True Eye 【season1】 -War 6- 動き出す闇
【Phase1:不穏な序章】
TE拠点/食堂
私達隊員には毎朝欠かせないものがある
それは何か
当然,朝食ね
聞いた話では朝食を食べないと効率が50%を下回るとか
一部の隊員は朝を食べない事が以前はあったけれど社長命令で今は全員朝食を取ることが義務付けされている
そして朝食を用意するのは調理担当を命じられた隊員
最初の頃はローテーションで朝食を作る事になっていたけれど今は特定の隊員が担当している
私もその内の一人
何故そうなったのか,理由は単純
料理を出来ない隊員が多過ぎるからである
「朝から肉料理とか精が出るね,ところでこれ何の肉?」
「肉だ」
「いや…だから何の肉なんだい?」
「肉」
「そういやV,昨晩捕虜の尋問を担当してたよな?」
「あぁ,必要な情報は聞き出した」
「そいつはいい事だ,つまり捕虜は用済みになったんだよな?」
「あぁ,処理は済んだ」
「仕事が早くていい事だ,で…処理した捕虜はどうなった?」
「今更聞く事か?」
「それもそうだ,で…この肉は何の肉だ?」
「肉だ」
得体の知れない肉を料理に使ったVは厨房の担当から外された
十中八九あの肉の正体は……
いえ,やめておきましょう
「出来たっす!!!」
「鍋なのはまだいい…けど鍋そのまま渡す奴がいるか?」
「洗い物面倒じゃん?」
「まぁいいか…うわ……なんだこの赤さ…」
「カレンホットスペシャルっす!」
「なぁ荒川…お前食ってみろよ」
「え…いやだよ,こんなの人が食べる物の色をしてないじゃないか」
「気分悪くなってきた…」
「きゃぁぁぁぁ!!アレンくんが火を吹いてるわよ!?」
「お前もう厨房下りろ」
到底人が食べるに値しない程の激辛料理を作ったカレンも厨房から外されている
本人の味覚が弱いのもあるけれどあんなものを食べたら命が危険に晒されるわね
「……………」
「……………」
「…ねぇ,これ朝食よね?」
「そうやよ?」
「私から見ると栄養食に見えるんだけど?」
「一日分のエネルギー食やよ〜」
「これ食堂で配る意味あるか?」
「おいカルピス!!!栄養食なのはまだいい!なんだこのクソ不味いフレーバーは!!」
「新発売のドリアンカルボナーラ味やよ〜」
最早料理を作らないカルネスヴィーラも論外
栄養食は便利だけれどそれに頼ってる人が多過ぎる為最近は得体の知れない味のフレーバーで栄養食離れを測ろうとする企業もある
しかもこれが何ダースも仕入れられた時は地獄を見たわね
「日本の朝食はこんな感じらしいです」
「アルもしっかりとまともな料理作れたんだな」
「卵料理か,懐かしいな」
「ん〜美味しそうな匂いね」
「……………」
「……………」
「……おい……これ料理か?」
「……………」
「死んでやがる……」
何をどう調理したらこんな味になるのか
あまりの不味さに失神する隊員が続出した料理を作ったアルも厨房担当は相応しくない
「なぁルーシー…これ何?」
「酒」
「エイミー!!てめぇこれただのデリバリーだろうが!!」
「だって私作れませんし〜?」
「凛さん…これ何?」
「採れたて新鮮な虫料理ですよ?」
「蒸し料理じゃないんだ…」
「うわ…マーマイトだ…」
「何か不満?」
「おぇ……何この甘さ…」
「歯が溶けそう……」
そんなこんなを繰り返して厨房を任される隊員は次第に固定化されていった
まぁ…確かに傭兵はほとんど調理等をしないから壊滅的な料理が出来上がるのは分かりきっていた事だけど…
「おはようシルヴィア,今朝のメニューは何?」
「おはよう美香,パンケーキ作ってるからもう少し待ってね」
「パンケーキ?」
「ふわふわした美味しい食べ物よ,アレンくんは初めて?」
「肉,食べたい」
「我慢してね,バランスは重要なんだから」
この日の厨房担当は私
隊員達一人一人の要望を聞いていたらキリがないのでメニューはその日の固定
今朝のメニューはパンケーキ
ただ焼いてトッピングは隊員達に任せている為それぞれ好きな味に仕上げる事が出来る
隊員によってはアレルギーや好み等もあるので作ってはいけない物もある
特に問題なのはV
両親でも殺されたのかと言わんばかりに茄子を見るとキレる
最早アレルギーや好き嫌いではなく理不尽な程ね
その他にも隊員達は些細な事でキレる人もいる
厨房担当は文字通り戦場に近い
これもまた戦争なのかしら…
「あー……おはようシルヴィア,私にも皿くれる?」
「あら咲夜,なんだか随分とご機嫌斜めね?」
「…私は朝一でブリーフィングを行うから集まれって言ったはずなんだけど…」
「誰も来なかったの?」
「見事にね,まぁ朝食が大切だってのは分かってるからいいんだけどさ」
「話は食べてからね」
TE拠点/ブリーフィングルーム
「よーし全員……いないか…まぁ今回の依頼はもうメンバー決まってるからいいんだけど」
「で?今回の依頼主はどこだ?」
「いつも通りだよ,回りくどいやり方」
「あぁ…世界政府か…」
世界政府とTE部隊は協力関係を結んでいる
そして依頼元が分からないようにいつも回りくどいやり方で依頼をしてくる
念には念を入れての事なのだけれど
「……あら?」
「どうした?シルヴィア」
「この名前…見覚えあるわ」
依頼主の名前欄
私には見覚えがある名前が記されていた
まだフリーランスだった頃に時折仕事をくれた依頼主だ
まさか世界政府からの依頼だったなんて知らなかったわね
「今回の依頼はまぁいつも通りテロ組織の壊滅,世界政府絡みって事は異能体の存在も視野に入れておかなきゃいけない」
「私っすね」
「カレンは当然,それと今回敵はかなりの規模に加えて情報も膨大,その為部隊を2つ作る,敵拠点に忍び込んで情報を入手,そして情報入手次第残りの部隊で一気に制圧をかける」
「つまり私ね」
「ソフィーとシルヴィアの2人には先行して拠点に忍び込んで貰う,あとは一応アレンも今回同伴させる」
「え…なんで…」
「アレンとソフィーは仲が良いから,それにこいつも拠点で腐らせておくより任務で活躍出来た方がいいと思ってね」
「嫌がらせの間違いじゃない?」
「今回は真面目だよ」
「今回は,ね」
「あと荒川,今回現場での指揮はお前に任せる」
「私が?」
「前々から私1人で指揮を取ってたらもしもの事態に対応が出来ないと思ってね,私も今回同伴するからまぁ実地試験だな」
「荒川弾頭を使わない事を祈っておけよ」
「使ってたまるか」
「…1つ質問いい?私とソフィー,アレンくんで拠点に忍び込むのはいいんだけど…異能体の存在が確認された時の対応は?」
「交戦はなるべく控えろ,異能体の特性が分かるまでやり合うのは不利だ」
「あとは実際に見るまで判断は出来ない…ね」
今回の世界政府からの依頼
テロ組織の情報の奪取及び組織の壊滅
敵の規模も考えれば時間もあまり無いわね
拠点に忍び込むメンバーに私が選ばれたという事は屋内戦,つまり私が戦闘を担当する事になる
銃よりもナイフでの戦闘を得意とする私には適任ね
「あ?そういや今回私は行かなくていいのか?」
「Vは今回外れてくれ」
「なんでだ?」
「……最悪の事態に陥った場合カレンに全て爆破させる,文字通り私達ごとね」
「聞いてないんだけど?」
「今言ったろ」
「…おい…今回のテロ組織って連中か?」
「バグの連中だよ,あいつらの危険性分かってるだろ?」
バグ
主にバイオ兵器をテロに使用する集団と聞かされている
極めて悪質なテロ組織
世界政府からもマークされている程にね
「…見捨てろって言ってんのか?」
「私達を信じろって言ってるんだよ,そんな事態にならない為に万全の準備をしていくつもりだし」
「…アレンを随伴させたり指揮を荒川に取らせてるのにか?」
「2年前を忘れたか?」
「…………分かったよ」
「2年前…?」
「シルヴィアはまだ知らなかったな」
2年前TE部隊はテロ組織:バグの拠点壊滅を実行している
しかし作戦は失敗に終わったらしい
壊滅はさせたけれど制御を失ったバイオ兵器が飛散し周辺地域に壊滅的な被害が出たみたい
結果的にバグによるテロは激減したが生き残りがまだ再結成されて日々バグによるテロに危険に晒されている
今回の依頼は2年前の落とし前を付けるという意味もあるらしい
「今回の任務は2年前の失敗を犯すつもりはない,そして世界政府も消したがってるという事は現場にいるのは私達だけじゃないとも思ってる」
「ハイエナ共か…」
「確かこの前の…」
「あぁ,連中だ」
ハイエナ
そう呼ばれている組織は1つしかない
Valentina Shadow Tactical Company
通称VSTCと呼ばれている傭兵企業
同じ傭兵企業ではあるものの私達は目の敵にされている
依頼は同様だとしてもこちらへも容赦なく攻撃を仕掛けてくる
第三勢力というわけね
「こちらからの交戦は禁止だ,ただ向こうから来た場合は…」
「……なるほどね」
あの時と同じ
私がTE部隊と出会った時の様に依頼主である世界政府は確実に壊滅させる為に複数の組織へ依頼を飛ばしているという事
要約すると私とソフィー,アレンの3人はテロ組織:バグの所有しているバグの研究データの確保
そしてその無力化もしなくてはいけない
その後後方部隊と協力して敵の制圧
予想以上にハードな依頼ね
「前回私は負傷によって指揮を取れなかった,もしもの時は荒川の指揮が頼りだ,潜入部隊の指揮はソフィーが担当してくれ,いつも通り無線は大した意味も持たない,だから後方部隊の動きを見て指示を頼む」
「任せてちょうだい」
「それじゃいくぞ,作戦開始だ」
悪質なテロ組織
必ず壊滅させなければいけない相手
でも嫌な予感がする
この胸騒ぎは一体…?
「シルヴィア,ちょっとだけ話いい?」
「シュガー…どうしたの?」
「今回の作戦…殺してはいけない人がいる,それだけ頭に入れておいて」
「ちょっと待って…シュガー何か知ってるの?」
「ううん,知らない,けど分かるの」
「どういう事…?」
「それだけよ,忘れないでね?」
殺してはいけない人
そもそもシュガーは先日入ったばかりの隊員
任務の経験もない,ましてや敵組織に関しても情報を持っていないはず
何故わざわざ私にそれを伝えたのかしら?
悪い人ではないけれど正直怪しいというか…
少しネジが外れている印象がある,シュガーに関しては
とても傭兵には似つかわしくない
話に聞くと元々はとある財閥のお嬢様みたいだけれど家出した理由は話してくれない
けれど社長のルイス同様射撃コンクールでウェポンマスターの称号を受けるくらいだから射撃センスはピカイチ
咲夜も言っていたけれど本当に変人しか集まらないのねTE部隊…
「それにしても…世界政府ね……」
私自身はTE部隊へと来る前はフリーランスの傭兵だった
依頼は様々だったけれど中には繰り返し何度も依頼を頼んできた人物がいた
それが偶然にも今日の依頼をしてきた人物
更に言えば世界政府の人間らしい
私自身はまだ世界政府に関する情報はあまり与えられていないけれどTE部隊とは一応協力関係にある
問題は白狐が世界政府を毛嫌いしているのだけれど隊員ではない白狐はまぁいいでしょう
「装備は…このくらいかしらね」
私の装備はナイフ
あとは万が一の際にハンドガンが一丁
「…………」
今回の任務
無事に終わればそれに越した事はない
けれど…
何だろうこの不吉な予感
シュガーの発言に関してもそうだ
シュガーは一体何を知っているのかしら?
けれど聞いても答えてはくれない
それに殺してはいけない人と言われてもそれが誰なのかも分からなければどうすることも出来ない
「考え事か?」
「いえ…大丈夫よ咲夜」
今は目の前の事に集中しないと
2年前の失敗での被害は壊滅的で2度と起こす訳にはいかない
私は今自分にできる事をやるだけ
その為にTE部隊へと加わった
1人ではなく全員の力を合わせる
そうすればきっと不可能な事なんてない
【Phase2:第4の勢力】
潜入部隊/テロ組織バグ:拠点内
とても静かだ
嫌な静けさは不安な気持ちを煽る
嫌な感じね...
「…クリア,拠点にしては随分と手薄ね」
「そうね…敵の規模は大きいんじゃなかったかしら?」
「考えられるのは…私達以外に戦力を割いているのか…くらいね」
潜入する際にも見張りの敵兵の姿はあったけれど随分とすんなり入れた
ここまで順調だと寧ろ罠なんじゃないかと思ってしまうくらい
「シルヴィア,これ,なに?」
「非常用ベルね…絶対押しちゃだめよ」
「この子敵陣の真ん中に置いてきた方が使えるんじゃない?」
「可哀想でしょ」
本来アレンは正規の隊員ではない為任務に来る事はない
けれど咲夜に何か思惑があるのか今回は私達に同伴させている
覚えはよく,銃の扱いも見ただけで覚えたというのだから才能はあるとは想うけれどそれ以上にソフィーに対しては何かと噛みついている
一体この2人の間に何があったのか…
「待って…この先監視カメラがある…」
「ここも…か,無力化しようにも見取り図がある訳じゃないし…どうするの?」
「……裏口を使いましょう」
「裏口なんてあるの?」
「ん…」
ソフィーが指差したのは天井……の点検口
なるほど,屋根裏なら監視カメラは存在しない
「問題は…どうやって登るの?」
「アレン,そこに四つん這いになって」
「べーっ!」
流石にアレンの上に乗っても高さは足りないでしょ…
「私が上に行くわ,けど全員で行くの?」
「二手に別れた方がいい,目標の場所が見当たらない以上時間をかけたくない,それにどのみち誰かからカードキーは拝借しなくちゃいけないし」
「それならソフィーの方が適任ね,アレンくんは?」
「私にいい考えがある,シルヴィアはこのまま屋根裏を通って部屋を探してちょうだい」
「この白髪ネギ,やだ」
「あとで遊んであげるから我慢して」
「…それじゃまたあとでね」
屋根裏のスペースは思っていたよりも広い
這って移動する事もなさそうね
バイオ兵器のテロ組織
技術力は極めて高いと見てよさそうね
建物の構造からもそれが分かる
屋根裏なら敵と鉢合わせる心配はないけれど問題はどうやって目的の部屋を探すか…ね
「……………」
『殺してはいけない人がいる』
シュガーのあの言葉が頭の中をぐるぐると回っている
テロ組織に属する人で殺してはいけない人なんて存在するのかしら
(ここは…)
暫く天井裏を通りどこかの部屋の上へと出る
辺りに人はいない
私は室内へと降りて様子を伺う
「培養カプセル…これがバグね…」
バイオ兵器
それも虫の形をしているのだから気色が悪い
「研究データは…この端末にはないわね…」
あくまでこの部屋はバグの制御をしているだけの様ね
「カメラの操作は…無理ね,ハズレだわ…」
この部屋には目ぼしいものはない
再び屋根裏を通り先へと歩みを進める
「…………」
通路から声が聞こえる
組織の人間かしら?
「…次は?」
「連中は口ほどにもない,所詮はハイエナだよ」
「けど客だったんだろ?」
「矛先がこっちに向いたら潰すしかない,それに上客はまだまだいるさ」
ハイエナ
VSTCの事に間違いなさそうね
「んで確か今は取引先が…」
「あぁ,さっさと向かうぞ」
2人はそのまま廊下を歩いていく
大した情報は得られなかったけどVSTCもこの件に関与しているみたいね
『聞こえるか?応答してくれ』
「咲夜…?無線通じたのね…」
『先ほどVSTC隊員の姿を確認した,随分とボロボロだったけどそっちに向かってる,恐らく拠点内での戦闘が予想される,無線閉鎖が解かれてるのはその為だ』
「…なるほどね,早いところデータを見つけないと…」
『もう1つ知らせる事がある,こちらから雷鳴重工の輸送車を目視した』
「雷鳴重工…って世界政府の…」
『世界政府と繋がりのある兵器開発の企業だ,表向きは世界政府傘下の企業,こちらから被害を出す訳にはいかない』
「……つまり雷鳴重工の人には危害を加えてはいけないって事ね…VSTCが戦闘を始めたらどうするの?」
『…恐らくどさくさに紛れて逃げていくだろうけど…今回の作戦は世界政府からの依頼,内容には含まれてはいないけど世界政府の事だろうしVSTCから守れって事だと思う』
「…テロ組織を潰す為に私達とVSTCに依頼を頼んで更に雷鳴重工の人達の護衛までしろって事なの?厳しいわね…」
『人使いが荒いとしか言えないね,ところでソフィーとアレンは?』
「今は別行動中,連絡は?」
『こっちから無線が届かない,地下室でもあるのか?』
「分からない…こっちから伝えておくわね,オーバー」
状況はかなり悪いわね…
後方からはVSTCの隊員が拠点へと迫り,この拠点内には雷鳴重工の人がいる
戦闘が始まれば危険に晒される事になる
テロ組織,VSTCの両方を相手にしながら雷鳴重工の人を守る
しかも研究データまで見つけないといけない
時間が足りるのかしら…
(ここは…研究エリア…?)
「B-30の様子は?」
「活動時間に問題がある,まだ調整不足だ」
「よぉお前ら,入ってもいいか?」
「…雷鳴重工の方でしたか,どうしてここに?」
「俺ぁ話は向いてねぇからな,お前らの実験生物を見させてもらうぜ」
「なるほど…ではこちらに…」
(今のが雷鳴重工の人…)
スキンヘッドで大柄な男性
それに...こんな時期にタンクトップ?
「ん?」
「……!」
まずい,今明らかにこちら側を見られた
気づかれたかしら…?
「セルゲイ様,どうしましたか?」
「…いや…鼠が…いやゴキブリでもいんじゃねぇか?ここは」
「G型はいますよ,もしよろしければそちらもお見せしますが」
「あぁ,ぜひ頼むぜ」
…どうやら気づかれてはいないみたいね
けれどここならデータは取れるかしら
「…………だめか…」
『こちらソフィー,シルヴィア聞こえる?』
「えぇ聞こえているわよ」
『今からちょっとした騒ぎが起こる,その間に情報を見つけ出して貰いたいの』
「…VSTCがこっちまで来た?」
「あいつらも来てるのね…こっちで陽動起こすから連中は関係ないわ」
「…可能な限り見つける努力はするわ」
『任せたわよ,オーバー』
思ったよりも時間は無い
急いで研究データのある部屋を見つけないとならない
潜入部隊/ソフィー&アレン
「さてアレンくん,約束通り遊んであげるわね」
「何?」
「あそこに人がいるでしょ?あの人にこれを渡してきてほしいの」
「これ,さっきソフィーが殺して奪ったやつ」
「偶然2枚手に入ったからね,私達が使うのは1枚でいいの,だからもう1枚は返して貰いたいのよ」
「お前がやれ」
「落とし物を届けてあげたらお礼にお菓子貰えるかもしれないわよ?」
「分かった」
一方こちらは別行動中のソフィーとアレン
ソフィーは敵兵からカードキーを入手する事に成功した
"偶然"にも2枚を入手したが使用するのは1枚で十分
不要な物はそっと返してあげようとアレンを使う事にしたらしい
「おいおっさん」
「あ…?誰だこいつ」
「これ,落ちてた」
「…カードキーじゃねぇか,ありがとな」
「お前馬鹿か?どう見てもこいつ侵入者だろ!?」
「殺すか」
銃口がアレンへと向けられる
当然だ
「あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!騙したなあいつ!!!!!」
「こちらBブロック!侵入者発見!!」
「待ておらぁ!!!」
「…さて,陽動はこれで大丈夫ね」
潜入部隊/シルヴィア
けたたましいサイレンが鳴り響く
ソフィーが言っていた陽動はこれの事ね
敵兵がぞろぞろと廊下を走っていく
今なら警備が手薄,だいぶ動きやすくなった
「…………!!!」
嫌な気配
まるで後ろから銃口を向けられている様な感覚が私を襲った
(敵…?屋根裏にまで追っ手が……?)
先程の感覚は間違いじゃ無い
確実に誰かが近くにいる
私はナイフを構えて戦闘体制をとる
こんな狭い空間でも私のナイフの戦闘技術なら遅れは取らない
「おやおやぁ…怖いですねぇ?」
「……誰?」
「ふふふ,私はただのエージェントですよぉ?」
姿を見せたのは私と同様ナイフを構える1人の女性
敵兵…ではないみたいね
「…………」
「そんな怖い顔しないでくださいねぇ?私は仕事さえ出来ればそれでいいですからぁ」
「…そうね,私も目的さえ達成出来ればここに用はない」
「賢明な判断ですねぇ,ところでこの地図の場所まで行きたいんですけどぉ」
目の前の女性が手に持っているのは何かの見取り図
恐らくはこの建物のものだろう
「…見せてちょうだ!?」
「油断大敵,今死んでましたよ?」
首元へと突きつけられるナイフ
この女まさか私を殺すつもりで…
「冗談ですよぉ,私は少なくとも敵対するつもりはないですからぁ…けど……いつか死んじゃいますよぉ?」
「…アドバイスありがとう,で…現在地が分からないと目的の場所も分からない…そもそも目的は?」
「私は研究データですねぇ,貴女も違いますぅ?」
どうやら目的は同じみたいね
敵の敵は味方ということね
地図の座標を頼りに目的の場所へと辿り着く
研究データは…これね
「短い間でしたけどありがとうございましたぁ,またどこかでお会いしましょうねぇ」
「…貴女は屋根裏に戻らないの?」
「お迎えが来ますからねぇ」
「……そう,それじゃまたね」
目的のデータは入手出来た
あとは1度ソフィーに連絡を…
「こちらシルヴィア,データは確保したわ」
『了解,咲夜へ伝えておくわ,すぐにこちらに応援に来てくれると思う,私の銃声が聞こえたら戦闘開始の合図よ』
「了解,タイミングを見計らって奇襲をかけるわ,オーバー」
恐らく混乱に乗じてVSTC隊員もこちらへ攻撃を仕掛けてくるはず
私がするべき事は雷鳴重工の人の護衛と敵への奇襲
それにしてもさっきの女性は誰だったのかしら…
「よぉ,迎えに来たぜ」
「遅いですよぉセルゲイさん,また誰か殴ってたんですかぁ?」
「それが命令だからな,データは手に入れたな?」
「えぇご覧の通りしっかりと入手しましたよぉ,あまり待たせると怒られちゃいますから行きますかぁ?」
「あ…やべぇあいつらの制御系統止めてくるの忘れてたな…」
「何やってるんですかぁ,どうするんですかぁ?」
「まぁいいだろ,こことはすぐにおさらばだ,行くぞ零音」
「分かりましたよぉ」
【Phase3:闇】
3………
2………
1………
今ッ!
「お待たせ,ソフィー」
『援護はこっちからするわ,咲夜達もすぐに来るみたい』
暗闇の場所が多い
視界は悪い
それならそれを逆手に取る
「くそ!まだいたか!」
一気に距離を詰めて切り裂く
そしてすぐさままた暗闇へ
ソフィーの援護があるけれど近くにいる相手は1人ずつ確実に倒して数を減らす
「こちらCブロック!!増援はまだか!?」
「だめです!Dブロックでも敵が出現,対応に追われてます!」
咲夜かはたまたVSTCの連中か
けれど増援が来ないなら好都合
一気に片をつける
「がばっ!?」
「ラスト…ッ!」
最後の1人を倒して周囲の安全を確保する
どうやら敵の姿はない
「クリア」
「ご苦労様シルヴィア」
「そっちもね……ってアレンくんは?」
「鬼ごっこしてるんじゃない?」
「陽動ってそういう事ね…」
「咲夜聞こえる?一先ずこっちは片付いたけど恐らくVSTCの連中もいる,別部隊が相手してるみたいだけど…」
『……か………今…』
「……?声が遠くて聞こえないんだけど…」
『今向かってる!!!おい馬鹿そんなに飛ばすな!!!』
『今宵もやってきました狂気の狂気は正気!皆様お待ちかねの荒川選手が颯爽と疾走!向かう先は失踪?いいや行き先はきっとそう!勝利のゴールライン!』
「あぁ……荒川弾頭…」
『思った以上に敵の数が多くなってきた!このまま突っ込む!ソフィー達は車輌の確保を頼む!こいつは廃車だ!』
「雷鳴重工の人はどうするの?」
『さっき輸送車が出ていくのを確認した,もうここは用済みだ,可能な限り殲滅して離脱する』
「VSTCの連中もいるから全て片付けなくても良さそうね」
「言われた通り車の確保に向かいましょう,あとアレンくん」
「無線で呼びかけてみたら?」
「使い方教えてないもの」
幸いにも車輌の確保はすぐに終わった
同時刻正面の方から爆破音が聞こえてくる
どうやら咲夜達も到着したみたいね
「いたぞ!殺せ!!」
「伏せて!シルヴィア!!」
「危なっ……あいつら…」
「……装備から見てVSTCね…」
やっぱりVSTCの連中もこの拠点の襲撃にやってきたわね...
「…どうするのソフィー」
「人数は少ない…倒しておいた方がよさそうね」
「ぁぁぁぁぁぁあ………!!!」
遠くから聞き覚えのある悲鳴が聞こえてくる
「なんだこいつ!?」
「どけぇ!!!!」
「うわぁぁぁぁ!!!!」
なんて事だろう
敵諸共アレンが落下してきた
けれどこちらにとっては好都合
「下手な真似しない事ね」
「また貴方達の顔を見るとはね,普段だったら殺してるけど」
「くそ……」
「どうせ死ぬんならここ」
轟く銃声と頭の弾け飛ぶ音
ソフィーはなんの躊躇いもなく引き金を引いていた
「ひっ……」
「死にたい?生きたい?」
「待て……俺達はただ依頼を受けてきてる…お前らと目的は同じだろ!?」
「目的は?」
「雷鳴重工のメンバー及びテロ組織の壊滅…な!共同前線とい」
「話にならないわね…けどおかしいわ…」
「確かに…世界政府が何故傘下の企業も攻撃対象にしたのかしら…」
「…殺さず聞いておくべきだったかしらね」
テロ組織の壊滅は同じ目的
けれど何故雷鳴重工の人まで?
「ソフィー,騙した!!」
「私はお菓子を貰えるかもしれないって言っただけよ?」
「ガルルルル!!!」
「落ち着いて2人とも…咲夜,聞こえる?」
『こっちも先程到着した,車輌の確保は?』
「車輌の確保は出来てる,正面から向かって西側よ」
『了解,道中の敵を倒しながら向かう,他の場所でもドンパチやってるから到着したらすぐに離脱する,準備しておいてくれ』
「了解,オーバー」
数分後に咲夜達と合流した
戦闘もあったみたいだけどほとんどの敵はVSTC側に釘付けだったみたいでこちら側の警備は手薄
離脱するのに好都合だ
「随分と静かになったな…向こう側も終わったんだろ」
「鉢合わせになる前にいなくなった方がいいかもしれないね,帰りの運転は」
「荒川は後部座席」
作戦が終わった後の現場は死体の山しかない
今回の作戦ではカレンが同行しているが拠点の爆破が行われていないのには理由がある
テロ組織の壊滅なら拠点ごと爆破した方がいい,けれど今回は違う
2年前拠点を爆破した際に制御不能になったバイオ兵器が周辺の地域を襲ったからだ
生半可な爆破ではただバイオ兵器を飛散させるだけの結果に終わる
最悪の事態に陥った場合は過剰なまでの爆薬でバグ諸共吹き飛ばすつもりだったらしい
けれど今回の作戦はスムーズに終わった
その為爆破はせずに敵兵のみの殲滅,残りは世界政府が何とかしてくれるはず
「にしても…随分と簡単に終わったな…荒川が指揮する事もなかったし」
「それ私達に言える?中は結構大変だったのよ」
「まぁVSTCの連中がいい囮になったって事だな,研究データもあるんだろ?」
「ここにあるわよ,でも妙な事はあったわ」
「妙な事?」
「1つは私達以外のエージェントに会った事,目的は同じだったから敵対はしなかったけれど…」
「……殺さなかったのか?」
「え?えぇ…そうだけど…」
「…シルヴィア,それは判断ミスだぞ,もしそのエージェントが他のテロ組織だったらどうする?」
「……ごめんなさい,そこまで考えてなかったわ…」
「……でもまぁ恐らく世界政府の依頼を受けてるとは思うけどね,あり得る?私達TE部隊,VSTC,それに加えて更に別のエージェント…こんなたくさん集まるのは…」
「ソフィーの言う通り,恐らくは世界政府から任務を受けたエージェントだと思う,けど油断はするなって事だよ」
「…あとVSTCとも交戦したわ,目的はテロ組織の壊滅までは同じ,私達と違うのは雷鳴重工の人もその対象だったこと」
「……雷鳴重工は世界政府の傘下の企業…世界政府が消したがるとは思えない…恐らくVSTCは別の依頼で動いてたんじゃない?」
「そうなのかしら…けれど随分と集まってたのね…」
「同業者と鉢合わせるのは珍しい事じゃない,敵の敵は味方,時には協力する事もあるならなー」
……そういえばシュガーが言っていた言葉
殺してはいけない人というのは雷鳴重工の人の事を言っていたのかしら?
けれど雷鳴重工の人がいるのは咲夜も輸送車を確認するまでは知らなかった事
何故シュガーが知っているのかには繋がらない
拠点に帰ったらもう一度聞いてみる必要があるわね…
『咲夜さん!聞こえますか!?』
「凛?どうした?」
『今どこにいますか!?』
「こっちは任務完了,施設からは随分と離れた場所だけど…何か問題あったか?」
『すぐに施設から離れてください!もっと遠くへ!!』
「ちょっと待て…一体何があった?」
『聞こえるか咲夜』
「ルイス,何か問題起こったか?」
『簡潔に伝える,今し方とある施設から核ミサイルが発射された,弾道の計算をしたところその施設へ向けてだ』
「……は?」
『今車だな?座標を送るからそこへ向かってくれ,俺達も今潜水艇でそちらへ向かっている,辺り一面吹き飛ぶぞ』
「…到達時間は?」
『約20分…間に合うか?』
「間に合わせるしかないだろ…コノエ運転を代わってくれ」
「……核ミサイルなんて…なんで……」
「ルイス,誰が飛ばしたか分かるか?」
『発射されたサイロは数年前に破棄されたサイロだ,何者かが侵入して発射させたんだろう,目的は不明だ』
「…世界政府はなんて?」
『返答はない,恐らくは…』
「……あいつら加減ってのを知らないのか…」
「過剰ね…」
「あぁ……」
核ミサイルでの施設の破壊
確かにそれならテロ組織やバイオ兵器諸共壊滅させる事が出来る
けれどその影響は大きい
放射能による汚染を犯してまでもやる必要があるのかしら…
大急ぎで座標のポイントまで車を走らせる
施設からかなり離れてはいるけれど万が一の場合もある
そしてその万が一が起こった際に被害は…考えたくもない
「ダサい車でご登場だな」
「どうせ使い捨てだし,早いところ海底に潜って逃げよう」
幸いにも核ミサイル到達前に潜水艇に合流が出来た
あとはこのまま海底へと潜るだけ
衝撃の威力は大きいけれど地上にいるよりはマシな方
「シルヴィア,データを」
「はい,これね」
「ご苦労,皆体を休めてくれ」
海底へ潜航してから数分後
遠くでの轟音と水中の中にまで伝わる衝撃波が潜水艇を襲う
十分な距離を確保した為被害はなかった
「…一歩間違えば私らごと吹き飛んでたぞ…何考えてるんだあいつら…」
「そもそも核ミサイルを使用してまで吹き飛ばす理由がねぇ,制御不能になったバイオ兵器ごと殲滅するにしたってやり過ぎだ」
「…俺もそれには同感だ,俺達は世界政府と協力関係にあるがあんなやり方をされたら黙っている訳にもいかない,世界政府とは現在連絡を取り合ってるからもう少し待ってくれ」
「あいよ」
「おやつ,どこ?」
「あー?シュガーも来てるからあいつに砂糖でも貰ってこい」
「……………」
僅か数時間の任務だったのに長い様に感じた
一気に疲労感が私の体を襲う
大した戦闘もしていないのにも関わらずにね
「随分疲れてんな,そんな荷が重かったか?」
「いえ…大した事はしてないのだけど…」
「ストレスか?」
「ストレス……そうかも…」
知らないというのはストレスになる
私は理由を聞かなくちゃいけない,シュガーに
出発前に言われたあの言葉の意味を
潜水艇/第五区画
「シュガー,話いいかしら?」
「あらシルヴィア,お疲れ様,いいけれど…」
「…貴方に言われた通り今回の任務,確かに殺してはいけない人はあの場所に存在していたわ,そしてそれを守った,けど咲夜もあの場に訪れるまでは知らなかった事をどうして知っていたの?」
「…………」
「答えてシュガー,貴女は何を知ってるの?」
私達は仲間だ
些細な隠し事はあるだろうけれど今回の事には目を瞑れない
その理由は私達の知らない情報を知り得ていたからだ
もし外部との繋がりがあり,シュガーが私達を監視,もしくは裏切るつもりなら…
「夢ってどう思う?」
「夢…寝てる時に見るもの?それとも自分がなりたがってるもの?」
「前者の方,私はよく夢を見る…自分が望んだ世界を自由に歩いたり現実では不可能な事をやったり…ね」
「…それが何か関係あるの?」
「…私はその中の夢で時々不思議な夢を見る,昔からずっと…正夢と言った方がいいかしらね」
「…つまり夢で見た事を私に伝えた…と?」
「ちょっと違うかな…私が見た夢……それは死ぬ夢よ」
死ぬ夢…という事は悪夢か
私も時々悪夢を見る事はある,辛いものね…
「…けど夢は夢,確定されている事じゃない,だから貴女に伝えたかったの」
「…どういう事…?」
「私は過去夢を見て実際にそれらを体験してきた,そしてその夢はある程度コントロールが出来ることが分かったの,それは正夢というより未来視」
「…未来が見えるの?」
「貴女達の呼び方をするのなら異能…多分これが私の異能なんだと思う,シルヴィア…今日誰かに会わなかった?ちょっと不思議な口調の女性に…」
不思議な口調…
恐らくはあのエージェントの事ね
「確かに遭遇したけど…もしかして殺してはいけない人ってその人の事?」
「うん,私は夢で最悪の未来を見たら対策を考えるの,そしてそれを思いつくと次は違う未来として夢に現れる…彼女は重要な存在なのが私には分かる」
「…雷鳴重工の人じゃなかったのね」
「雷鳴重工…?その人達はーーー」
「お前達こんな場所にいたのか?集まってくれ,話がある」
「えぇ分かったわ,で…シュガー何か言おうとしてたけど?」
「…ううん,大丈夫,行きましょう」
潜水艇/第一区画
「集まったな,一先ず共有しておきたい情報があるから伝える,先程の核ミサイルの件だ,世界政府曰く自分達ではない…との事だ」
「…じゃあ誰なんだ?」
「その事だ,破棄されたとは言えサイロには複数の監視カメラがある…が,それも犯人によって無力化されていた」
「つまり情報は無し…かぁ…」
「そうでもない,幸運な事に犯人は監視カメラを破壊ではなく無力化しただけで動いてはいた,通常ならデータのサルベージは不可能…だがステラが解析した結果犯人である2人組の姿を入手した」
モニターに映し出されたのは2人の女性
一方は黒髪でもう一方は白髪,身長や顔もよく似ている
「この2人…そうだな…仮称として双子と呼ぶ,この双子は世界政府が危険人物としてマークしていた元世界政府の獣人との事だ,そして俺達にこの双子の捜索を依頼された」
「…他に情報は?」
「残念ながら他に情報はない,依頼と言っても俺達が見かけたら拘束する程度に思ってくれて構わないだそうだ」
「危険人物…って方の情報は?」
「黒髪の方の獣人,名前はクロム,世界政府元研究員,主にウィルス等の開発に携わっていたらしい,だが次第に行動がエスカレートしていき危険なウィルスを製造した為処理を試みたところ逃げられたらしい」
「…白い方は?」
「ビャクヤ,クロムの妹で世界政府の元ハッカー,姉と共に逃げ出す際に機密情報を抜き出し情報を破壊した,こいつに関しては俺は一度会った事がある」
「昔の女か?」
「黙ってろ,こいつは射撃コンクールで見かけた,俺と同様にスナイパーライフル部門で満点を叩き出した狙撃手だ」
「ウィルスにハッキングに狙撃…狙いはなんだ?」
「不明だ,だが優秀だったという事はどこかの組織に匿われている可能性が高い,任務中に遭遇したら最悪の場合殺してもいいと思ってる」
「…大体分かった,んでまだ何かあるんだろ?」
「あぁ…今回の依頼,あれは世界政府からのものではない事も分かった」
「ちょっと待て…じゃあ誰からの依頼だ?」
「それも不明だ,だが妙な点がある,シルヴィアだ」
「私…?」
「確か依頼人の名前に見覚えがあると言っていたな?フリーランスの頃から度々依頼を受けていたと」
「…えぇ確かに,同じ名前だったからよく覚えているわ」
「俺達の方では毎回名前は違っていたが依頼主がわからない様に回りくどい依頼の仕方をしていた為世界政府からとばかり思っていた,俺達は無意識の内にこの謎の依頼人に使われていた事になる」
「確かに…けど依頼自体はまともなものだった…何か問題あるかしら…?」
「…世界政府によれば俺達の実力の高さを理解している,その為俺達に依頼を任せた際には他の組織へは依頼をしていないらしい」
「…世界政府から認められているのね…私達TE部隊は…」
「…気付かないか?」
「気付くって……」
「世界政府は俺達に任せた依頼は決して他の組織や人間に依頼をしない,シルヴィア,俺達と出会った時の事覚えているか?」
「……!偶然…じゃないわね……世界政府からの依頼じゃないとすれば誰かが意図的に私とTE部隊を巡り合わせた……?」
「…そういう事だ,いずれにせよこの依頼人に関しても警戒しておくに越した事はない,話は以上だ,拠点に着くまで休んでくれ」
「……………」
私とTE部隊の出会いは何者かに仕組まれていた事だったということ…?
だとしても目的はなんなのだろうか…
それだけじゃない
施設を破壊する為だけに核ミサイルを放った謎の双子
元世界政府の人間
世界政府だけではなくまた別の組織が何かをしようとしている…?
私の知らないところで何かが起ころうとしている
今回の件はその序章に過ぎないのかしら…
どちらにせよ私は傭兵,TE部隊で戦う者として自分の使命を果たさなくてはいけない
例え敵が誰であれ
大きな存在だとしても握ったナイフを決して離さない
死んでいったあの人の為にも,私自身の為にも
この目で戦争の終わりを見届けるまでは
-Next war-
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます