第136話 防具と盾
「まずは金属の箱じゃな。液体がこぼれることはないじゃろう。今は水を入れておるぞ」
「ありがとうございます」
バリンさんが出してくれた予備の燃料タンクは50センチメートルほどの無骨な金属製の箱だった。要望通り持ち手と燃料を入れるコルク製の蓋が付いている。
タンクを横に揺らしてもそこから中に入った水がこぼれることはなかった。
「はい、こちらで大丈夫です」
「次はこっちの大盾は店で販売しているもので金貨15枚じゃな」
「おおっ、これは丈夫そうですね」
続いてバリンさんが店の奥から持ってきたものは金属製の大きな盾だった。
俺も戦闘にはほとんど役に立てないが、何かあった時にはみんなを守れる盾くらいにはなるつもりだ。
「やっぱり重いですね……」
「これくらいの大きさならばこれくらいの重さはするぞ」
この盾は俺が想像していたよりもだいぶ重かった。
盾を持ちながら剣を振れる冒険者ってのは本当にすごいな。俺だと両手で持っても素早く動けなそうだ。
「大きな盾ですがこの盾を持ちながらですと私も難しいですね」
「………………」
そう言いながらもこの盾を片手で持っているジーナはさすがだ。
「うんしょ……僕には無理かな」
「俺も両手なら持てるけれど、これを持ちながら戦闘は無理だぜ」
「ホー……」
他のみんなも試してみるが、結構重いみたいだな。フー太も頑張って持ち上げようとしていたけれど、さすがに無理だった。大きくなればもしかしたらいけるかもしれないけれどな。
俺もさすがにこんなに大きな盾を持って移動するのは厳しいから、普段はアイテムボックスに入れておく。この盾を使うことがないよう祈ることにしよう。
「さて、次は防具の方じゃな。問題なく動けるか確認してくれ」
「問題ないです。すごいですね、軽くてほとんど重さを感じませんよ」
「僕も大丈夫。手や肩を普通に動かせるよ」
ジーナとコレットちゃんの防具も問題ないみたいだ。レッドドラゴンの鱗はそれほど重たくないにもかかわらずかなりの強度を誇るので、ジーナとコレットちゃんの胸当てを作ってもらった。
材料の鱗はまだたくさんあるのだが、籠手や膝当てなど作り過ぎても動きにくくなるので、胸当てだけにしている。
素材が素材だけに普段は服の上に着る形ではなく、服の中へ着込む形にしてもらった。見る人が見ればわかるらしいから、面倒ごとになるのは嫌だからな。
「ふむ、問題ないようじゃな。素材が素材だけに調整をするならうちの店に来るといい」
「はい、何かお願いをする時はこちらに持ってきます。その際はまたよろしくお願いします」
キャンピングカーがあればすぐこの街に戻ってくることができる。アステラル村の温泉は間違いなくまた立ち寄るだろうし、鍛冶をお願いする時にはこのノクターラの街へ寄ることにしよう。
「うむ。その際は値引きするからこれらの酒をぜひ頼むぞ!」
「……はい、わかりました」
バリンさんはよっぽどウイスキーと日本酒を気に入ってくれたようだな。今回の依頼はジーナのロングソードの整備費と店で販売していた大盾の分は支払ったが、予備の燃料タンクと防具に使ったレッドドラゴンの鱗以外の材料費くらいしか払っていない。
たった一日でこんなに立派な物を作ってくれたのにそれだけで本当に良いのかなとも思う。材料を持ち込んだとはいえ、実際の価格だと金貨20枚くらいはしたんじゃないか?
まあウイスキーや日本酒はこちらの世界では手に入らない物だし、酒好きの貴族などに販売すればそれくらいで売れる可能性もある。さすがに面倒ごとになる気もするから売るつもりはないがな。
「よし、それじゃあ次の目的地へ向けて出発しよう」
鍛冶屋での買い物を終え時刻は夕方になってしまったが、今日はノクターラの街を出て野営をすることになった。
なんだかんだでレッドドラゴンの素材を売って得たお金が個人の分を除いてほとんど使い切ってしまったな。バリンさんがお酒を渡したお礼に割引してくれなかったら、また冒険者ギルドに素材を持っていかなければならないところだった。
「次の目的地はトレドーレの街だ」
「ホホ―!」
ノクターラの街で情報を集め、みんなで相談をして次の目的地を決めた。
トレドーレの街はここから南東にある街だ。ここから南の方にあるハーキムの村へ戻ることも考えつつ、面白そうな観光地があるその街に決定した。
「一面が真っ黒な
「砂漠というのは一面が砂になっている場所ですよね。そもそも普通の砂漠すら見たことがありません」
「僕も見たことがないよ」
みんなは砂漠を見たことがないみたいだ。もちろん俺も見たことがない。
元の世界にある砂漠とかも一度見てみたかったものだ。一度でいいからエジプトへ行って、ピラミッドを背景にしてラクダに乗って砂漠を歩いてみたかったものだ。
それにしても黒い砂漠とはいったいどういう仕組みなのだろうな?
確かアメリカにはホワイトサンズという白い砂漠はあったが、黒い砂漠というものは聞いたことがない。アステラル火山の不思議な火口の色もそうだったが、やはり異世界には不思議な場所がたくさんあるようだ。
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