第159話 安定の狩り
「解体は疲れたな。でもおかげで当分肉には困らなそうだね」
「やったね、シゲトお兄ちゃん」
「コレットのおかげだぜ。ちっこいのにやるじゃねえか」
「えへへ~! カルラお姉ちゃんもすっごく強くてびっくりしちゃった!」
二人の言う通り、みんな本当にすごかった。今日の成果は間違いなく俺以外のみんなのおかげだ。
カルラはコレットちゃんの実力を実際に目にするのは初めてだ。森の中で五感の中で特に嗅覚と聴覚が優れた獣人のコレットちゃんは森の中にいる魔物がこちらに気付く前に魔物の気配を察知できる。
そこから風下に回りつつ、視覚の優れたフー太とジーナが魔物を見つけ、ほぼ確実に魔物に対して奇襲することができた。
カルラの戦闘力はレッドドラゴンと戦った時に見ていたけれど、改めて見ても圧巻だった。長く伸びた鋭い爪は魔物の急所を正確に貫いていた。空からの奇襲もできて、危なげなく魔物を倒してくれた。
「ジーナもすごかったね。さすがみんなの護衛だよ」
「シゲトにそう言ってもらえて嬉しいです!」
ジーナもそのロングソードで巨大な魔物の首元を斬って仕留めた。やはりジーナの戦闘能力も非常に高く、今日はポンコツな様子を見せることなく危なげなく魔物を倒してくれた。
「フー太もすごかったよ。ありがとうね」
「ホーホホー♪」
フー太も小さな姿で森の中を駆け巡り、魔物へ近付いた瞬間大きな姿に戻ってかぎ爪で魔物を倒した。特に小型の魔物はすばしっこくて逃げられそうになったが、しっかりとフー太が仕留めてくれたな。
それに加えて空を飛ぶ鳥型の魔物もフー太が仕留めてくれた。小型の魔物はほとんどフー太の手柄だ。
……ちなみに俺はというと、せっかくノクターラの街で購入した重い盾を持ってきたのだが、一度も使うことなく狩りが終わった。まあ、盾を使う必要がないほどみんなが強く、危険がなかったということだな。コレットちゃんに持っていてもらったクマ撃退スプレーも今日は使うことがなく終わってくれた。
やはりダナマベアやレッドドラゴンなど、イレギュラーな魔物さえ出なければ狩りも問題なさそうだ。コレットちゃんが事前に魔物の場所や大体の大きさを把握できることが非常に大きい。
「それじゃあ今日はもうちょっと移動して晩ご飯にしよう。久しぶりにホルモンを食べられるよ」
魔物を倒す度に一度解体作業を挟んでいたため、すでに結構な時間が経過している。倒した魔物はすぐに血抜きをした方がおいしくなるからな。キャンピングカーのおかげで水場に困ることがないのは助かる。
内臓であるホルモンは肉よりも新鮮な状態でないと食べられないため、街では売っていない。今日の晩ご飯は楽しみである。
「今日の晩ご飯はいろんなモツ料理だよ」
「とてもいい香りですね!」
「こいつはうまそうだぜ!」
「うわあ~いっぱいあるね!」
「ホホー♪」
テーブルに並ぶたくさんの料理。今日はいろいろな種類の魔物を仕留めたから、いろんな料理を作ってみた。
アイテムボックスがあるから新鮮なモツを楽しめるのだが、以前に狩りをして確保していた分はすでになくなっている。
内臓は一体から取れる量も限られているからな。
「これはおいしいですね! 噛むとじゅわっとした肉汁が溢れ出してきて、濃厚なのにしつこくない絶妙な味わいが喉を通り過ぎていきます」
「ああ、それにこのタレがうまいぜ!」
レバーの方は野菜と一緒に炒めて甘辛いタレをかけてみた。
それともう一体の魔物のレバーはシンプルに焼いて塩で食べてみる。
「臭みがなくてとってもおいしいね!」
「ホホー!」
「臭み取りがうまくいったみたいだね」
今回は下処理のためにいつも使っているホワイトブルの乳にしばらく浸してみた。
元の世界の知識で、こうすると臭みが抜けるとレシピ本で読んだことがある。ただし、今回使ったレバーはかなり新鮮なので、漬ける時間は少しにしておいた。
前回とは魔物の種類が異なるからはっきりとは言えないが、あの時よりもより臭みが抜けている気がする。本当にホワイトブルの乳はいろいろなことに使えて便利だ。
「こっちの白いやつもプルプルとした食感でうめえな!」
「そっちは腸の部分だよ。うん、これはいけるな。脂が多い部分でおいしいよね」
カルラが食べているのは小腸の部分だ。焼肉屋ではマルチョウと呼ばれる小腸の部位になる。牛や豚の腸は食べられると知っていたけれど、今回狩ったイノシシとシカ型の魔物はどうなのかなと思っていたところ、食べられるとジーナが教えてくれた。
それに加えて以前に狩った魔物の時にも小腸の内臓物を水で洗い流したあと、小麦粉でもみ洗いすることによって臭みが取れると教えてくれたのもジーナだ。普段から狩りをしているジーナの知識は頼りになる。
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