第127話 天然酵母液
まずはビンを熱湯消毒する。これをしないとビンについた雑菌が繁殖して、すぐに中身が腐ってしまうからな。熱湯消毒したビンの中に水とカットした果物やヨモギなどを入れて蓋を閉める。
2~3日すると、シュワシュワとした泡が出てくるので、1日に1回くらいビンの蓋を開けて混ぜ、外気に触れさせてあげる。これを1週間ほど繰り返すと天然酵母の完成だ。
作ってみた天然酵母液もいくつかは腐ってしまっていた。街で買ったあまり綺麗ではないたくさんのビンに水と果物を入れて、みんなは俺が何をしているんだろうと思っていたに違いない。
本当は外気温が30度前後で一定にすると酵母菌が活発に活動するらしいのだが、キャンピングカーで旅をしながらだとそれは難しかった。とはいえ、発泡はしたからうまくいってくれているといいのだが。
「まずは小麦粉に塩と砂糖を加えて、それとは別に水とこの天然酵母の液を混ぜたものを入れてこねるんだ」
「面白そうですね、私がやりましょう」
「僕もお手伝いする!」
「俺もやるぜ!」
「ホホ―!」
「うん、いろんな種類で天然酵母の量を調整していっぱい作るからよろしくね」
なにせレシピなんてないからな。どの天然酵母がパンに合うのかや適切な分量を確認するためにそれぞれの生地は少なめに作って、とにかくいろんな種類を試していこう。
「シゲトお兄ちゃん、こんな感じ?」
「うん、そんな感じで生地をこねていってね」
「うん!」
コレットちゃんがその小さな両手でパン生地をこねていく。やはりこういうのはみんなでやると楽しいものだ。
「ホー?」
「うん、フー太もいい感じだよ」
「ホホ―!」
フー太はそのまま翼でこねると、生地と翼が大変なことになってしまうので、ボウルに入れた生地を両方の翼で木製のヘラを持って混ぜていく。ずいぶんと器用なものだ。
普段料理をする時は手伝えないことが多いから、とても張り切っているようだ。楽しそうにしているし、きっとフー太もみんなと一緒に料理をしたりするのは嬉しいのだろう。
「よし、さらにバターを加えたら生地をもう少し混ぜてね」
「うん!」
「ホー!」
こねた生地にホワイトブルの乳を混ぜてジーナが作ってくれたバターを加えてさらに混ぜていく。
「面白そうだな、早く俺もやってみたいぜ!」
「私もパンをこねるのは久しぶりですね」
さすがにキャンピングカーのテーブルは全員でできるほど大きくはないから、2人ずつ交代で生地をこねてもらっている。
ジーナはハーキム村でパンを作る手伝いもしたことがあるらしいので、いろいろとアドバイスをもらった。やはり経験者は頼りになる。
「よし、生地はこんな感じでオッケーかな。それじゃあ、今度は別の生地をカルラとジーナでお願いするよ」
「おう、任せてくれ!」
「了解です!」
次の生地は天然酵母の種類と量を変えて生地をこねてもらう。おっと、忘れないようにレシピをメモをしておかないとな。
「シゲトお兄ちゃん、このあとはどうするの?」
「このあとは発酵といって少し生地を休ませるんだよ。今回はオーブンレンジに付いている発酵モードを使うよ」
「おーぶんれんじ?」
「ホー?」
そう、このキャンピングカーには最新式のオーブンレンジが付いている。もちろんパンを焼き上げることもできるが、その前段階である発酵の時間もこれを使うことによって短縮することができるらしい。
もちろん初めて使う機能なので、収納していたオーブンレンジの説明書を引っ張り出して読んでいるところだ。この発酵モードはパン生地の発酵が活発となる35~45度ほどの一定の温度に保ってくれて、発酵するための時間を短くする機能らしい。
ただ、1次発酵からこの発酵モードを使用すると、酵母菌が疲れてしまうと書いてある。1次発酵は常温だとで5~7時間くらいだから、今後は寝る前に生地をこねておいて、朝起きたら2次発酵をして焼成という手順がよさそうだな。
今回はお試しということと、天然酵母の種類と分量を見極めるのが一番の目的なので、この発酵モードを使って時間を短縮するとしよう。
そのあとは少し生地を休ませてから2次発酵、そしていよいよ200~250度くらいに温めたオーブンで10~20分くらいでパンを焼く。当然この温度や焼成時間も生地やパンの大きさによるのでいろいろと試してみないとな。
「うおおお! こりゃうまそうな香りだぜ!」
「とってもおいしそうだね!」
「ええ、パンもベーコンも本当においしそうです!」
「ホホ―♪」
ベーコンの燻製とパンの焼成が終わり、食卓にはたくさんのパンとベーコンが並ぶ。パンの方は順次焼き上げているから、少しずつ味を見ていくとしよう。
それにしても焼き立てのパンの香りは本当においしそうだな! 元の世界では焼き立てのパンを食べる機会なんてなかったから本当に楽しみだ。
さて、いよいよ実食といこう!
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