第130話 素材の買取
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ」
「すみません、素材の買い取りをお願いしたいのですが」
「はい、買い取りはあちらになります」
ジーナと一緒に冒険者ギルドへ入り、受付嬢さんに聞いて素材の買い取りをしているカウンターへ並ぶ。
周囲には防具を身につけてゴツイ武器を持った冒険者たちが大勢いる。中には歴戦の戦士というかのように、全身に古傷のある厳つい男性冒険者もいた。格好よくて憧れるという思いもありつつ、やはり俺はあんな風に魔物と戦うのは無理だなと思ってしまう。
うん、俺には冒険者としての名声を手に入れてハーレムなんていうのはいらないから、今のようにのんびりと旅をすることができればそれで満足である。ちなみにどうでもいい情報だが、この国では男女ともに重婚は可能なので、ハーレムを作ることも可能らしい。
「お待たせしました。本日はどのような素材を買い取りましょうか?」
カウンターに並び、俺たちの番がくる。列にはどう見ても冒険者には見えない街の人や商人みたいな人も少しだけいた。道中で会った行商人のヘーリさんのように行商をしながら魔物を倒したり、村や街の人でも魔物を狩ったらここへ持ってきて買い取ってくれるのだろう。
そのおかげもあってか、エルフで綺麗なジーナと一緒にいても、ここにいた冒険者たちからいちゃもんをつけられたりすることはなかった。
マイセンの街の冒険者ギルドと同じように、冒険者登録をしていないと多少安くなってしまうが、冒険者登録をするには試験を受ける必要があるし、定期的に依頼を受けなければならないので登録はなしだ。
「行商の途中で手に入れたこのレッドドラゴンの牙2本と鱗を4枚売りたいのですが、どれくらいの見積になるか教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「レッドドラゴンですか! それは珍しいですね。拝見させていただきます」
「といっても、買い取った冒険者から聞いた話では小さな子供だったらしいですね」
冒険者ギルドのカウンターにいた鑑定をしている女性が驚いた様子だったから、慌てて付け加えた。やはりレッドドラゴンはかなり珍しい魔物のようだ。いっぺんに素材を全部持ってこなくてよかったぞ。
「……本物のレッドドラゴンの牙と鱗のようですね。確かにそれほど大きな個体のものではないようですが、それでも十分な質の良さです。それでは牙1本が金貨16枚、鱗は金貨8枚の合計金貨64枚でいかがでしょうか?」
「……なるほど、わかりました。そちらでお願いします」
少しだけ悩むふりをするが、実際には相場なんてわからない。とはいえ前回ダナマベアの素材を売った時に聞いた話だが、冒険者ギルドは基本的に魔物の買い取り価格は一定らしい。
もちろん素材の状態にもよるらしいが、そこそこの手数料を取られる分、その辺りはぼったくられたりはしないようだ。俺たちからしたら、金額の交渉なんてあまりできないのでそちらの方がありがたい。
そして驚かれはしたが、これくらいの量ならそこまで大きな問題になることがなさそうでほっとした。冒険者ギルドマスターと会ってくれとか言われたら困るところだったからな。
「お待たせ。無事に換金ができて、金貨64枚になったよ」
「うわあ、すっごいね!」
「おお、そりゃすげえのか?」
「ホー?」
冒険者ギルドを出て、みんなと合流する。こちらの方も特にトラブルはなくてなによりだ。
金貨64枚というお金にコレットちゃんは驚き、カルラとフー太はどれくらいの価値があるのかわからないようだった。カルラもそんなに街には行ったことがないようだったもんな。
「ダナマベアの時よりも遥かに高額でしたね。さすがにあれほどの強敵であればそれも当然かと思いますが」
「そうだね。大金だけれど、俺も決して高いとは思えないよ」
小さいとはいえ、なにせドラゴンだからな。今回はたまたま燃料の爆発を使ってなんとかなったから良かったけれど、空を飛んでいてあんなブレスを吐くドラゴンなんて普通の人に倒せるわけがない。
この異世界の冒険者がどれくらい強いのかはわからないけれど、少なくともちょっと強いレベルの冒険者では歯が立たないだろう。
「それじゃあ前回と同じで、みんなと共同で使う用に金貨39枚を預かって、1人金貨5枚ずつは自由に使えるお金にしようね」
ダナマベアを販売した時と同じようにみんなで均等に分配する。カルラの働きが大きかった気もするが、カルラはみんなで均等でいいと言ってくれた。俺としてもみんな命懸けで頑張ってくれたので、そこで優劣をつけたくはないからな。
「わわっ、すっごいお金だ」
「ドラゴンの素材はまだまだあるから、自分が気に入った物を遠慮なく買ってね」
コレットちゃんはまだ古着くらいしか買っていないからな。さすがにこれだけあれば自分の好きな物を買えるだろう。
ちなみに俺の分は異世界で購入した酒やツマミなんかに消えていった。ちょっとくらいいいお酒も購入してみるかな。
さて、このあとはお昼を食べてから宿を確保し、市場へいろいろと買いに行くとしよう。
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