悪役令嬢・松永久子は茶が飲みたい! ~戦国武将・松永久秀は異世界にて抹茶をキメてのんびりライフを計画するも邪魔者が多いのでやっぱり戦国的作法でいきます!~
8-47 軍議開始! 風雲急を告げる辺境伯領!(2)
8-47 軍議開始! 風雲急を告げる辺境伯領!(2)
前線ではいよいよ帝国との戦いが迫っている中、国内においては次期法王を選ぶ
有力な候補者はヨハネスとロドリゲス。この両者のどちらかで決まりであると目されているが、当然、どちらが優勢とは言い難い状況。
それだけに、両陣営は動きを活発化させ、票固めに奔走している最中だ。
もちろん、裏では“
そして、今回のヨハネスによる挙式強行も、全体への訴えが見え隠れしていた。
総本山からは挙式については反対されていたものの、「私の権限の内でやらせてもらう」とヨハネスは真っ向から突っぱね、挙式の責任者としてアーソに向かっていた。
全部で五人にいる枢機卿の内の一人は王宮に出仕して、王族や王宮に関する神事祭事を取り仕切ることになっており、ヨハネスはその権限を以て、“第一王子”であるアイクの挙式を執り行うとした。
花嫁が絶賛対立中のシガラ公爵であろうとお構いなし。あくまで、自分の権限内でのことだと、総本山の勧告を実質的に黙殺。
全面対決一歩手前のシガラ公爵の妹の挙式など、主流派からすればとんでもない話であったが、相手方との繋ぎ役として自分の立場を強調し、より鮮明に改革志向と対話路線を打ち出す、という政治的な意味合いも今回の結婚式には含まれていた。
「なんとも面倒なことですな。今少し穏やかな挙式とはいかなかったのでしょうか?」
サームとしては主家の姫君の結婚式であり、穏当に行かぬのかと嘆いた。情勢がそれを許さないことは重々承知していたが、それでもやはり口からは漏れ出てしまうのであった。
「まあ、やむを得ないでしょう。むしろ、正式な挙式が執り行えただけでも良しとせねば。そう言う意味では、ヨハネス枢機卿猊下には感謝ですな」
同じく公爵家に仕えるポードとしても、王家との婚姻は望むべきことであり、より強固な協力関係を築けたことを素直に喜んだ。
「今まではなし崩し的に運営されてきたアーソの統治も、この婚儀を以て正式に施行されるわけですし、領民も喜ぶでしょう」
現地の事を何よりも考えるアルベールとしても、今回の婚儀は歓迎することであった。ヒサコの実力を知るからこそ、風雲急を告げるこの地を任せることができると考え、同時に自分もさらに精進せねばと決意を新たにした。
「ゆくゆくは宰相閣下のご子息がこの地に戻られますし、我らはその地ならし役というわけですな。帝国の侵攻を跳ね除け、我が国の安全を取り戻すため、張り切らねばなりませんな」
そう答えたのはコルネスであった。
いずれジェイクとクレミアの間に子を儲け、その子が新たな領主としてアーソの地に舞い戻る。これが皆の願いであり、それまでの代役を務めるのが、ヒサコとアイク、そして居並ぶ顔触れであった。
(ま、そんなことにはならないし、させないけどね)
そう心の中でほくそ笑むのは、ヒサコであった。
一度付与された土地の権利を手放すなど、“戦国武将”としては有り得ないのだ。室町幕府の力が応仁の乱以降急速に衰え、実力主義に傾倒し、荘園も知行も力づくの切り取り御免が罷り通ることとなった。
そして今、ヒサコは正式にアーソ辺境伯の権限の代行を委ねられ、一切を取り仕切る事となった。名義の上ではクレミアが領主であり、また正式な代官はアイクであるが、遠方地にいる領主と病弱な代官、これを操ってすべてを掻っ攫うなど、“松永久秀”にとっては手慣れたものであった。
(言ってしまえば、これは“家宰”になったようなもの。権限は最大限使わせてもらうからね)
家宰、とはかつての室町期の日ノ本に存在した役職で、大大名の家中において、その家を切り盛りしていた役職である。政務の統治者であり、家臣の代表であり、実質的には主君の代行者とも呼べるほどに巨大な権限が与えられていた。
ヒサコの中身である“松永久秀”は畿内十三ヵ国を納めた覇者
その権限は絶大であり、主君に成り代わって数々の政務や他家との交渉に臨み、ついには大和国を実質統治するまでになった。
そして今、またしてもその役目が回って来たというわけだ。
ヒーサとヒサコは“一心別体”の状態であり、公爵と辺境伯という、本来ならば同時に就けない称号を同時に得たことになる。
なにかと美味しい辺境伯権限が存在し、それを夫名義で好き放題にできることは大きい。
免税特権、独立司法権、そして、戦争の自由。どれもこれも美味しい権限だ。
この特権に、公爵家からの無制限の援助が加わると、途端に化けるのだ。
もう誰も止められない。ただひたすらに膨張していくだけだ。
ようやくらしくなってきた。これぞ国盗りの醍醐味よと、ヒサコは心の中で喝采の声を上げた。
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