第148話 デザート


「ふう~今日の飯もうまかったぜ」


「ホホ~♪」


 今日の晩ご飯を食べ終わる。


 最近は肉が多めだったこともあり、野菜が中心な晩ご飯だったけれど、みんな満足してくれたみたいだ。オアシスの泉でたくさん泳いだこともあってお腹がペコペコだったことも大きいだろう。海で泳ぎまくったあとは五百円くらいするカップラーメンやカップ焼きそばでもおいしいのと同じ理論である。


「それにしても、一気に冷えてきましたね」


「うん、いつもより寒いね……」


 ジーナとコレットちゃんの言う通り、いつもは外で食べることの多い晩ご飯だが、今日はキャンピングカーの中で食べている。みんながシャワーを浴びている間に外で作った料理をわざわざキャンピングカーの中まで持ち込んだ。


 というのも、日が落ちるとこの辺りの気温が一気に下がったのだ。予想はしていたのだが、ここまで一気に下がるとは思わなかったぞ。昼間のめちゃくちゃ暑い気温との差でそう感じるのかもしれないが。


「……さすがに今日はアイスクリームはいらねえかな」


「確かにキャンピングカーの中でもだいぶ寒いか」


 いくらアイスクリーム好きのカルラでも、この寒さの中でアイスクリームを食べたいとは思わないみたいだ。


 というか、さすがにこのままだと寒すぎる……。この時間で、しかも車内でもこの室温だと、夜はさらに寒くなるに違いない。


「よし、そろそろ暖房をつけよう」


 キャンピングカー内の暖房のスイッチを入れる。


 暖房があるのなら先に入れておけよという話だが、家の暖房とは違ってキャンピングカーの暖房には電力という制限がある。特に冷房や暖房は結構な電力を使用するから、残りの電力を考えて使用しないといけない。


 キャンピングカー内のライトや家電などの電力は走行中や車体上部に設置してあるソーラーパネルによって発電されている。今日の天気はよくてそこそこの距離を走ったこともあり、冷房を使いながらでも結構な発電ができていた。そしてこのオーダーメイドのキャンピングカーのバッテリーは結構な容量の物にしている。


 それでも暖房はかなりの電力を消費するので、連続で使用するにしても4時間ほどとなる。


「まさか新しく拡張した『電力消費半減機能』がこんなにすぐに役に立つとはな」


 キャンピングカーのレベルが上がったことによって新たな拡張機能が増えた。その中で今回ほしかった機能がこいつだ。


 相変わらず説明はないが、さすがにこの機能はこの名前の通りだろう。取得するためのポイントは3ポイントと高かったが、この機能さえあれば、夜の間も冷房や暖房をつけておけるからな。あの暑くて寝苦しかったアステラル火山の時にもほしかった機能だ。


 これならば朝まで暖房や冷房をつけていても十分にもつだろう。ちなみにもしもバッテリーが切れてしまったとしても、キャンピングカーのエンジンはメインバッテリーの方を使用するので、冷暖房を使用する際に使うサブバッテリーの電力が切れていても問題ない。


 これで残りのポイントは0になってしまうが、明日には1ポイントになるし、あと1~2日はこのオアシスでのんびりと過ごすつもりだから問題ないだろう。やはり何かあった時に備えて1~2ポイントは確保しておきたいからな。


「さて、アイスクリームはちょっとアレだけれど、今日は別のデザートがあるよ」


「先ほどフー太様が採ってきてくれた果物ですね」


「そういうこと」


「ホホー!」


 実は泉でみんなが遊んでいる間に泉の近くの木の上に何かの実があるのを発見した。俺では背が届かなかったが、そこは空を飛べるフー太とカルラがいるので、頼んで採ってきてもらった。


「街の人もこのオアシスで手に入れた果物が有名だって言ってたから期待できそうだよ。もしもおいしかったら、明日はこのオアシスの森も探してみよう」


「うん!」


「そいつはいいな!」


 もちろんこのオアシスの生態系に影響が出ない範囲内にするつもりだ。今回もフー太に取ってもらった実はひとつだけにしておいた。異世界だからこそ、そういった気遣いは大事である。


「とりあえず冷蔵庫で冷やしてみたけれど、どんな味がするんだろうな?」


 三十センチメートルくらいの大きさで、表面は少し硬い茶色い皮がある。パイナップルに近い感じもするけれど、この実はまん丸だ。


 包丁で半分に割ってみると、中は赤みが強めなオレンジ色の果肉をしている。泉から近いこともあってか、十分にみずみずしいし、硬すぎることもなく、柔らかすぎることもない。


「真ん中にあるのが種か。明日あの辺りに撒いてみるかな」


 瑞々しい果肉の真ん中には黒い種のようなものがある。明日あの樹があった場所付近に撒いておこう。

 

 市場の人から聞いた話ではそのまま食べることができるらしいので、とりあえず皮を剥いて5等分にする。一応コレットちゃんに匂いを確かめてもらい、肌に付けて腫れたりヒリヒリしないことも確認した。


「さて、味はと……」


 いよいよ実食タイムだ。

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