第140話 レベル3


 翌日。


 今日の道中もとても順調で、大きな問題もなくトレドーレの街まであと少しというところまでやってきた。


『レベルが3に上がりました』


 そして前回の時と同様、運転席隣にあるカーナビから音声が車内に鳴り響いた。


「街へ着く前にレベルアップの方が早かったみたいだ。少し道から逸れて止まるよ」


「はい、了解です」


「ホー!」


 みんなに伝えてからキャンピングカーを止める。


「それじゃあこのまま少し待っていてね。透明化があるから大丈夫だと思うけれど、鼻の利く魔物が来ることもあるから、周囲の警戒をよろしくね」


「うん!」


「おう、任せておけ!」


 この辺りは一面草原になっているから周囲の見通しはいいが、透明化のおかげでキャンピングカーが目立つことはないだろう。


 とはいえ、以前の夜に魔物が現れた時と同じように鼻の利くオオカミみたいな魔物が近寄ってくるかもしれない。その場合はみんなに任せるとしよう。


「どれどれ……」


 カーナビのパネルに出てきた『次へ』をタッチすると画面が切り替わる。


『次のレベルアップまでの距離が三千キロメートルに設定されました』


 どうやら次のレベル4へ上がるための条件は三千キロメートルらしい。最初が千キロで次が二千キロだったから、その次が三千キロになるのか四千キロになるのか気になるところだった。


 今回が三千キロということはひとつのレベルアップごとに千キロ増えていくのだろう。元の世界の整備された道だったらともかく、この異世界の荒れた道を走るのはかなり大変なんだよ。走る距離が倍々で増えていかなくて本当に良かった。


『新しい拡張機能が追加されました』


 これも前回のレベルアップと同じだな。今のところ必須な機能は取ってきたから、新しい拡張機能の選択肢が欲しかったところだ。


 とはいえ最近は一気にポイントを使ったから今のポイントは3ポイントしかない。レベルが上がっても2日に1ポイント増える仕様なのは変わらなかった。


『新しい特殊機能【空間拡張】が追加されました』


「おおっ!」


 やはり前回のレベルアップと同様に特殊機能が追加された。予想通りレベルが上がると特別な特殊機能がひとつ追加されるみたいだな。


 しかし、空間拡張か。相変わらず説明をする気は一切ないようで、『次へ』をタッチするといつものナビゲーション画面にまで戻ってしまった。


「シゲト、大丈夫ですか?」


「ホー?」


「ああ、大丈夫。やっぱりまた新しい機能が追加されたみたいだ」


 カーナビの文字は日本語で書かれているため、ジーナやフー太は何が追加されたのかはわかっていない。


「なあ、何が追加されたんだ?」


「シゲトお兄ちゃん、どうなったの?」


 カルラとコレットちゃんもどんな機能が追加されたのか気になっているようだ。


 相変わらず説明はないが、前回と同じだとすると……


「おっ、多分これだな。それじゃあ試してみるよ」


 前回はカーナビの★マークの横に新しく点線で描かれた〇のマークが追加されて透明化ができるようになったが、今回はそのさらに横に■マークが現れた。おそらくはこれが新しい空間拡張という特殊機能の切り替えスイッチなのだろう。


 みんなに周囲を確認してもらいつつ、■マークをタッチする。


「うおっ、何だこりゃ!?」


「うわあ~すっごいね!」


 後ろの座席からカルラとコレットちゃんの声がした。


 んっ? 特に変わったことはなさそうだけれど――


「うおっ!?」


「こ、これは!」


「ホホー!?」


 前の運転席には特に変わりは見られなかったが、カルラとコレットちゃんがいる後ろ座席の方を見た瞬間に驚きの声を上げてしまった。


「……キャンピングカーが広がっている?」


 そう、運転席は依然と変わらなかったが、その後ろでは大きな変化があった。


 なんとキャンピングカー自体の大きさが広がっていたのだ。


「すごいな。狭かった通路なんかもかなり広がっているぞ」


「こっちのベッドまで広くなっているよ!」


「おっ、俺がいつも寝ているベッドまで広くなっているぜ!」


 キャンピングカーの内装のひとつひとつが大きくなって広がっている。廊下やテーブルやイス、ベッドに収納なんかもすべて広がっていた。


「なるほど、だから空間拡張なのか。しかも冷蔵庫やオーブンレンジまで大きくなっているとは……」


 さらにありがたいことにベッドやイスだけでなく、家電まで大きくなっていたのには驚いた。


「シャワー室やトイレまで大きくなっていますよ!」


「本当か! それはありがたいな!」


「ホー!」


 みんなで広くなったキャンピングカーの中を確認してみる。だいたい以前の1.5倍くらいに広がっているらしい。


 特にシャワーやトイレなんかはキャンピングカーの仕様上少し狭いと思っていただけにとてもありがたい。フー太と一緒にシャワーを浴びる時はもっと広ければいいと常々思っていた。


「さすがに調味料やお酒の入れ物、皿やキャンプギアまで大きくなっている訳じゃないみたいだ。キャンピングカー内の空間と元々キャンピングカーに設置されていた設備に限るようだな」


 キャンピングカーの中の物がすべて大きくなったというわけではなく、室内と設備に限るらしい。


「……待てよ。これって外から見るとどうなっているんだ?」

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