音楽が好きだった

音楽が好きだった。

どれだけ辛くても、離れられなかった。

ライブやコンサートに行けば、心がぐちゃぐちゃになって嫉妬した。いつも泣いていた。

なぜこんなに好きなのに届かないのか。

近くにあるはずなのに触れられないのか。

大人になればなるほど分からなくなっていった。ただ純粋に楽しみたいだけなのに。

いつの間にか、とても難しいことのような気がしていた。年をとってからこういうことばかりだ。好きとの向き合い方を忘れてしまった。

あの時から私は、音楽を愛しているというより縋っていた。明るい曲は聞かなくなった。

たぶん、戻ることは出来ない。知ることも学ぶことも、経験を積むこともできる。でも逆の状態に戻ることはできない。

子どものままでいたかった。

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