第162話 盗賊との戦闘
「やはり盗賊で間違いないようです」
「そうだね」
ジーナと一緒に小声で話す。
現在は透明化したキャンピングカーでゆっくりと岩陰へ近付いている。この距離なら問題ないとは思うのだが、念のためにみんなとは小さな声で話している。
岩陰にいる4人は野営や休息をとるわけでもなく、しばらく経ってもここから移動する気がないようで、ずっとこの道を通る者を見張っていた。
そして木に結んだロープを道に伸ばしていることを確認した時点で、あいつらがこの道を通る者を襲う盗賊であることが確定する。相手が馬車だった場合、このロープを張って馬を転ばせ、中にいる人を襲うつもりだったのだろう。単純だけれど、非常に効果的な手段だ。
ただの人相の悪い冒険者が休憩しているだけだったらよかったのに……
「それじゃあ作戦通りいくけれど、絶対に無理だけはしちゃ駄目だよ。なにかあったらすぐにキャンピングカーに戻って来てね」
「ええ、わかりました!」
「おう、了解だぜ!」
「うん!」
「ホホー!」
透明化したキャンピングカーで盗賊たちにエンジン音が聞こえないギリギリまで少しずつ近付いていく。
先ほどキャンピングカーが通ったことに対する盗賊たちの警戒心はすでになくなったようで、草むらの中で1人は道の両側を見張っており、残りの3人はだらだらとしている。
この道を通る者が現れたら、遠目から襲撃するか判断するのだろう。近くに盗賊の仲間がいないかも疑ったが、フー太に頼んでかなり上空から周囲に人がいないことを確認してある。
相手は魔物ではなく知性のある人だからな。昨日以上に警戒をしていかなければならない。
「……しっ!」
「なっ!? ぐわっ!」
「いでええ!」
ジーナが透明化したキャンピングカーのドアを開き、外に出て盗賊たちへ向けて複数のナイフを投擲する。
そのナイフは見張りの右肩と座って話し込んでいた男の右肩に命中した。
「野郎、どこから出てきやがった!」
「なんだ、騎士団の野郎どもか!?」
突然現れたジーナに驚きつつも、即座に武器を構える2人盗賊。戦闘の経験があるようで、こちらの奇襲に対してもすぐに反応する。
「おらよ!」
「んなっ!? 上だ!」
「「ぎゃああああ!」」
ジーナに反応できたのは見事だが、そちらに気を取られて事前にキャンピングカーの外に出て上空に待機していたカルラの急襲には反応できなかった。空から勢いをつけて急降下したカルラの強力な蹴りが盗賊2人の顔面にヒットする。
かなりの威力だったようで、2人とも結構な距離を吹っ飛び、倒れたまま動かなくなった。
「なんだってんだよ、ちくしょう!」
「くそったれ!」
「せいっ!」
「ぐわあああ!」
「がはっ!」
ジーナに続いて突然上空から現れたカルラに右肩を貫かれた2人が反応するが、ナイフを投擲してそのまま突っ込んでいったジーナが迫った。
敵の実力がそれほどのものではないと判断したようで、ジーナは鞘から抜かずにロングソードをそのまま打ち下ろす。そして続けてみぞおちに一撃を入れ、盗賊2人は悶絶した。
「やったあ! ジーナお姉ちゃんとカルラお姉ちゃんはすっごいね!」
「そうだね、だけどまだ油断は禁物だよ」
「ホホ~!」
俺たちもジーナが飛び出したあとに続いてキャンピングカーを出ていた。俺は大きな盾を持ち、コレットちゃんは俺の後ろでクマ撃退スプレーをその手に持っていたが、その出番はなかったらしい。
もちろんキャンピングカーのエンジンは入れっぱなしで、何かあったら盾を持った俺が前に出て、コレットちゃんがクマ撃退スプレーを使いつつ、ジーナとカルラと合流して逃げるつもりだった。
とはいえ、もちろん油断はしない。気絶しているふりをして襲ってきたり、仲間が現れたりする可能性もある。
カルラとジーナに気を付けてもらいつつ、気を失っている盗賊たちの武器などを取りあげてロープで縛りあげた。
「……さて、これからどうしようかな?」
盗賊たちを木に縛り上げたはいいが、こいつらをどうすべきかまようところだ。
「このままここに放置してもいいんじゃねえか? 放っておいたら魔物が綺麗にしてくれるだろうぜ」
「……まあ、その考えもなくはないか」
カルラとジーナは敵の実力を見て問題ないと判断したようで、殺さないでくれた。人を襲うような輩はどうなってもいいとは思うのだが、コレットちゃんもいることだし、さすがに教育上よろしくない。
こいつらの持ち物を見ても毒や鍵開けの道具などを持っていた。これまでに人を殺したことがあるかもしれないし、ここで逃がしたら別の人が被害を受けるかもしれない。
「ただ、ここに放置すると逃げ出せる可能性もあるから、面倒だけど近くの街まで連行していくのがいいかな」
一応刃物はすべて没収したが、それでもなんらかの方法で拘束から抜け出す可能性があるし、魔物に襲われた際、ロープが切れて逃げ出す可能性もある。それで逃げたこいつらが別の人を襲うのは嫌だし、手間だが近くの街まで連れていくしかないか。
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