいコレットちゃんには結構きつかったのかもしれないな。ただ、そのおかげで盗賊たちのアジトを見つけることができそうである。
アジトの大体の場所と目印は聞いているが、初めて来る場所でわからなかったり、盗賊たちに鉢合わせしたりするかもしれない。黒狼族のコレットちゃんの鼻はこういう状況でとても役に立つ。
「私が先頭を歩きます」
「頼む、ジーナ」
森の中はジーナが先頭を歩き、次にコレットちゃん、俺とフー太、最後にカルラだ。本来ならばフー太には空を飛んでもらって遠くを見てほしいところだが、先に盗賊たちに見つかってしまうとまずい。綺麗な真っ白な羽毛だから、森の中では少し目立ってしまう。
盗賊たちに見つからないことが優先だ。
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