第160話 モツ煮込み
「うわあ〜こっちの料理は味が染み込んでいて、とってもおいしいね!」
「うん、じっくりと煮込んだから味が染みているね。日本酒も使えるようになったから、味に深みが出るようになったよ」
コレットちゃんが食べているのはモツ煮込みである。
モツは臭みをとったあと、ネギと一緒に下茹でしてさらに臭みを取る。そのあと一度ザルにあげ、出汁を張った鍋にモツと切った野菜を入れる。
醤油、味噌、そして日本酒を少量加えてじっくりと煮込む。酒補給機能で飲めるようになった日本酒は清酒なので料理酒としても使うことが可能だ。酒を料理に使うと臭みをとったり、食材を柔らかくしたり、アミノ酸により食材の旨みを引き出したりすることができる。
ちなみにモツ煮込みは醤油ベースに隠し味くらいの量で味噌を入れるものと、反対に味噌をベースにしたものに分かれる。個人的には味噌が好きなので今回は味噌強めの味にしたが、みんな問題ないようだ。
「シゲト、それはなんですか?」
「これは七味唐辛子っていう香辛料だよ。少し辛いけれど、かけると味が引き締まっておいしいんだよ」
モツ煮込みには七味唐辛子にもよく合う。そして当然ながらモツ煮込みにはビールだ。もちろん日本酒も合うぞ。
本当に酒補給機能があって助かったぜ! 今日は頑張ったから数日に一回のご褒美だ。まあ、主に狩りで頑張ってくれたのはみんなだけれどな。とはいえ、俺も解体や内臓の下処理などでは頑張ったのである。
ホルモンにお酒はよく合うが、あとは真っ白なご飯さえあれば言うことなしだったのになあ。新しい街へ行くごとにご飯の情報は探しているのだが、今だにそれらしき情報は見つからない。いつかご飯が見つかるといいのだが……。
「こっちもいろいろな味があってすげえな! あんまし魔物の内臓とかは食わなかったから勉強になったぜ。シゲトは本当に料理がうまいな」
「ホホ〜!」
「内臓は新鮮な状態であることと、下処理をすれば臭みがなくなるからね。あとこのモツ煮込みは一晩寝かせると味が変わるから、明日も食べてみよう」
一晩寝かせたモツ煮込みは味が馴染んでさらにおいしくなる。
そういえばカルラは前回のモツ料理を楽しんだ時にはいなかった。みんなもいろいろと楽しんでくれて何よりだ。
解体作業などに苦労する分、街で肉を買うよりもおいしい気がする。それに新鮮な状態で肉をアイテムボックスに保存することができるのはいいな。安全を確保しながら進めば、狩りをするのもそれほど危険ではないみたいだし、たまになら今日みたいに無理をせず自分たちで肉を確保するのもいいかもしれない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
夜は特に大きな問題もなく、朝になった。
朝食を食べてから早速出発する。
「さて、今日はオドリオの街付近まで進めればいいんだけれどな」
「オドリオの街ですか。本当に久しぶりですね」
「ホーホー!」
フェザニアの森で狩りをして十分な量の肉を確保した。
次に向かうのは俺がオドリオの街である。エリナちゃんを助けるために特効薬を購入した街で、エミリオ商会のある街だ。ほぼ一月かけて、ようやくここまで戻ってきたなあ。
そしてオドリオの街からハーキム村までは半日もかからない。ハーキム村へ戻る前にエミリオ商会へコショウとアウトドアスパイスを売りに行く。それに加えて昨日手に入れた魔物の肉以外の素材やレッドドラゴンの素材なんかも買い取ってもらえると助かるところだ。
「どんな街なんだろうね?」
「大きな街なのか?」
「そこまで大きくはないかな。その少し先にあるロッテルガの街の方が大きいよ」
コレットちゃんとカルラはオドリオの街は初めてになる。ハーキム村から一番近くにある街ということで、そこまで特徴的な街ではなく、そのあとに行ったロッテルガの街の方が印象は強かったイメージだ。
とはいえ、二人とも新しい街へ行くこと自体が少なかったみたいだし、楽しめるだろう。またお金も入って来ることだし、買い物でも楽しむとしよう。
「シゲト、止まってください!」
「っ!」
オドリオの街へ向けてキャンピングカーを走らせていると、突然ジーナが声を上げたのでブレーキを踏んだ。
「うおっと!」
「わわっ!」
元々それほどスピードを出していたわけではないので、キャンピングカーはすぐに停車した。
後部座席に座っていたカルラとコレットちゃんも走行中は常にシートベルトを締めていてもらったおかげで、怪我はしていないようだ。
「どうしたの、特に障害物や異常はなかったみたいだけれど?」
「ホー?」
特殊機能によって透明化した状態で道を走っていたが、目の前に人や魔物などの障害物はなかったように見えた。助手席でジーナに抱き抱えているフー太も首を傾げているから、特に異常はないみたいだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます