第155話 一緒に?


「ふう~今日の飯もうまかったぜ」


「ホ~!」


 今日は一日中オアシスの泉でのんびりと過ごした。


 晩ご飯とデザートもみんな楽しんでくれたようだ。


「ピィ」


「ピィピィ」


「二人も楽しんでくれたようでよかったよ」


 結局精霊二人も昨日に引き続き一日中姿を現して俺たちと一緒に遊んだり、ご飯を食べたりしていた。


「精霊様もとてもおいしそうに食べてくれましたね。シゲトのご飯を気に入ってくれたのかもしれません」


「シゲトお兄ちゃんのご飯はおいしいもんね!」


「ピィ?」


 相変わらず俺以外の言葉はわからないみたいだ。不思議そうにしている顔も可愛らしい。


「楽しんでくれたならよかったよ。なんだか明日出発するのが寂しいなあ」


「ピィ……」


 俺がそう言うと、二人の精霊はとても悲しそうな顔をする。


 俺もせっかく友達になれた二人と別れるのは寂しいものだ。


「ここは人目を気にせずのんびりとできるし、もうちっといてもいいけどな」


「僕ももう少しここにいたいかも」


「カルラとコレットちゃんの気持ちも分かるけれど、このオアシスにそこまで長居するつもりがなかったからね。もう少し食料を買い込んでおけばよかったよ、ちょっと失敗したなあ」


 オアシスでは一泊するだけのつもりだったのが、あまりに居心地が良くて三泊もしてしまった。いつも食料を大量に買い込むのは街を出る時が多いから、今回は食料をそこまで買い込んでいなかった。


「それにそろそろハーキム村の方へ向かわないといけないからね」


「そうですね。もうそんなに時間が過ぎていましたか……」


 食料だけならこれまでに貯め込んだ料理なんかはまだあるけれど、ハーキム村を出発してから20日ちょっと過ぎている。もうそっち方面に向けて進んで行かなければならない。


 二人の精霊と一緒にジーナも暗い顔になる。あんまり意識しないようにしていたけれど、ジーナと一緒にいられるのはあと10日もない。


 ジーナは一月だけの約束で俺とフー太の護衛を務めてくれていた。俺や他のみんなとは違ってジーナには帰る場所がある。もちろんそれはとてもいいことなのだけれど、今のパーティからジーナが抜けるのは本当に寂しくなってしまう。


「ピィ……」


 おっと、今はジーナとの別れよりも前に精霊二人の方か。


「シゲトお兄ちゃん、精霊さんも一緒に来てもらったらダメかな?」


「……うん、それもいいかもしれないな」


 空間拡張機能によってキャンピングカー内のスペースが広がったことだし、精霊はとっても小さい。空も飛べて姿を自在に消せるみたいだし、俺たちの旅について来てもらってもいいかもしれない。


 もちろん精霊二人が頷くのならだが。


「精霊さん、俺たちはみんなでこのキャンピングカーに乗って旅をしているんだけれど、もし良かったら二人とも俺たちと一緒に来ないか?」


「「……ピィ」」


「そうか、そうだよね」


 俺の質問に精霊二人は残念そうにしながらだが、はっきりと首を横に振った。


 予想はしていたけれど、この二人はこのオアシスに宿る精霊のようだ。他の場所へ移動したくないのか、あるいは移動することができないのかもしれない。


「俺たちは明日ここを出発しちゃうけれど、またここへ遊びに来てもいいかな?」


「「ピィ!」」


「ありがとう、またお邪魔させてもらうよ」


 今度の俺の問いに精霊二人は笑顔ですぐに頷いてくれた。一緒に同行することは叶わなかったけれど、このオアシスにはまた来てもいいみたいだ。


 ここではこの世界に来てから一番のんびりと過ごせたかもしれない。みんなもこのオアシスをとても気に入ってくれたみたいだし、キャンピングカーのカーナビ機能があればまた来ることができる。またここに来させてもらうとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「朝ご飯ができたよ」


「ホー!」


 そして翌日。


 朝ご飯を作り、まだ寝ているみんなを起こす。みんな力いっぱい遊んだこともあって、昨日はぐっすり眠れたようだ。


「精霊さんは?」


「あれっ、昨日の夜はジーナお姉ちゃんのお隣にいたよ」


「ええ、私の隣で二人仲良く寝ていたはずですが」


 いつの間にか精霊さんがどこかへ行ってしまったらしい。また姿を消してしまったのかな?


「外にいるのかもしれねえな。ちょっと見てくるぜ」


「カルラ、頼むよ」


 もしかしたら外に出ているのかもしれない。俺は運転席の方を見てみよう。


「うおっ、シゲト! ちょっと来てくれ!」


「どうした!」


 外へ出たカルラが声を上げる。


 なんだ、もしかして魔物か!?


「うわっ、なんじゃこりゃ!?」


 キャンピングカーの外に出ると、ドアの前には大きな影があった。


「……こいつは果物の実だな。いろんな種類があるぞ」


「本当だ」


 その影の正体は高く積まれた果物だった。様々な果物の実が山ほど積まれていた。


「ピィ」


「ピィピィ」


「あっ、こんなところに」


 そしてキャンピングカーの車内からいなくなっていた精霊の二人がこの果物の山の上にいた。


 どうやらこの果物の山は精霊さんたちが作ったらしい。

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