True Eye 【season1】 -War 9- 堕ちた国 PART Ⅱ

【Phase1:味方の条件】


「…何故私達の拠点の座標を知っていた?」


一気に雰囲気が凍りついた


それもその筈


イーミュイ,そしてステラの2人は墜落という形でTE拠点のある島へ偶然来たわけではなく,零音から座標を聞き,そして辿り着いたという事だからだ


何故TE部隊の隊員でもない零音が島の存在を知り得ていたのか


何が目的で2人をTE部隊へと送り込んだのか


真っ先に思いつく事は当然,敵である事


島の存在を知り,2人を送り込んで情報を盗む


その考えに至るのは自然だ


「ん〜少し違いますねぇ,確かに私は2人に島の座標は教えましたよぉ?けれどあくまで私が島の存在を知っていたのはその島を偶然発見したから,無人島だと思ったので行く場所のない2人に教えたまでですよぉ?」


確かに零音が言っている事は納得がいく


それでも尚怪しい事には変わりはない


「…どうやって知った?あの海域はサメがうようよといて物好きな奴くらいしか近寄らない様な場所だ,そんな海域を目的も無くいたとは考えにくい」


「当然簡単には信じて貰えませんよねぇ…私自身も目的がなくあそこの海域を通っていた訳ではないんですよぉ?知人が家出をしたい…そう聞いたので私はセントラルシティから別の大陸へと向かうお手伝いをしてましてぇ,その途中船が難破してしまってその子とは逸れてしまって私自身も海で溺れかけました,けど意識が途切れる前に大陸をこの目で見ました,それが偶然にも貴女達TE部隊の島とは思いませんでしたねぇ」


「家出…船が難破……?もしかしてその知人の名前って…」


「シュガー・ラーシアス,最年少でウェポンマスターの称号を得た天才少女ですよぉ」


シュガーの家出にも関わっていたという事らしい


偶然にしては不自然過ぎる


ますます怪しさが増すばかりだ


「シュガーちゃんをご存知…という事はあの子は島へ辿り着いたんですかぁ?」


「確かにシュガーは今はTE隊員の一員になっているよ,それにしても不思議だね…結果的に3人をTE部隊と巡り合わせている,偶然にしてはあまりにも不自然過ぎないかい?」


「それこそ神のみぞ知るという事ではないでしょうかねぇ?現に私も貴女達とこうして巡り合っているんですよぉ?」


「…今はよそう,考えても埒がないし本当に偶然かも知れない,答えを出すのは任務が終わってからでいい」


「そうやね〜」


今はとにかく状況が悪い


中国政府の部隊に追われている身だ


鈴々達の部隊と合流が出来たのはいいけれどあくまでそれは作戦の序の口


ここからは情報収集をしなくちゃいけない


「丸越しじゃ心許ない…武器か何かあると助かるんだけど…」


「それなら私達の拠点に向かいましょう,隊員達の残してくれた武器がある筈です」


「本隊との合流はどうしますか?」


「まずは装備を整えないといざという時に後悔するからね…八雲と零音も今の装備じゃ戦闘は厳しいですよね?」


「そうですねぇ,あの人達に追いつかれたらすぐに弾切れしてしまいますねぇ」


私達も今は武器が欲しいところだ


いざという時の為に…ね


鈴々達の部隊と合流したのは幸運だけれどこの零音という人物については謎が多過ぎる


本当に偶然なのか,意図的なものなのか


それすらの判断も出来ない状況


場合によったら敵となり得るかも知れない


「陽が落ちる前に行きましょう,暗闇では私達の姿は丸見えですから」


「そういや連中暗視ゴーグルも持ってたな…」


廃墟から出て目的地へと向かい始める


その間にも私達は次の手段を考える必要がある


「…零音をどう思う?」


「…偶然…で片付けるには異常よね…」


「シルヴィアはどこで出会ったんだ?」


「以前の任務でね,核ミサイルの件覚えてる?あの施設で偶然遭遇したの」


「バグの施設か…目的は確か同じと言ってたな…」


「それも今考えると変よね…」


変だと思う要因


それは何故鈴々の部隊の隊員である零音がバグの施設に潜入していたのか


中国は内戦が続いている


そんな状態では兵器の開発もままならない,ただ弾薬や武器の供給で手一杯だと思う


その為使用するには即時投入可能なもの


それこそV達が行ったように兵器の鹵獲が有効な手段で鈴々自身もブレイク部隊に襲撃を仕掛けたのは兵器の鹵獲だと言っている


じゃあ何故零音はバグのデータを欲しがったのか?


手に入れたとしてもバグの使用するバイオ兵器はそれなりの設備と技術が無ければ生産もできない


つまり鈴々達中国解放軍にとっては不要な物の筈


「鈴々,バグってテロリストを知ってるか?」


「バグ…確かバイオ兵器を使用するテロリスト…でしたよね?」


「解放軍は何故バグの研究データを欲しがったんだ?」


「はい?そんな話聞いていないですけど…」


「以前TE部隊の作戦中にシルヴィアが零音と遭遇しているんだ,同じ目的でね,てっきり解放軍が欲しがってるんだと思ったけど…?」


軽い揺さぶりをかける


何か秘密にしている事があるなら多少は動揺するだろう


しかし零音はその様な様子がなく,平然としていた


「あ…もしかしたらまだ私達の部隊に来る前かも知れません…」


「私が鈴々さんの隊に来たのは秋頃…シルヴィアさんと会ったのは夏頃でしたねぇ」


「って事は零音はまだ隊に属してから日が浅い隊員なんだ」


「そうですよぉ?」


「…以前は何を?」


「乙女の秘密ですよぉ?」


そう簡単に情報は引き出せない…か


裏を返せば研究データを必要としていた組織に属していた事になる


「それに…貴女達の中にだって知られたくない過去をお持ちの方はいますよねぇ?」


「…………」


それは確かにその通りだった


私もそんな1人だ


私は元々傭兵という職に就くことを考えてもいなかった


普通の生活を送りたかった


しかしそれが叶わなかったのは特殊な体質の為だ


私の肉体はあらゆる環境にも適応するという不思議な力


皆に合わせた呼び方をするなら異能と呼ばれる力を開花させていたからだ


幼少期の頃から私は世界政府の施設での生活を余儀なくされた


目的は私の体の研究という名目で


何年もの間身体を弄くり回される生活を送っていた


普通の生活を送るという夢はこの時に捨てた


何年もの研究の末に私の力は結局特定が出来なかった


それどころか私の身体のDNAに不明な種族のDNAが混ざっているのが発覚


危険と判断されて私は廃棄される筈だった


それでも尚私が今も生きている理由


それこそが私の知られたくない過去


私は角と翼の生えた奴に命を救われたのだ


私が廃棄される日


あの人は私の目の前へと現れた


『助けに来た』


交わされた言葉はそれだけだった


目的は分からない


けど私が助けられたのは事実だ


私がTE部隊で隊員として在籍している理由は奴らを殺す為じゃない


ただあの時の理由を聞きたい


それだけで他の隊員とは目的が異なっている


「……イーミュイ,何か分かったか?」


「んやぁー…何故か心が読めないんですよねぇ…というよりも心の中を読まれない様にしている…の方が正しいですねぃ」


危ない,そうだった


イーミュイは人の心を読める力を持っているんだった


私に意識が向いていなくてよかった


「私は詮索されるのは好きじゃないんですよぉ?だからその為には嘘だって吐きますよぉ?ふふふ」


「まぁ…この際過去だったり目的だったりはいいか…」


「逆に尋ねますけどぉ,味方の条件ってなんでしょうねぇ?」


味方の条件


同じ目的を共有する事?


同じ敵を持つ者?


「そうだな…私らの目的は戦争を無くす事,まずそれが一番の目的,当然他の目的を持つ隊員もいるが…根本的に戦争を無くすという目的があってこそだ」


「同感ですよぉ,戦争を終わらせる…それには同意出来ますねぇ,それがあればお互いの過去なんて小さな問題じゃないですかぁ?」


「とは言っても平然と嘘も吐きますって奴の言う事はなぁ…」


「もちろん私は嘘を吐きますよぉ?けれど志に嘘を吐いた事はありませんねぇ,鈴々さん達の部隊に入る時も同じく嘘は吐いてませんよぉ?私はただ魔族の力を滅ぼしたいと…同じ志の元に集まりましたねぇ」


「色々と疑う事もあるかと思いますけど零音さんの実力は凄いですよ?まだ新人なのに優れた力を私達の為に発揮してくれてますから!」


「やはり貴女達の様な人達には実力で示した方が良さそうですねぇ」


「一先ずは頼りしてるよ,零音」


社長は鈴々達を仲間に引き入れる事を決定した


しかし今はまだ味方ではない


一時的な同盟だ


完全に信用出来ないのは鈴々や八雲も同様だ


「そういえば皆さん怪我はしてませんか?」


「おかげさまで」


「もし怪我したら私に見せてください,これでも医師免許は持ってますから」


「そういえば八雲さんはメディックだったかしら…私達のメディックとは大違いね…」


「治療は荒いしすぐにキレるし,代わってもらいたいくらいだね」


「あとでVに言っておくね,荒川」


「頼むからやめてくれ,まだ死にたくない」


「Vさん……同じメディックとして興味が湧きますね」


「あいつは腕は確かだよ,治療は荒いけど元医者なのは伊達じゃない」


「…元医者という事は内科医とかですか?」


「え…いや〜……そこまでは聞いてなかったけど…確かに普通に風邪引いた時も診断してたなあいつ…」


「私は医師免許は持ってますけど医者ではなかったですからね…憧れちゃうなぁ…」


「八雲さんは何故メディックに?」


「元々医者にはなりたかったです…けど普通の医者では助けられる人も助けられない…だから私は傭兵として戦場で命を助ける医者になりました」


「なるほどね,まだ若いのに…って言い方はおかしいけれど立派だと思うわ」


「ありがとうございます,Vさんってどんな人なんですか?」


「そうねぇ…咲夜が一番付き合い長いんじゃないかしら?」


「あー?Vの事って…何話せばいいんだ?」


「どの様な人です?」


「猛獣」


「ぷっ…くくく……」


「てめぇぶっ殺すぞ荒川」


「うわぁ!?イーミュイ!!頼むからいきなり驚かすのはやめてくれ!」


「あはは〜,やれと言われた気がしたので」


「まぁ態度は悪いし口も悪いし治療もくそ痛い,けど腕は良い,戦闘でもメディックなのにわざわざ前線に出てくるわ些細な事でキレて怪我されるわ人肉も食うわで…けどまぁ,大切な仲間だ」


「…凄い…私もまだ頑張らなくちゃ…!」


「まぁあいつを参考にするのはどうかと思うけどな,同じ女として」


「え?私…男ですけど?」


「男ぉ!?」


「男の娘!?」


なんてこった


外見は女の子そのものだ


え?本当に男の子?


「ちょっと下脱いで貰っていいー?」


「はぃ?」


「おいカリフォルニア,変な癖出てんぞ」


「カルネスだよ!!!」


おっとしまった


ついついいつもの癖が出てしまった


「びっくりしましたよ…えっと……カルロスさん?」


「カルネスだよ!!カルネスヴィーラ!!!」


「ごめんなさい…急に下を脱げなんて言われて気が動転しちゃって…後でで良いですか?」


「え?見せてくれるの?」


「ほらやめろお前ら,一応言っておくがこの国はどこも戦場だぞ?」


「ふふふ…すっかり打ち解けてますねぇ」


「ところで零音さんは化学兵なんよね〜?何やるの〜?」


「そうですねぇ,私の分野としては主に致死性,非致死性の薬物を用いた戦闘,潜入を担当してますよぉ」


「潜入…って事はソフィーや美香と同じ感じか,それにしても薬品か…うちにはいない人材だな」


「珍しいと思いますよぉ?特に潜入…情報は傭兵にとって武器になりますからねぇ」


情報は傭兵にとっても有利な武器となり得る


私達TE部隊が任務で戦場で行くのは最終手段,もしくは牽制が目的


ではそれ以外はどうするのか


TE部隊に舞い込む依頼は多い


その大半は敵対する組織の牽制と抑制


主に自分達の収益を目的に戦争を起こす企業や傭兵


その際に情報は武器となる


話し合いで終わればどれだけいいか


とはいえ私達がやっている事は力での抑制に近い


必ず反発する組織も出てくる


「それに…薬品って便利ですよぉ?情報を手に入れてその情報を武器に交渉する…それでは不十分ですよねぇ?組織っていうのは…内部が一番脆いんですよぉ?」


「…どういう事だ?」


「もし内部の人間が機密情報を話しているビデオが発見されたら…どうなるんでしょうねぇ?」


「…そういう事か…確かにそれなら内部で亀裂が生じ自滅を誘発出来る…という事だね?」


「えぇ,その通りですよぉ」


確かに交渉よりもより効果的な手段ではある


けど倫理観的には問題があるとは思う


「とはいえあくまでそれは私にとっての最終手段ですよぉ?普段は普通に依頼された情報を手に入れる事だけですからぁ」


「…確かに私と会った時には情報だけを持っていってたわね…それにしても化学兵というのは恐ろしいわね…」


「けど私は医学にも詳しいですよぉ?バイオ兵器の解析及び解毒も私の役目ですからねぇ」


私は零音という人物はかなりの危険な印象を抱いた


…いや,私達も同じだ


突出した力を持ち,隊員の多くは組織に馴染めず,厄介者として放り出されてTE部隊へと集まった


ある意味零音と私達は同類なんだろう


「奴らにも薬品が効くかは分からないですけどねぇ」


「そもそも薬品を盛る前に死にそうだけどね〜」


「…さて,ここまでは問題なく来れましたね…到着です」


気付けばとある建物の前まで辿り着く


恐らくここが目指していた場所


鈴々達の拠点だ


「私達の拠点…名前は…」


「トレイター…トレーラーを何台もくっ付けて改造して尚且つファミレスの資材も使ったのでウェイターと合わせて名付けてみましたぁ」


「まずは中に入りましょう,少しはゆっくり出来ますよ」


【Phase2:解放軍vs中国政府】


中は意外にも広く,それこそ居住するには申し分ない


しかしそれはあくまでも表向きの見た目


彼女達の拠点はこの地下にあった


「うぉ…すっげ…」


「よく集めたわね…」


地下にはこれでもかと言われるほどの銃や弾薬が集められていた


まるでガンショップの様だ


「仲間達と必死に集めました,倒した敵兵から奪ったりして…」


「…Tire6社のも混じってるな…」


咲夜が疑問に思ったのはここに置いてある中にTire6社製の銃が紛れ込んでいる事だ


銃器のシェアは今やTire6社が80%を占めている


理由としてはまだ世界がこうなる前


戦争ばかりになる前だ


その頃は銃器は軍や傭兵,個人で自己防衛する物だった


その為銃器メーカーの数は多くはなく,その頃にはまだTire6社も小さな企業だった


しかし戦争が多発する世界になってからは数多くの銃が必要とされる時代になった


それに伴い傭兵の他に銃器メーカーも数多く誕生した


Tire6社も当然この際に他社との競争に追われた


様々な銃器メーカーが高品質なものを取り揃えた


しかしそうなると問題なのはコスト面だ


当然品質が良くなるにつれ価格も高騰した


そこでTire6社は敢えて高品質な物を低価格で売った


当然価格が安く,尚且つ品質も良いとなれば皆がTire6社の銃を求めた


それこそTire6社の作戦だった


もちろん赤字は続いたがまずは自分達の製品を見て,手に取り,使わせる


そうする事で注目を集めた


Tire6社の銃器は非常にカスタム製に優れていて別途パーツ交換を行う事で多種多様な用途に使用できる


それ故に大量生産が可能で安価で売っても数年で巨万の富を得た


それからは新開発が始まり今に至る


全世界で80%のシェア


今や傭兵のほとんどがTire6社の銃器を使用している


しかし例外がいる


それが中国だ


中国は自分達の武器は自分達で生産し使用している


だから本来であればここにTire6社の銃が存在している事自体が妙だ


「敵さんが使っていたものもありますけど解放軍の中にも使用している人はいますよぉ?」


「…解放軍って中国人だけじゃ……ないか,零音も中国人じゃないもんな…」


「えぇ,私は日本人ですよぉ?」


そういえば私達を待ち構えていた人も装備は中国製だったけれど中国人ではなかった


…いや,中にはTire6社の武器を持つ者さえいた


「ここでなら話してもいいんじゃないですかぁ?隊長」


「…そうね,TE部隊の人達は中国の内戦をどこまで知っていますか?」


「…奴ら…いや,魔族に与する中国政府,魔族の力を我が物にしようとする解放軍,魔族を滅ぼす事を望む鈴々達イレギュラー,そしてとある企業…」


「雷鳴重工ですねぇ…兵器開発の企業…中国の内戦を利用して兵器の試験を行なっていますねぇ」


「えぇ,4つの勢力が存在しています,しかし近年では中国政府の動きがより過激になってきていて…中国人以外も勢力になりつつあります」


「……厄介だな」


「はい,今はまだ小規模な部隊が中国政府へ加わっているだけですけどこれが大規模なものになったら…」


「奴らに与する組織…いや…それこそ国が増えていく…そうなったらおしまいだ…」


中国はこれまで他の国に興味を示さなかった


実際はそうなんだろうけど中国政府は躍起となり他国の傭兵を味方に引き込んだ


そうして戦争は泥沼の状態になれば奴ら…中国政府の持つ力に関しても知れ渡る


そうしてその力を求める者によって再び戦争は繰り返される


これが奴らの目的だったんだ


自分は手を下さずに私達同士を戦わせて国を崩壊させる


この戦いに勝とうが負けようが戦争は続く


「……どうするの?咲夜」


「…合流は3日後だ,それまでは引き続き情報を集める,答えを出すのは合流してからだ」


既に中国の内戦は無視出来ない


放置すれば奴らによってこの戦争は世界中に伝染する


それは必ず阻止しなければならない


「よっと……普段使ってるやつとは違うけどまぁ問題ないだろ」


「私はなんでも使えるやよ〜」


「私も使う分には問題はないね」


「ナイフってあったりするかしら?」


「どうぞぉ」


「うん…これなら接近戦はいけそうね,念の為ハンドガンも…」


「零音の使ってる武器は見た事ないな,どこのやつだ?」


「これですかぁ?昔支給されたものなのでメーカーは知らないですねぇ」


「さて…これからどうする?」


「本隊と合流が一先ずの目的ですかね…解放軍を離れる理由を話さなきゃいけませんし何より今は敵に見つかったら圧倒的に不利です」


「解放軍を離れる…ですか?」


「私達の目的は解放軍とは逆です,TE部隊の人達は私達と同じ魔族の殲滅です,なので私達はTE部隊へと加わります」


「なるほど…けれど認めてくれるでしょうか…?司令に会うことだって私達の様な一般の部隊では難しいのに…」


「大丈夫ですよぉ,鈴々さんは特別ですからぁ」


「特別?」


「解放軍の司令…それは私の父だからです」


「そうか……なるほどね」


鈴々が解放軍を離れるのに躊躇った理由


語られはしなかったが司令が自分の父親だったからだ


複雑な気持ちだろう


父親と娘


その目的はまるで真逆


いわば決別を意味する


自分の中でケジメを付けておきたい,そう思っている筈だ


「もう陽は暮れましたし行動するのは朝になってからですね,確かご飯は缶詰があって……ベッドはあっちで…シャワーは…」


「そんな気を遣わなくていいよ鈴々,私達はこういう戦場で慣れてる」


「私はシャワー浴びたいんですけどぉ?」


「私も浴びたいかな…」


「日本食はあるかい?」


「テレビ映るー?」


「…………」


「とりあえず朝までは自由にしていてください,見張は私達が行います」


僅かな時間とはいえ休息を取るのも傭兵には必要な事だ


それが例え戦場であっても私達は休息を取る際にはいつでも全力だ


いついかなる時に戦闘が起こっても体力が無かったら戦えるものも戦えない


そう,いついかなる時もだ


「…!なんだ!?」


「敵襲ですー!戦闘に移行します!!」


この様な襲撃は私達傭兵にとっては日常茶飯事だ


いつだって私達は襲撃される


しかしそれに怯えて休まないという選択肢はない


「起きろお前ら!襲撃だ!」


「ふぁー…よく寝た…随分と早かったね」


「まーだ眠いなぁ…」


「朝食は終わった後ね」


眠気は抜けないがすぐさま戦闘態勢に移行する


多少でも体は休まった,それに比べて敵は恐らく血眼で私達を探し回っていたんだろう


今回はこちらも武器がある


勝てる見込みは十分だ


「鈴々,敵の規模は?」


「恐らく昼間に私達が遭遇した部隊…多くて10数人だと思います…」


「外には狙撃手がいる,荒川スモークだ」


「はいよ」


狙撃手がいるのにわざわざ外に出る馬鹿はいない


そう,それは敵も同じだ


だからこそ外に出る事が効果を発揮する


「見た感じここの地形じゃ狙撃手が潜むのに適してる場所はこの2箇所だ,荒川,カルネスヴィーラの2人はこの2か所を押さえてくれ,もし狙撃手がいたら排除を頼む,私とシルヴィアはこのまま外で遊撃だ」


「はいよ〜」


「危険です…!私達も…」


「鈴々達は夜通し警戒してたんだ,そのおかげで私達は十分休めた,安心して私達に任せてくれ」


一気に外へと飛び出す


スモークで視界は悪い


撃たれる心配はあっても当たる心配はない


「行け!援護は任せろ!」


「「了解!」」


咲夜達は物陰に身を潜め私達は突き進む


真っ先に倒すべきは狙撃手だ


「連中飛び出してきたぞ!撃て!」


敵からの攻撃はスモークで私達には当たらない


だがこちらからは敵がどこにいるのか丸分かりだ


「ちょっと通るやよ〜!」


「くそっ!こいつら速」


ギリギリまで近づいてからのショットガンによる銃撃


例え防弾チョッキを付けていようと衝撃までは殺せない


1人,2人と敵を蹴散らしながら私は狙撃ポイントの片方へと辿り着く


ビンゴだ


案の定狙撃手はこの場所から私達を狙っていた


「まだ子供…武器を下ろしてこっちを向いて」


「…………」


「聞こえなかった?武器を下ろしてこちら側に向く!!」


「……それは命令?」


子供の狙撃手


まだ小さい…いや,小さ過ぎる


アルと同じくらいの年齢だろうか?


「命令やね,武装解除すれば命までは奪わない」


「…でも私の命令はここから貴女達を撃つ事,従えない」


「…………」


妙だ


それは子供の傭兵というのもそうだが


与えられた命令を語りながらもこちらを向く事もなく,ただ窓の外を見ながら銃を構えている


多少なりとも反応してもいい筈だ


こっちを見るとかこっちに銃を向けるとか…


しかしそれがない


ただ命令の通りにこの場所から窓の外の敵を狙っているだけだ


「ごめんね」


「…………」


首に打撃を加えて意識を奪う


近づく間も打撃を受けるまでも私の方を向く事はなかった


おかしい…


「………一応武器は破壊してっと…外の方も…大体片付いてるやね」


スモークも晴れ敵の倒れている姿が複数確認出来る


「あれは…撤退のサイン…?」


戦況はこちら側が優勢…という訳でもなさそうだ


遠くから何台かの車のライトが見える


増援だ


このままで消耗戦になったら不利なのはこちら


「よっと…いいところに車が落っこちてたねー」


「連中が乗ってきたやつだ,早く乗れ,鈴々達はまだか?」


「いないの?」


「ここを破棄する前にいくつかの武器は持ち出したいってさ」


暫くすると武器を担いだ鈴々達も車輌へ合流する


敵はかなり近くまで迫っている


「間に合いました…とりあえずこれで…!」


使い捨てのロケットランチャー


すかさず鈴々が敵車輌へと撃ち込み先制する


「出してください!暫くは足止め出来るはずです!」


「しっかり捕まってろよ」


急発進でこの場から立ち去る


まだ夜明けには少し速い


こちらの姿は向こうから丸見えだ


まだ二輌の追手がいる


「やっぱり追ってくるな…私はルーシーみたいに運転が上手い訳じゃない,事故りたくなかったら排除頼む」


「このまま逃げたら?」


「どこに逃げるって?私達はこのまま解放軍と合流する,鈴々案内頼む,追手は着くまでになんとかする」


やれやれ


どうやら私達で後ろの追手達をなんとかしなければならないらしい


「これ使います?」


「それ使ったら全員蒸し焼きだよ」


「タイヤを狙うか運転席を狙うか…」


距離はかなりある


ここから撃ったとしても果たして当たるかどうか…


「風向きは…ふむ……これなら使えそうですねぇ」


「何か策があるのかい?零音」


「少々手荒ですけどこれを使いましょうかぁ」


零音が何かを取り出して放り投げる


手榴弾かと思ったが違うらしい


数秒後に炸裂し辺り一面にガスの様な物が噴出される


一台はそれに気がつき進路を変えるがもう一台はそのままガスの中を突っ切ってきた


すると暫くフラフラと車が不安定になったかと思ったらそのまま壁に突っ込んでいった


「……何を使ったの…?」


「お手製の毒ガスですよぉ,少々危険ですけどぉ」


「まだもう一台追ってきてる…なんとか出来そうか?」


「私はさっきので手持ちを使いきってしまったのであとはお願いしますねぇ」


「咲夜さんもうすぐ境界線です…!」


「境界線?」


「このまま進めば敵車輌毎私達も木っ端微塵にされてしまいます…」


「それを先に言ってくれ!!!」


…つまり時間はもう残されていない


このまま解放軍の陣地に入れば敵を引き連れて来た私達毎攻撃するという事だろう


「どのみちここで片付けておかないとダメみたいね…咲夜車寄せられる?私が乗り込んで片付けてくる…!」


「いや…それよりも確実な方法がある」


「確実な方法?」


「荒川作戦いくぞ!!」


「は?」


「ちょっと待って!?」


「みんな耐ショック態勢ー!」


車はカーブを曲がり勢いよくタイヤを空回りさせる


180°回転し一気に加速を始める


標的はもちろん


私達を追って来た車輌だ


正面から勢いよく車体がぶつかり合う


敵もそれを予想はしてなかった様でクラッシュした車内で苦しそうな声が聞こえる


「いてて……」


「あとは……片付けてくる…」


「私も行くよ…」


身体は痛みで悲鳴をあげているが死ななかっただけマシだ


「くそ…こいt」


「がばっ…!?」


「…あとは運転席やね」


「こっちで片付けておくよ,早いところ……え……?」


運転席へと銃を向けた水瀬が止まる


「そんな……どうして君がここに……」


「荒川〜?どうした〜?」


「……荒川?」


銃口を向けたまま荒川は撃とうとしない


様子が気になり私も運転席へと目をやると運転していたのは若い女性だった


「……知り合い?」


「うん……私と同じ陸軍の同期だよ」


「久しぶりね……なんで荒川さんがここにいるの……?」


「…君こそ,陸軍は辞めたのかい?」


「…日本は甘い,私の目的を遂行するのに日本は不十分…だから私はもう陸軍じゃない」


「…じゃあ今の君はなんだい?」


「…私達はバウンティハンター,今回はテロリストの始末で私達は呼ばれてる…」


「テロリスト…やっぱりまだあの時の事を…」


「大丈夫ですかぁ?早いところ出発しますよぉ?」


「この声…零音……?このーーーー」


「……さて片付きましたね,それじゃあ早いところ目的地へと向かいましょうかぁ」


「……星川…」


「行くやよ,荒川」


「……分かったよ」


「…………もの…」


「…………」


ボロボロになった車に再び乗り込む


かろうじて車は動くみたいだけど乗り心地は酷くなった


「…………」


「荒川大丈夫?」


「……あぁ大丈夫,昔の仲間とはいえ私達を追って来た以上は敵だったからね…」


星川と呼ばれた女性は荒川がまだ日本陸軍に所属していた頃の同期だったらしい


バウンティハンター


所謂賞金稼ぎだ


傭兵を殺す為の存在


私達の様な傭兵はその実力の高さから他の組織からも厄介な存在に見られる事も多い


その為賞金首にされる事もある


彼女達バウンティハンターもこの戦争で生み出された存在


金目的の傭兵と遜色ない


それよりも私が気になったのは星川の発言だ


零音が撃ったのは敵だったからという理由ではなく別の理由だと思う確証に至る発言だ


私は確かに聞いた


裏切り者と


【Phase3:裏切り】


解放軍の拠点へ辿り着いたのはたった数分後だ


ボロボロの車を見るや否や大勢の兵士が私達を取り囲む


鈴々達がいなければそのまま撃たれていただろう


「あまり歓迎されてる感じじゃないな…」


「そりゃ私達部外者だからね…」


「ちょっと待っててくださいね…私が説明して来ます」


鈴々が車を降りて兵士の元へと行く


「…私らどうなるかね」


「どうなるって?」


「少なくとも敵ではない事は分かってもらえるだろうけど良くて監視,悪けりゃ監禁だろうね」


よく考えればそれもそうか


私達は言ってしまえば部外者


それも傭兵だ


ましてや鈴々達を引き抜きに来た


いい顔はされないだろう


「大丈夫です,皆さん降りて来てください」


解放軍拠点


まるで要塞の様だ


「ようこそ中国解放軍へ,私達は解放軍所属の隊の一つで主に拠点防衛を任されてる紅よ」


「TE部隊隊長咲夜だ」


「TE部隊?聞かない名前ね,どこから来たの?」


「セントラルシティから」


「ふむ…一先ず歓迎するわ,こっちへ来てちょうだい」


拠点の中は意外と広くて大勢の兵士が私達を興味深そうに見ていた


皆中国人


セントラルシティでも見かけるのは稀だ


「鈴々,私達は任務に戻るわ,これ第7ブロックのキー,今はゆっくり体を休めてちょうだい」


「ありがとうございます」


「…牢屋じゃなくて良かったな」


「牢屋は満員ですからねぇ」


「ハンモックがあるじゃないか,寝てていいかい?」


「待てよ荒川,私らは仕事があるだろ?」


「情報収集…だっけ」


「そうですね,ここでならゆっくりと私達からも情報は出せますよ」


「では私は紅茶でも淹れてきますねぇ」


まだ中国へ来て一日だ


たった一日で色々な事があった


戦場だから当然といえば当然なのだけど


「まずは状況確認,私達は鈴々の部隊と合流,そして中国解放軍とも合流出来た,私達の目的でいえばいい感じに進んでる,この後私達は可能な限り中国の情報を集めてルイス達と合流する」


「私達ですね」


「情報は鈴々達…それと可能なら他の部隊からも聞こう,とりあえず現状何か報告する事はあるか?」


「…どうやら中国政府側はバウンティハンターを雇ってるみたいだよ」


「バウンティハンター?所属は?」


「それは調べないと分からないね…偶然にも旧友がいたからどこの所属かは分かると思うよ」


「旧友?」


「星川 優,陸軍の私の同期,咲夜も名前は知ってる筈だよ」


「星川って……星川 真の?」


「そう,彼女は被害者の一人だよ」


「…その星川さんって……何があったの?」


「…日本で昔起こったテロ事件でね,星川財閥って場所が攻撃を受けたんだ,そして彼女はそのテロ事件で父親を失ってるんだ」


「…テロ事件…今の日本じゃ考えられないわね…」


「彼女とは陸軍の入隊の時に知り合ってね,彼女は凄腕だったよ,とは言ってもその目的は…」


「…復讐か」


テロリストへの復讐


復讐目的で傭兵や軍に入る人は多い


そんな奴が多いから戦争は終わらない


けれど仕方がない事だ


今の世界情勢がそうさせているのだから


「零音さんは何か知らない〜?あの人達」


「……私がですかぁ?」


「知ってるかなぁってね〜?」


星川の言葉


裏切り者という言葉


星川は日本人,敵対する中国人が言うのなら意味は理解出来る


けどそうじゃないとしたら,零音が元々奴らの仲間で裏切ったという意味だろう


「あまり大きな声では言えないんですけどねぇ,私も元はバウンティハンターだったんですよぉ」


「奴らは仲間か?」


「今は敵ですねぇ,私が中国へやって来たのは彼女達バウンティハンターと同じでした,けど私は彼女達を裏切ってこちら側へ寝返ったという事になりますねぇ」


「…鈴々知ってたか?」


「いえ…私も初耳です」


「寝返った理由は?」


「中国政府にいた頃に奴らの存在を知りましてねぇ,倒すのに理由は必要ですかぁ?」


「じゃああれか,別に形勢が不利とかで寝返った訳ではなく純粋に中国政府が悪だと思ってこちら側へ加勢したんだな?」


「その通りですよぉ,あ,こちら話してるだけでは物足りないと思ったので紅茶淹れてきましたよぉ」


「あぁありがとう,元々向こう側って事は情報はあるんだろう?」


「えぇ,とは言っても目的は金目的でしたので,出せるとしたら警戒対象ですかねぇ」


「それでも構わない,教えてくれ」


「ではまずオルク,私の部隊の隊長の方ですねぇ,元電気技師,指揮能力はあまり高くはありませんけど色々と妙な物を作ってましてぇ,実戦で使用された際の被害は大きそうですねぇ,次にスゥガ,子供の狙撃手…恐らくあの時に対峙したと思いますけど殺しましたぁ?」


「……んやぁ…流石に子供を殺す気にはね〜」


「はぁ…殺さなかったのか…」


「武器は破壊したしあの場はなんとかなったからいいかなぁって」


「…まぁうちもアルがいるから気持ちは分かるけどな…」


「それでですねぇ,このスゥガという狙撃手は類を見ない程の凄腕ですねぇ,元奴隷だったみたいでオルクはその特性を活かして命令を与えていましたねぇ」


「奴隷…命令……」


だから命令以外の事をしなかったのか


「そして最後に星川,彼女は私と同じ化学兵です,それも私よりも過激な薬品の調合,使用をしてましたねぇ」


「バウンティハンターも実力者は多いな…」


バウンティハンターも敵に回すと厄介だ


今回は中国政府側についているとなるとまた出会す可能性がある


「…って事はオルクとスゥガはまだ生きてる…星川は?」


「私が殺しましたよぉ?」


「…要注意だな…」


「あ……ちょっといいですか?司令と話せる機会を設けられました,今なら大丈夫みたいです」


「それじゃあ先に済ませておくか,厄介な事は早めの方がいい」


「……緊張するなぁ…」


「自分の父親なのに?」


「…話すのは何年振りか分からないくらいですから…」


「大丈夫ですよぉ,気持ちが落ち着く様にハーブティーを淹れてきましたからぁ」


「ありがとね零音…あ……美味しいこれ…!」


「ふふふ,自信作ですよぉ」


「へぇそんな美味しいのか?………私紅茶には詳しくないけど確かに美味いな…」


「ほんと…美味しいわねこれ」


「美味しいじゃないか,お菓子も欲しくなってくるね」


「はいはいそれはあとでだ,とりあえず話に行くぞ」


中国解放軍/司令室


司令室…というよりかは社長室の様だ


よく映画とかで見る玉座の様な椅子


そしてそこに腰掛けているのが中国解放軍の司令


鈴々の父親だろう


「久しぶりだな鈴々」


「お久しぶりです,お父さん」


「…………」


随分と強面だ


まさに司令と呼ぶに相応しい風貌


鈴々の印象とは真逆だ


「話があるそうだな」


「…私は解放軍を離れます,今まで話せなかったけど…どうしても話したくて…」


「離れるだと?自分の使命を忘れたか?」


「私の使命は戦争を無くす事,魔族の力に染まるのは間違いです…!」


「違う,我々が魔族の力を求めるのは抑止力にする為だ,その為には中国政府を滅さなければならない,奴らの様に力に溺れるのは間違った使い方だ」


「それでも…!それならそんな力最初からない方が…!」


私達は何も話せない


これは鈴々と父親との問題だ


それに鈴々の言っている事は正しい


確かに力を抑止力にする事によって戦争を食い止める事は出来るだろう


そしてその力は間違った使い道をしてはいけない


…いずれ私達傭兵という存在も必要となくなるまで


それならば最初からそんな力はない方がいい


ましてや魔族…奴らの力を利用する事は間違いだ


「お前は何も分かっていない,魔族の力は必要だ,だが間違った使い方をする奴は滅ぼさなければならない,その為に我々は戦っているのに何故分からん!」


「どうして…自分の力を信じないの……他人の力なんて…魔族の力なんて……!」


「呪え,呪え,メビウスの輪…世界を歪め…巻き戻せ」


零音の声


零音の言葉


何故?


その言葉は私が知っている言葉


いや,私しか知らない筈の言葉だった


「え………」


司令が倒れる


頭部に弾丸が撃ち込まれた


後ろを振り向くと銃を構えていたのは零音だった


「助かりましたぁ,私一人じゃ司令の元へ辿り着くのは不可能でしたのでぇ」


「お父……さん……?」


「……………」


「零音…なんのつもりだ!?」


銃を引き抜く


しかし銃は手から落ちる


力が入らない


体が震える


その場に立っている事も出来ずに私達は膝をついた


「美味しいかったですかぁ?ハーブティー」


「ぐっ……毒か………」


「本来なら貴女達を巻き込む予定はありませんでしたけどぉ,やむを得ない状況ですので利用させてもらいますねぇ」


「待て……零音……!!」


「ぁ……ぐ……」


視界がぼやける


耳鳴りが鳴り止まない


意識を保つ事さえも


「言いましたよねぇ?私は嘘吐きだって,それをよく覚えておいてくださいねぇ」


零音が立ち去っていく


私達はそれを追う事も出来ない


ただその場で突っ伏しながら


零音が立ち去っていくのを見る事しか出来なかった


-Next war-

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