第141話 空間拡張


「外からの見た目は変わらないみたいですね」


「そうみたいだ。ということは車体の重さなんかも変わらないのかな」


 キャンピングカーの透明化を解除して、キャンピングカーの外に出てみると、そこにはいつもと変わらないキャンピングカーがあった。


 しかし一歩キャンピングカーの中に入ると、そこには今までよりも広い空間が広がっている。


 ……なんだか感覚的に少し違和感があるな。生活空間が広がってくれたのは非常にありがたいことだが、今までと同じキャンピングカーの中に一歩入るといつもより広い空間でちょっとだけ変な感じだ。すぐに慣れるとは思うが。


「もうひとつの特殊機能の透明化と同時に発動することもできるみたいだな。それにしてもどういう仕組みなのだろう?」


 キャンピングカーの内部だけが広がっているのはまるで魔法みたいだ。まあ、透明化も十分ファンタジーな機能だった。


 もしかすると特殊機能はキャンピングカー自体にこういった魔法みたいな機能が追加されるのかもしれない。


「すっごく快適になったね!」


「そうだね。間違いなく今までよりも身体を伸ばせそうだよ」


 コレットちゃんの言う通り、これまでよりも快適に生活できることは間違いない。


 天井も少し高くなっているから、それだけで気持ち的にも広々とした気分になる。キャンピングカーが便利とはいえ、カルラも増えて少し手狭になってきたと感じていたところだったからありがたい。


「あとは新しく増えた機能なんかを確認してみたいところだ。少し早いけれど、今日はちょうどいい場所を見つけて野営しよう」


「おう、わかったぜ!」


「ホー!」


 少し頑張れば街まで着きそうだけれど、いろいろと確認したいこともあるし、今日はここまでにしておこう。




「ふう~シャワー室が広くなったことが今回のレベルアップでは一番大きかったかもしれないな」


「ホ~♪」


 晩ご飯を食べ終わり、交代でシャワーを浴びる。順番はいつもバラバラだけれど、フー太は自分でシャンプーや石鹸を使って身体を洗えないから俺とフー太はいつも一緒に入っている。


 いつもはフー太と2人で入っていて狭かったシャワー室がとても広く感じるな。快適なキャンピングカーの唯一の不自由さが解消された気分だ。


「シャンプーや石鹸も遠慮なく使えることだし、だいぶ快適になってきたよ」


「ホー!」


 泡立てた石鹸でモコモコになっているフー太も実に可愛らしいことだ。


 ポイントで取った拡張機能によって毎日シャンプーとリンスと石鹸がいくらでも使えるのも実に素晴らしい。キャンピングカーでこれらを使う時はいつも節約して使っちゃうからな。


「シャワーから上がったよ。次の人はどうぞ」


「うん!」


 次はコレットちゃんの番だ。広くなったとはいえ相変わらずシャワー室の場所に更衣室はないから、他の人は運転席か外へ出るようにしている。


「シゲト、こっちのパン生地の方はできたぜ」


「おっ、ありがとう。あとはアイスクリームとバターか」


「バターの方はこちらでやっておきますよ」


「任せるよ、ジーナ」


 誰かがシャワーを浴びている間は次の日食べるパン生地をこねたり、アイスクリームやバターなんかを作っていることが多い。


 冷凍庫も大きくなっていたから、一度に作れるアイスクリームの量も増えた。今のうちに作りだめしておくとしよう。




「おお~ベッドが広くなっているのは快適だな」


「ホホ~♪」


 シャワー室の次に恩恵を受けたのは間違いなくこのベッドだな。バスコンであるこのキャンピングカーといえど、普通のベッドよりも小さいサイズだったのだが、今ではセミダブルベッドくらいの大きさになっている。


 俺一人なら少し大きいくらいだったけれど、大きくなったフー太と一緒に寝ると少し狭いくらいだったからありがたい。


「カルラお姉ちゃん、本当にそっちでいいの?」


「後ろの寝室もかなり広くなったので、3人で寝ても大丈夫だと思いますよ」


「いや、俺はこっちがいいぜ。大勢で寝るのはちょっと苦手だからな」


 キャンピングカーの一番後ろの寝室は元々3人で寝られるくらいの広さだが、少し窮屈になってしまうのでカルラは隣の組み立て式ベッドに寝ていた。今回の空間拡張機能のおかげでだいぶ余裕ができたが、カルラはそっちの方が良いみたいだ。


 隣に人がいると寝られなく人もいるらしいし、組み立て式ベッドもかなり寝心地が良いようにできている。カルラがそう言うのならそれでいいだろう。


 透明化に続けて空間拡張というすばらしい特殊機能も追加された。今後はキャンピングカーでの旅がより快適になることだろう。

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