第139話 3種類のアイス


「デザートはアイスクリームだよ。今回はちょっと違う味を作ってみたから、感想を教えてくれ」


「うわあ~いろんな色をしていて綺麗だね!」


「なるほど、昨日みんなで準備をしていたのはこれだったのですね!」


「ホホ~!」


 食後のデザートはアイスクリームだ。ただし、いつもの真っ白なアイスクリームだけでなく、赤色と紫色がまばらの3種類のアイスクリームが並んでいる。


 いつもの白い方はこの前作ってあったものをアイテムボックスから出してきた。


「そういうこと。みんなで刻んだ果物のペーストをアイスクリームに加えてみたんだ」


 昨日の夜はみんなでパンの生地をこねただけでなく、ノクターラの街で購入してきた果物を切ってペースト状にしてもらった。それをいつものホワイトミルブルの乳を冷凍庫で固めながら加えたら果物のアイスクリームになる。


 ちゃんと固まるか不安だったけれど、うまくできたようだな。果物の量をちょっと少なめにしておいたのが良かったのかもしれない。


「なあ、早く食おうぜ!」


「ああ。だけど量はほどほどにな。前にも言ったがアイスクリームはいっぱい食べるとお腹を壊してしまうし、太りやすいんだ。それに今はまだ朝でこれから移動するからな」


 今回は果物を入れているから砂糖は少なめにしたとはいえ、あまり食べ過ぎるのも良くない。


「わっ、わかっているぜ」


 特にカルラはアイスクリームを気に入っているからな。一応言っておかないといけない。


「本当に綺麗だね。シゲトお兄ちゃん、早く食べようよ!」


「本当に食べるのが勿体ないくらい綺麗です」


「ホー!」


 果物のペーストはホワイトミルブルの乳が少し固まってきてから加えてまぜたので、完全には混ざっておらずマーブル状になっている。こちらの方が果物が多い部分とそうでない部分の味を楽しめるからな。


 おかげで見た目もかなり綺麗に見える。ひとつの器に赤色と紫色が混じったアイスクリームを盛り付ける。さて、肝心の味はどうだろうか?


「おっ、ちゃんといつもの真っ白なアイスクリームとは味が違うな!」


「ええ。こちらの赤いエターベリーのアイスクリームは少し酸味が強くてホワイトミルブルのアイスクリームの濃厚な甘さとお互いを引き立て合っていますね。こちらの紫色のルナグレープは甘みが強いので、ミルクの甘さと果物の甘さがよく合っています」


「うわあ~どっちのアイスクリームもとってもおいしいよ!」


「ホ~ホホ~♪」


 みんなの言う通り、今まで作った真っ白なアイスクリームと一味違って悪くないな。


 どちらも味に特徴があっていい感じだ。あえて言うなら、酸味のあるエターベリーの方はもう少し砂糖を多めにしてアイスクリーム自体を甘くして、ルナグレープの方はもう少し砂糖が少なめの方がよりおいしいかもしれない。


 どちらも何度か試してみる必要はあるけれど、初めてにしては十分だろう。


「いつもの白いアイスクリームも作って3段アイスにしてもいいな。今回の分はアイテムボックスに入れておいて、いつものアイスクリームも作るとしよう。とりあえず今回はうまくいったし、別の街へ行った時にアイスクリームと合いそうな果物があったらまた購入してみようか」


 今回は冷凍庫の都合上2種類しか同時に作れなかったから、いつもの白いアイスクリームはない。こっちの2つのアイスはアイテムボックスに入れておいて、また新しく作るとしよう。


 その際は元の世界であった3段重ねのアイスクリームでも作ってみるか。あのコーンはワッフルみたいなものだったはずだ。小麦粉と卵と砂糖を使って作れるか試してみてもいいかもしれない。


「いいな! 3種類のアイスクリームが楽しめるなんて最高だぜ!」


「うん、本当においしそうだね!」


「別の果物も試してみたいですね。別の街まで移動したら探してみましょう!」


「ホホホー!」


 どうやらみんなも賛成のようだ。これまでにお菓子らしいお菓子なんてほとんど食べたことがなかったのかもしれない。


 これからは新しい街や村を訪れたら、果物もいろいろと見ることにしよう。




「よし、今日はここまでにしておこう」


 朝こそのんびりと優雅な朝食を楽しんだけれど、今日はキャンピングカーでしっかりと進んできた。


 今日はこの草原で野営をする。


「いよいよ次のレベルアップまであと300キロメートルくらいか。さすがに2000キロメートルはだいぶ長かったぞ」


「明日か明後日といったところですね。今度はどのような変化が起きるのか楽しみです」


「ホー!」


 コレットちゃんと一緒に旅をすることになり、フェビリー村を出たところでこのキャンピングカーのレベルが2に上がった。


 次のレベル3へのレベルアップは2000キロメートルと、いくらキャンピングカーがあるとはいえ長い道のりだった。


「こいつが消えたように見えるのもそのレベルアップってやつのおかげなんだろ?」


「そうだな。他にも新しく拡張機能が増えるから楽しみだよ」


 道中カルラにもこのキャンピングカーの仕組みについては話してある。レベル2に上がった時は特殊機能の透明化が追加されて、これまでにはなかった拡張機能も増えた。


 おそらく明日か明後日にはキャンピングカーのレベルが上がり、目的地であるトレドーレの街にも到着する。何が起こるか楽しみだ。

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