第151話 突然の来訪者
「ホホ~ホ~♪」
「これはすばらしいですね! 甘い果物と酸味のある果物、そしてこの白くてふわふわとしたクリームが口の中いっぱいに広がっていきます!」
「うわあ~甘くてとってもおいしいよ!」
「こいつはうめえ! 果物とこの白いやつがアイスクリームにすげえあっているぞ!」
みんながフルーツパフェを食べて幸せそうな顔をしている。
俺も一口食べてみたが、様々な果物の甘さと酸味に生クリームのなめらかな食感とほのかな甘みが絡みあって本当にうまい。果物ごとに味が異なり、食感も異なるので、一口ごとに違った味が楽しめる。
外がとても暑くて、冷えた果物やアイスクリームがとてもおいしく感じられることもあるのだろう。砂漠のオアシスでパフェを食べてのんびりと過ごすのはなんだかリゾート地に来ているようだ。
「シゲト、お代わりをくれよ!」
「シゲトお兄ちゃん、僕もほしいな!」
「私もお願いします!」
「ホホ―!」
どうやらみんなフルーツパフェを気に入ってくれたようだ。今回はちゃんとお代わり分も作ってある。
「了解。だけど晩ご飯もあるから、一回だけだよ。せっかくだからもう一日くらいここに泊まろうか? 明日はのんびりと過ごしながらいろいろと料理を作っておこうかな」
このオアシスではのんびりとすごせるし、英気を養いながら今後のためにもいろいろと準備しておくとしよう。
「ああ、俺は賛成だぜ!」
「僕も!」
「私もです!」
「ホ―!」
「ピィ!」
「……うおっ、なんだ!?」
驚きすぎて思わず座っていた椅子から立ち上がった。
先ほどまで何もいなかったテーブルの上に突然小さな人のような者が現れた。
「な、なんだこいつ! シゲト、どうする?」
「シ、シゲトお兄ちゃん、どうしよう!」
「どうしようか……」
突然テーブルの上に現れた緑色の服を着た小人は三十センチメートルほどのとっても小さな男の子の姿をしていた。
俺たちが驚いていると、少しびっくりしたような表情をしているが、特に何もしてこない。カルラは爪を伸ばして戦闘態勢に入り、コレットちゃんはクマ撃退スプレーを取りに行こうとしている。
この小人からは敵意のようなものは感じられないけれど、なんなんだ? それにいきなりどこから現れたんだ……?
「……この者の身体は魔力でできているようですね。初めて見るのですが、村長から聞いていた精霊というものなのかもしれない」
「精霊?」
ジーナはこの小人に心当たりがあるみたいだ。
「はい。精霊とは自然に宿る存在で、ごく稀に人の前に姿を現すみたいですよ。特に害はないそうで、実体はないようなものらしいです。このオアシスの精とでも言うべきでしょうか」
「へえ~そうなんだ」
よくわからないけれど、実体がないようなものということは害もないのかな。確かにこちらに何かしてくるわけでもなさそうだ。俺たちを好奇心に満ちた目で見ているだけらしい。
この世界には人や魔物だけじゃなくて精霊という存在もいるのか。
「ホー」
「ピィ」
フー太と小人の精霊が謎のコミュニケーションを取っている。精霊はフー太よりも少し小さくて、フー太と一緒にじゃれ合っているとなんだか微笑ましい。
「確かに敵意は感じられねえな。それにしてもいきなり現れたから驚いたぜ……」
「うん、気配も全然感じられなかったね」
カルラが爪を戻して警戒を解く。みんながこの精霊の気配にまったく気付かなかったということは、本当にここに突然現れたのかもしれない。
「ピィ」
「フルーツパフェが欲しいのか。俺の食べかけのでよければ食べてみるか?」
「ピィピィ!」
精霊が俺のパフェを興味深そうに見ていたから聞いてみたところ、頷いてくれた。俺の言葉が伝わっているのかわからないが、俺の意図は伝わったらしい。
食べかけのパフェの一部を別のお皿に取り分けてあげる。この精霊だと普通のスプーンでも大きいみたいだが、そのまま素手で食べている。
「ピィ!」
「おいしいか。もっと食べていいぞ」
くちばしの周りに白いクリームをつけながら食べるフー太も可愛らしかったが、この子が食べている様子も非常に可愛らしい。この子の大きさと比較すると、カットしたフルーツがひとつの大きな果物くらいのサイズがある。
両手で持って白い生クリームを黙々と食べている仕草は癒されるなあ。
「ピィピィ!」
「それはアイスクリームといって、魔物の乳を冷たく固めたものだよ。暑いから冷たく感じておいしいだろ?」
「ピィ!」
アイスクリームに興味を示していた精霊が返事をする。
「というかこのチビすけ、シゲトの言葉が分かっているんじゃないのか?」
「えっ?」
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