第158話 フェザニアの森
「よし、今日はここまでかな」
トレドーレの街を出発して、今日は結構な距離を走った。今日の宿泊地は平原で、いつものように少し道を外れた場所に透明化したキャンピングカーを停車した。
オアシスでだいぶゆっくりと過ごしたから、俺もリフレッシュできたな。
「もう外は普通の気温みてえだな」
「うん、涼しくてちょうどいいね。砂漠だと頭と尻尾がとっても暑かったよ」
カルラとコレットちゃんの言う通り、キャンピングカーの外に出るとちょうどいい気温だった。トレドーレ砂漠の寒暖差は本当に酷かったからなあ。
俺も二人と同じで普通の気温へ戻ったことにほっとした。あの気温差がある場所にしばらくいたら、体調を壊してもおかしくない。
「さて、いつものように手分けをして準備をしよう。昨日までのオアシスと違って魔物や盗賊が出てくるかもしれないから気を付けてね」
「はい。魔物が出てきたら任せてください」
「ホー!」
幻のオアシスでは虫以外がいなかったけれど、ここでは普通に現れるからな。実際にここに到着するまでに何度か魔物ともすれ違った。
危険を感じずにのんびりと過ごせていたのは昨日までだ。今日からはいつも通りしっかりと警戒していこう。
「昨日は洗濯ものがすぐに乾いていたので楽でした」
「日中は本当に暑かったからね。今日からはそれもいつも通りかな」
オアシスにいた時の洗濯物は昼に少しの時間干すだけで一瞬で乾いてくれた。洗濯物を干すときだけあの場所の気温だったらいいのだけれどな。
手分けをしていつもの野営の準備をする。みんなもだいぶ慣れたものだ。
「ご馳走さまでした」
「うまかったぜ」
今日の晩ご飯はトレドーレの街で購入してきた肉と野菜炒めだ。
塩コショウは使ったけれど、味はまあそこそこといったところかな。
「さすがにレッドドラゴンの肉と比べちゃうと少し物足りないかも。ただ、いつもおんなじ肉を食べると飽きちゃうからね。たまに食べるくらいがちょうどいいと思うよ」
「ええ、こちらの料理でも十分においしいですから問題ないですよ」
「ホー♪」
今のところはレッドドラゴンの肉が一番おいしかったが、毎日は飽きてしまう。せっかくのおいしいお肉だし、少しずつ食べていくとしよう。
「街で買ったお肉も悪くないんだけれどね。明日くらいには目的地の森に到着する予定だし、明後日は久しぶりに狩りをしてもいいかもしれないね」
「いいですね。ここ最近は剣を振るう機会がなかったので、ぜひ狩りにいきましょう!」
「うん、僕も行きたい!」
「俺もたまには身体を動かしてえな!」
「ホホ―ホー!」
軽い気持ちで言ったのだが、どうやらみんなは久しぶりに狩りがしたいらしい。レッドドラゴンの肉はまだ結構残っているけれど、アイテムボックスに入っている他の肉はかなり消費してきた。そろそろ肉を確保してもいい頃合か。
前回ダナマベアと戦った時と比べてカルラもいるし、レッドドラゴンの鱗で防具も作った。キャンピングカーに透明化機能も追加されたことだし、リスクは限りなく低いはずだ。
「わかったよ。それじゃあ明日無事に目的地まで到着したら、明後日は狩りに行こうか。でも、何かあったらすぐに逃げられるようにしておこう」
なにせ危険の多い異世界だからな。あまり楽観的過ぎるよりもこれくらい慎重に考えた方がいい。
「大丈夫です。今度はそんな事態にはしませんので!」
「………………」
ジーナは自信満々にそう言うけれど、どこか抜けたところがあるから少しだけ心配だ。最近はダナマベアやレッドドラゴンに遭遇したりとトラブルに遭遇することも多いからな。気を抜かずにいくとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そして翌々日。昨日は一日中移動して、フェザニアの森まで到着した。
この森の近くにある街はここからもう少し先なので、今日は狩りをしてここで一泊といったところだろう。狩り自体は数時間で終わるかもしれないけれど、そのあとの解体作業が結構な時間を使うからな。
街まで行けば、そこからオドリオの村に寄りつつハーキム村までキャンピングカーで2~3日かといったところか。
「よし、それじゃあ森へ入ろう」
「うん!」
「了解です!」
「おう!」
「ホー!」
みんな準備は万端のようだ。防具を服の下に着込み、俺は大きな盾を持っている。
森の中でもキャンピングカーを出せる川沿いを進んで行くし、できる限りの配慮はしたつもりだ。あとは何事もないことを祈るとしよう。
「これだけ確保できれば十分かな。今日はこの辺りにしておこう」
「ええ、十分な量が確保できましたね」
俺の心配事を他所に、特に誰かが怪我をすることなく、大きな魔物を2体と小さな魔物を4体も仕留めることができた。
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