第133話 新しい機能
「シゲト、剣の整備が終わりました」
「おっ、了解」
どうやらジーナのロングソードの整備が終わったようだ。日々使っている武器や防具のメンテナンスは大事だからな。俺も自動修復機能があるとはいえ、キャンピングカーの整備や洗車を怠らないようにするとしよう。
「日々のメンテナンスは今まで通りで大丈夫じゃな。たまにどこかの鍛冶屋に持ち込めばよいぞ」
「ありがとうございました、バリン殿」
ジーナが剣をメンテナンスしてくれたドワーフさんにお礼を言う。あの人の名前はバリンというらしい。
「お待たせしてすみませんでした」
「いや、俺たちも店内のいろいろな武器や防具を見せてもらっていたから大丈夫だよ」
ジーナとバリンさんが剣の整備をしている間、俺たちはこの鍛冶屋の中でいろいろな武器や防具を見せてもらっていた。実際にああいった武器を持って戦うことはないと思うが、やはり武器や防具は男のロマンなのである。
そして2人が剣のメンテナンスをしている様子を見たり、受付の人に聞いたりしていたが、バリンさんは腕の良い職人さんのようだ。
「バリンさん、実はひとつ交渉したいことがあるのですが」
「んっ、なんじゃ?」
「実はこの子の胸当てをオーダーメイドで作ってほしいんです。普段動く時に邪魔にならないよう服の下に着込めて、軽いけれど丈夫なものだとありがたいです」
コレットちゃんは不要と言っていたが、万一のために少なくとも服の中に着込む胸当てくらいはあった方が良い。とはいえこの鍛冶屋ではあまり小さな女の子が身に付けるような胸当ては売っていなかった。コレットちゃんには大きすぎたり、小さいけれど重かったりとちょうどいい物がない。
受付の人に聞いたら、そういう場合はオーダーメイドで注文を受けているそうで、値段などを含めて直接職人さんと交渉することも可能らしいので、腕に問題がなさそうなバリンさんに直接交渉をしようとしている。
カルラはいらないと言っていたけれど、ジーナや俺も同様に服の中に着込む簡易な防具くらいは万一のために用意しておきたい。
「ふむ、儂は直近で特に大きな仕事は入ってないから、物によっては引き受けてもええぞ」
「よかった。実は素材についてはこれを使ってもらいたいのですが」
「なんじゃ、素材もすでに揃っているのなら、すぐに加工できるぞ。どれどれ……ほう、この素材はなかなかのものじゃな!」
周囲を確認して、他の人がこちらを見ていないことを確認しながら、持ち物の中から例のレッドドラゴンの鱗を見せる。鍛冶屋では珍しい素材の持ち込みも多く、当然誰がどんな素材を持ち込んだのかは他の者には秘密である。
この鍛冶屋ではレッドドラゴンの鱗よりも珍しい素材で作られた武器や防具もあったし、その辺りは職人さんの口の堅さを信じるとしよう。
「レッドドラゴンの鱗になります。数はあるので、とりあえずこれくらいでお願いしますね」
子供だったとはいえ、鱗は結構な数を手に入れることができたからな。俺たちの防具分を作るくらいの数は余裕である。ちなみにカルラからもらった龍人族の鱗もレッドドラゴンと同じくらいの硬度があったが、価値は龍人族の生え変った鱗の方が上らしい。
カルラが売ったり人の手に渡るのがそれほど乗り気ではなさそうなので、今はキャンピングカーのアイテムボックスに眠っている。
「レッドドラゴンの鱗がこんなにか。冒険者には見えないが、一体お主らは……いや、別にそれはどうでもよいことか。何やらいろいろと事情もありそうじゃしな」
そう言いながらバリンさんは俺たちを見る。外套をかぶった女の子に森フクロウのフー太がいる時点でいろいろと事情があることは察してくれているだろう。
「もちろん犯罪で手に入れた素材ではないのでご安心を。あと、こちらは俺の故郷の特別製の
「ほう、特別製の酒じゃと!」
「………………」
むしろレッドドラゴンの鱗よりも反応しているのだが……
受付の人に聞いた話だが、この世界のドワーフという種族はお酒の好きな人が多いらしい。バリンさんもお酒が大好きで、お酒を差し入れすると喜ぶときいたので、ジーナの剣を整備してもらっている間にカルラと一緒に店を出て、人気のない場所へ行き透明化したキャンピングカーを出してこのお酒を持ってきた。
そう、昨日ついに俺の念願だった『酒補給機能』を拡張したのだ! マイセンの街やアステラル村ではまったくポイントを使用していなかったので、合計5ポイントが貯まっていた。
酒補給機能が1ポイント、トイレットペーパー補給機能が1ポイント、シャワー用品補給機能が2ポイントの合計4ポイントを使用して、残りが1ポイントだ。カルラが旅に同行することとなり、キャンピングカー内の様々な物の消費がいろいろと増えることになるからな。
トイレットペーパーやシャンプー、リンス、石鹸などの必要な物が毎日補充されることとなる。これで最低限必要だった補給機能系は大体確保することができたぞ。
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