第5話


 それから、私は国王の子供を三人産むことになった。男子が一人、女子が二人だ。

 カトリーナはやはり二人目以降の子供には恵まれなかったが……私が産んだ子供を我が子のように可愛がってくれて、腹違いの兄である王太子も弟妹を大切にしてくれた。


 書類上の夫である侯爵はというと、国王陛下に一喝されて以来、急に身持ちを崩してしまって酒に溺れるようになったらしい。

 いくら領地経営に励んだとしても、その成果は自分の子供ではない他人に取られてしまう……それが侯爵の勤労意欲をそぎ落としたようで、仕事も手につかなくなったそうだ。


 貴族としての職務を遂行する能力がないとみなされた夫は爵位を剥奪され、領地も没収されたとのこと。

 恋人もまた没落した男を見捨てて、離れていったようである。


 侯爵から没収した爵位と領地は一時的に王家の預かりとなり、いずれ息子が受け継ぐことになっている。

 もちろん、王太子殿下に何事もなければという話であるが……王太子殿下は病気一つすることなく、今日も腹違いの弟妹を引き連れて庭園を走り回っている。

 このまま何事もなく成人して、王位を継ぐことだろう。


「ローズ、お茶にしましょう」


「ええ、いいわね。カトリーナ」


 カトリーナとの友人関係はその後も変わることなく続いている。

 私は親友と季節の花々が咲き乱れる庭園でテーブルを囲んで、遊んでいる子供達を見守った。

 夫から愛されることのない人生だったが、それでも私は幸せを手に入れることができた。

 親友と子供達に囲まれた生活に不満はない。

 きっと、こんな穏やかな日々が死ぬまで続くことだろう。


「おかあさま、お花をつんできました!」


「花でかんむりをつくりました。かぶってください!」


「ええ、もちろんよ。ありがとう」


 私は穏やかな笑みで頷いて、愛しい子供達が差し出してくれた花の王冠を頭に載せるのであった。




おわり

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結婚式の夜に夫から「お前は愛人だ。愛されるなんて期待するな」と言われました。 お望みどおり愛人になります。貴方ではなく国王陛下の。 レオナールD @dontokoifuta0605

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