第132話 鍛冶屋
市場で各自の好きな物の買い物を終え、大きな荷物を持ったままだと少し面倒なので、食材を購入する前に鍛冶屋へとやってきた。
市場で情報集をしてやってきたこの鍛冶屋は街の中ではそこそこ大きな鍛冶屋のようだ。街一番の鍛冶屋はオーダーメイドなどの武器や防具を主に扱っており、一見さんはお断りみたいな感じらしい。
ジーナのロングソードの手入れとコレットちゃん用の武器や防具、そして燃料タンクが作ってもらえそうな鍛冶屋を探した結果、この鍛冶屋となった。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
鍛冶屋へ入ると、人族の女性が出迎えてくれた。異世界の鍛冶屋だとドワーフのイメージが強かったのだが、受付はそうでもないらしい。とはいえ、鍛冶屋の奥の方にはちらほらと背が低くて髭を生やしたドワーフの姿が見えた。
受付のお姉さんも大したもので、俺たちの姿を見てもあまり動揺した様子はなかった。もしかすると、俺たちよりもいろんな冒険者のお客さんが来るのかもしれない。
「武器の手入れをお願いしたいのと、これくらいのサイズの金属製の液体がこぼれない機密性のある容器が欲しいのですが」
「承知しました。武器の方はどのような物でしょう?」
「これです。軽く研いではいるのですが、少し調整をお願いしたいです」
もちろんジーナは日々手入れをしているが、それでもたまにはメンテナンスをしないといけない。ハーキム村にいた時は武器の手入れに詳しい人がいたようだ。
「はい、承知しました。金属製の容器とはどういったものでしょうか?」
受付のお姉さんに燃料タンクの概要を伝えた。液体を入れる容器で、気化して気体となっても外に出ないように気密性の高い物でお願いした。普段はアイテムボックスの中に入れておくが、念のためだな。
そして容器の肝心の蓋の部分だが、元の世界のようにスクリュー式のキャップについてはまだこの世界にはなかったので、コルク製の蓋となった。考えてみるとペットボトルや瓶の回すだけで中の水がこぼれないようにする技術はとてもすごいよな。
さすがに一朝一夕でそれは作れないと思ったので、ワインなどを保存するような瓶の蓋であるコルクとなった。ちゃんとしめれば気体もほとんど通さないだろう。
「かしこまりました。ロングソードの手入れは数時間で可能で、容器の方は数日かかると思いますがよろしいでしょうか?」
「え~と、もし特急料金とかで早くできるのなら、それでお願いしたいのですが」
「はい、おそらく可能だと思うのですが、念のため確認してまいりますね」
そう言うとお姉さんは受付を離れた。職人さんとスケジュールの確認をしているのかもしれない。武器をすぐに調整したい冒険者のために優先して調整してもらえるサービスがあるようだ。
みんなには事前に話していたが、可能ならば多少お金をかけても時間を短縮してもらいたい。この付近になにか観光できる場所があればいいのだが、残念ながらそういった場所はなかった。
ジーナが護衛をしてくれるのもあと半月を切ったわけだし、今まで以上に1日1日を大切にしていかなければならない。高く売れるレッドドラゴンの素材が手に入ったのはラッキーだったな。
「お待たせしました。大丈夫です、優先して明日の昼くらいまでに仕上がるように調整させていただきます」
「はい、お願いします」
よかった、どうやら明日までに作ってくれるようだ。それなら午後にはこの街を出発できるな。
「それではロングソードの調整はこちらでお願いします」
そのまま別の人に案内されて、鍛冶屋の奥へと案内される。
そこには少し背が低くて髭を伸ばしたドワーフの男性がいた。
「……ふむ、しっかりと手入れが行き届いているようじゃな。これならすぐに終わるぞ」
「本当ですか、よかったです!」
どうやらジーナのロングソードの調整はすぐに終わるようだ。やはり日々のメンテナンスは大事らしい。
さすがに鍛冶とは違って鎚を振るわけではなさそうだ。もしも炉に火を入れて鎚を振るうようなら見ていたかったけれど、今回は刃や柄の調整だけらしい。ジーナが調整をしている間にこの鍛冶屋で販売している武器や防具を見せてもらっている。
すぐといっても、数時間くらいはかかるようだ。
「やっぱり武器や防具は食材とは値段が違うなあ。全部揃えるのはちょっと無理そうか」
予想通りというべきか、その値段はかなりのお値段だった。可能ならみんなの防具なんかも揃えたかったのだが厳しそうだ。レッドドラゴンの素材をすべて売ればいけるが、ここで素材の買い取りなんかは行っていないみたいだ。
「俺は武器と防具は特に必要ねえな。むしろ重いもんを着ていたら邪魔になっちまう」
「なるほど」
カルラは爪を伸ばして戦うことが可能で、防具なんかは不要なようだ。たぶんフー太もそういった物は不要だろう。
「コレットちゃん用の護身用の防具とナイフは欲しいところだな。あとは大きな盾のひとつくらいあってもいいかもしれない」
「僕の分は大丈夫だよ」
「いや、少なくとも胸当てなんかの防具はあった方がいいな」
レッドドラゴンと戦った時もそうだが、非常時にクマ撃退スプレーをコレットちゃんにお願いすることがあるかもしれない。その際に胸当てがあるだけでもだいぶ変わるはずだ。
そして俺も武器は不要だが、コレットちゃんやみんなを守るための大きな盾くらいは欲しいところである。
【お知らせ】
1/22に発売の2巻の書影が公開されました∩^ω^∩
嬉しいことに初めてのコミカライズも決定しましたので、書影だけでもぜひ見ていってくださいm(_ _)m
https://kakuyomu.jp/users/iwasetaku0613/news/16818093091666023619
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