【番外編】キャンピングカーとアウトドアショップ①

※前回の番外編の続きとなります。同じように日本から異世界へやってきてキャンプ場を開いた場所へ訪れたあとのお話です。

アウトドアショップの作品に投稿した話と同じです。

https://kakuyomu.jp/works/16817139558303562595/episodes/16818093086961616195




「すごく快適な場所でしたね! ご飯はとてもおいしかったですし、すごく不思議な道具がたくさんありました!」


「あのバドミントンって遊びはとっても面白かったよ! それにあそこでは怪我をしないって不思議だよね」


「ホホーホー!」


「本当に不思議な場所だったよ。俺も久しぶりに同郷の人たちと出会うことができて最高だった。お土産にいろんな物をいただいちゃったな。またあのキャンプ場に行ってみようね」


 広々とした大自然の中を走る一台の巨大なキャンピングカー。


 この異世界に不釣り合いな大きな車に乗っているのは人族のシゲト、エルフのジーナ、黒狼族のコレット、森フクロウのフー太というこちらの異世界の住人でもすれ違ったら振り返るくらい、これまた変わったご一行である。


 彼らはつい先日、イーストビレッジキャンプ場という場所を訪れた。そこにはシゲトと同じ元の世界の住人がおり、そこで数日を過ごしてきた。


「シゲト、次はどこへ行くのですか?」


「それなんだけれど、ここから少し先にアレフレアって街があるんだ。そこは冒険者の始まりの街って言われていて、駆け出し冒険者が最初に集まる場所らしいんだよ。ちょっとそこを目指してみてもいいかな?」


「シゲトは冒険者になるのですか! なるほど、それもいいかもしれませんね!」


「えっ、シゲトお兄ちゃんは冒険者になるの? 僕も冒険者になれるのかなあ……」


「ホホー?」


「違う違う! 確かに冒険者になると、素材の買取は高くなるかもしれないけれど、俺には無理だよ!」


 キャンピングカーの運転をしつつ、シゲトが首を大きく横に振る。ジーナはだいぶ乗り気だったようだが、どうやらシゲトは冒険者になりたいというわけではないようだ。


「キャンプ場でユウスケさんに聞いたんだけれど、その街のとあるお店の人はもしかしたら俺たちの同郷かもしれなくてさ」


 ユウスケがキャンプ場に泊まってくれた冒険者のお客さんから聞いた話によると、最近その街にできたアウトドアショップというお店は駆け出し冒険者の役に立つ商品を安く売っていると評判らしい。


 そもそもアウトドアショップというお店の名前の時点で元の世界の住人である可能性が非常に高いと思いつつ、キャンプ場を営業しており、遠くまでの移動手段のないユウスケにはアレフレアの街まで行くことはできなかったが、そこにキャンピングカーを持つシゲトが現れたというわけである。


「なるほど、もちろん大丈夫ですよ」


「うん、僕も楽しみだよ!」


「ホホー♪」


「ありがとうね。それじゃあ、次の目的地はアレフレアの街で決定!」






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ここがアレフレアの街か。確かに冒険者の格好をした人が多いかも」


 数日間キャンピングカーで走り、昼過ぎにアレフレアの街へ到着した。


「ホー!」


「うわあ〜みんな格好いいね!」


「ええ。それに若い子が多いですね」


 シゲト一行がアレフレアの街に入ると、そこにはまだ冒険者に成り立てと思われる若者が多くいた。


 この辺りではあまり見かけない森フクロウのフー太がシゲトの肩に留まっているのを見て、多少注目を集めている。


「あの、すみません。アウトドアショップというお店を探しているのですが、場所を知っていたりしませんか?」


 シゲトが駆け出し冒険者と思われる3人組の男女に道を尋ねる。


「ああ、アウトドアショップならそっちの方向にあるぜ」


「ちょうど俺たちもその店に行くところだから、案内しますよ」


「ええ。一緒に行きましょう」


「いいんですか? ありがとうございます」


 どうやらこの3人組もちょうどその店へ行くらしく、案内役を買って出てくれた。


「シゲトと申します」


「ジーナです、よろしくお願いします」


「ロ、ロイヤっす。こちらこそよろしく!」


「ファルです。皆さんの方が年上なので、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ」


 エルフで美人なジーナに声をかけられて少しだけ顔を赤くするロイヤ。たまにポンコツになるジーナではあるが、外見だけならとても綺麗な女性なので、ロイヤの気持ちも分からなくもない。


「コ、コレットです! よろしくお願いします!」


「きゃあああ、とっても可愛い! コレットちゃん、ニコレよ、よろしくね!」


「う、うん。……ニコレお姉ちゃんは僕のことを気味悪く思わないんだね?」


「なんでこんなに可愛らしい獣人の女の子を気味悪く思うのよ! むしろぎゅっと抱きしめてモフモフしたいわ! ハア……ハア……」


 ニコレが息を荒くしてコレットの方へ進もうとしたところで、ロイヤとファルがニコレの両腕を掴む。


「おい馬鹿やめろ!」


「す、すみません、こいつは可愛い女の子を見るといつもこうで……」


「は、はあ……」


 ニコレに若干引き気味のシゲトだが、どうやらこの辺りでは別の場所で不吉の象徴と思われている黒狼族に対して悪い感情はないようで少しほっとしている。


「ホー」


「そ、そういえばこのフクロウは可愛らしいですね。魔物なんですか?」


「あっ、確かに俺も気になってた」


「そうね、その子もすごく可愛いわ!」


 ファルがシゲトの肩に留まっているフー太に話題を逸らす。話を逸らすためでもあるが、どうやら3人も気になっていたらしい。


「ああ。森で怪我をしているところを治療してあげたら懐かれたんだ。そのままみんなでいろんな場所を旅しているんだよ」


「へえ〜こんなに人懐っこい魔物もいるんだな」


「俺も初めて見る。人に害を与えない魔物もいるのか」


「はあ〜こっちの子も可愛らしいわね!」


「ホー?」


 3人の言葉を理解できていないフー太は首を傾げるが、その様子もとても可愛らしい。


 そんな話をしているうちに目的の店の前に到着し、シゲトたちは3人にお礼を伝えた。ニコレはまだコレットと一緒にいたかったようだが、ロイヤとファルに強制的に連れていかれた。

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