第138話 豪華な朝食
「ちぇっ、今日もアイスクリームはなしかよ……」
「固まるまでもう少し時間がかかるからね。明日は結構移動する予定だし、今日は早めに寝ておこう」
ローストドラゴンをたっぷりと楽しんだわけだが、残念ながらカルラの作ってくれているアイスクリームはまだ固まっていなかった。材料であるホワイトミルブルの乳をたくさん購入しておいたから、一度でいっぱい作ろうとしたのが仇となってしまったな。
昨日も街の宿に泊っていたからアイスクリームは食べられなかったけれど、明日にはできるからほんの少しの我慢だ。
「それに今回はいつものアイスクリームだけじゃないからな。楽しみは明日にとっておくとしよう」
「楽しみだね!」
「ええ、期待しております!」
「ホホ~♪」
今はキャンピングカーの中で食器などを片付けたりしながら、あるものを準備している。これまでに何度か作ったアイスクリームはホワイトミルブルの乳の味だけだったが、ノクターラの街でいろいろと材料を購入してきたので、新たに楽しませてもらうとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ふあ~あ」
「ホー」
「おはよう、フー太」
「ホホ―!」
翌日目が覚めると、今日もベッドの横には大きくなったフー太に包まれながら目が覚めた。相変わらず大きくなったフー太の触り心地は最高だ。
以前と同じように組み立て式ベッドの上にはカルラが、一番後ろの寝室スペースにはジーナとコレットちゃんが寝ている。みんなよりも少し早く目が覚めてしまったようだ。
ちょうど今日はいろいろと作るものがあることだし、早めにいろいろと準備を進めるとしよう。
「はあ~とても良い香りですね!」
「うわあ~とってもおいしそう!」
「焼き立てのパンの香りはいいよね。うん、昨日の夜にパン生地をこねて発酵させておくのがちょうどいいみたいだな」
昨日の夜は日が暮れたあともキャンピングカーの中で今日のためにみんなで天然酵母を加えたパン生地をこねて準備をしておいた。
今日の朝に膨らんだパン生地をオーブンレンジに入れて焼いてできた焼き立てのパンが食卓に並んでいる。
みんなはパンを焼いている時に起きてきたから、この焼き立てのパンの香りで目が覚めたのかもしれない。本当に焼き立てのパンはどうしてこんなにおいしそうな香りをしているんだろうな?
「おっ、柔らかくて真っ白でうまそうだぜ!」
「ホ~♪」
「前回いろいろと試してみた割合でちょうど良さそうだね。うん、四角いパンもいい感じだ」
前に複数の天然酵母を作ってみて、量や焼く時間をいろいろと調整して試してみた割合でパンを焼いてみたところ、だいぶうまくいったようだ。ふっくらと焼き上がってちょうどいい色合いの丸いパンをカルラを半分に割ると、真っ白でふわふわとした中身が現れ、とても良い香りが辺りに広がった。
そして今回はパン型に入れた四角いパンも焼いてみた。といっても、そこまで難しいわけではない。
鍛冶屋でバリンさんに武器の調整や防具の作成をお願いしたついでに購入してきた金属製のパン型に丸くちぎったパンの生地を2つ入れておく。パン生地が発酵して膨らんでいくと、パン型の中でくっついて2つの山の形をしたパンになる。それを金属製のパン型ごとオーブンレンジで焼くと上は少しだけ丸い長方形のパンになった。
元の世界で売っていた食パンなんかは蓋の付いたパン型に入れて膨らむことを考慮しつつ、少しきつめにパン生地を入れることによって四角い形に焼き上がるらしい。どれくらい膨らむかを考えて、ちょうどいい生地の量にしなければならないため、今回は難易度の低い山型パンにしてみた。
「うわっ、とってもおいしい!」
「これは素晴らしいです! 焼き立てのパンとバターの香りが最高ですね!」
「うん、どっちのパンも十分いけるな。少しバターを塗っただけでもうまい」
丸型のパンも四角い山型のパンもいい感じだ。ホワイトミルブルの乳を使った手作りのバターは焼き立てのパンと最高に合うな。
「こっちとそっちのジャムも甘くてうめえぞ!」
「ホホ~!」
「ふむ、新しい果物を使って作ってみたジャムもなかなかいけるな」
そしてノクターラの街で購入した果物を使って新しいジャムを作ってみた。以前に作ったジャムはリンゴのような果物で作ったが、今回はイチゴみたいな赤色の果物とブドウっぽい果物でジャムを作った。
赤いジャムのほうは少し酸味もあって、煮詰めて柔らかくなった果肉の味がたまらないな。紫色のジャムの方は爽やかな風味と香りが豊かで、甘い砂糖の味とよく合っている。
この異世界では高価な砂糖がキャンピングカーの機能で補給できるのは本当にありがたい。
焼き立てのパンに作りたての甘いジャムにホワイトミルブルの乳。今更ながらとても贅沢な朝食になってしまった。頑張っていろいろと作った甲斐があるというものだな。
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