第8話 尾行
私は隼人の言葉を聞いてもう落胆していた。
「隼人には好きな人がいた…私は勝てない」
そう呟くと重い体をベッドから起こした。
朝の日差しが薄暗く感じる。
「憂鬱だな…失恋ってこんなに重いんだ」
そう呟いているとコンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「お姉ちゃん入るよ…休みだからってもう起きないとだめ、、大丈夫?」
「えっ」
「目がすごい赤いし、、枕もすごい濡れてる」
そりゃそうだ私はずっと涙を流していたのだから。
「お姉ちゃん、もしかして失恋しちゃった?」
「う、、うん」
そう言うと、妹は私の横に座るとぽんぽんと肩を叩いてくれた。
「大丈夫、お姉ちゃんにはまた新しい良い人が見つかるよ、だから元気出して」
そう言って慰められると少し気持ちが和らいでいく。
「ありがとう咲希、少し良くなったわ」
「それならよかったよ」
「でも、こんなことで妹に頼るなんて頼りないお姉ちゃんだよね」
「大丈夫、お姉ちゃんはいつも頼りないよ」
「それは貶してるよね」
「ごめん、ごめん冗談だよ」
考えてみると妹は私の気持ちを紛らわせるために冗談をついてくれたのだろう。
私に似ないですごいしっかりした妹だ。
「さっ今日は私のネッ友さんが会いにくる日だから私行くね」
「えっもう行くの?」
「この前行くって言ってたじゃん」
「そうだっけ?」
今日は妹のネッ友の友達に会う予定を立てておりその時、忘れていたが私も心配で着いていくことにしたのだ。
私は急いで服を着替え身だしなみを整えてバレないように後をつける準備をし始めた。
朝ゆっくりしていると、何故か綾華さんはどこかに行く準備をしていた。
「あれっ?綾華さん何か用事があるんですか?」
「ええ、今日は日本にいるネッ友さんからオフ会しようって話になってるからね」
「それ、大丈夫なんですか?」
俺はネッ友ということもあり少し心配してしまう。
「あっ!そんなに心配しなくていいよ、相手も女の子だもん」
「それでもです、今のご時世何があるかわからないじゃないですか」
「君も心配性だね〜」
僕はこっそり着替えてバレないように部屋にある洋服で少し変装して家を出た綾華さんを追った。
綾華さんが向かったのは近くの大きな駅だった。
僕はバスで向かっている綾華さんにバレないように一駅ずらしてバスに乗ったり列に並んでいるふりをしてストーカーみたいなことをしてなんとか着いていった。
駅で待っていると綾華さんに話しかける人がいた。
遠くから見てどんなことを言っているかわからなかったが会話が弾んでいたようなのでどうやら本人に会えたようだ。
しかし本人は綾華さんよりも年下の人だった。
いや、これ相手の方が危なかったんじゃないかな?
確かに大学生…でも危ないかもしれないがさらにそれよりも年下だと見ているこっちが怖くなってきてしまう。
見ていると僕の他にも二人を見ている人がいた。
(あの人、僕みたいにあの二人を見てる…もしかしてあの子を見守ってるのか?)
そう疑問を持ちながらも少し場所を移動してさらにそれの着いていった。
場所は駅から少し移動してバスに乗った、
バスは少し混んでおり僕は座れたがその隣にはさっき見ていた人が乗ってきた。
チラッと見てみると、何故か目が合ってお互いに声を漏らしてしまった。
「「あっ」」
隣に座っていたのは蛍さんだったのだ。
僕はバスの中というのもあり小声で聞いた。
「蛍さん?なんでここに?」
「隼人こそなんでここにいるの?」
「いや、僕は…友人が心配でそれを見にきたんだ」
「私は妹がネットの友達に会うからって言って、危ないから着いてきたの」
二人の目的は一緒だった。
「ねえ、隼人、あの人誰?友人って言ってたけど、みるからに大学生だし接点が見えないんだけど」
「ああ、綾華さんのことね。小さい頃仲が良くて、アメリカの大学から一時的に日本に帰ってきたんだ」
「へ〜年上のお姉さんね〜もしかして好きだったり?」
「好きだけど、もう…ね」
「あ〜」
隼人は表情で私に伝えてきた。
それは残念そうな顔ですぐにダメだったとわかった。
(えっ?ダメだったってことは私にもまだチャンスがあるってことなのかな?)
少し期待を膨らませ隣に座っていた。
バスを降りると、喫茶店に入っていった。
「あっ急がないと置いていかれちゃうよ」
「いや、後ろからすぐ入ったらバレるだろ」
「あっ!そっか、そうだね」
そう言って少し遅れて入ることにした。
喫茶店ではテーブルの席で斜め後ろの席に座ってチラッとみることにした。
席に着くと二人は何やら楽しい話をしているようだった。
すると僕らのところにも店員さんがやってきて注文をとりにきた。
「注文はお決まりでしょうか?」
何も考えていなかったがメニューの一番上にあった
「じゃあ、僕はこのサンドイッチセットを一つお願いします」
すると蛍も何も考えていなかったのか頼んだ僕に乗ってきて同じものを頼んだ。
二人を見ているとどうやら僕らと同じものを頼んだようだった。
「ねえ、蛍、あれは妹なの?」
「ええ、私の妹だけど、あなたの友人がネットの友人で本当に安心したわ」
確かに、見知らぬ人と会うのだから話をしていたとしても怖いのは確かだ。
「ねえ、隼人今も、あの人のことが好きなの?」
突然、聞かれ返答に困っているとちょうど注文品が届いた。
「まあ、来たことだし食べようか」
「話逸らさないで」
「はい」
話を逸らそうという魂胆はバレバレですぐに流されてしまった。
「まあ、好きだよ、でもそれが考えてみると好きというより憧れとかそんなのが強くて自分でも今は少しわからないんだよね」
少し苦笑いを浮かべて話してしまったがしっかり伝わっているようだった。
「でもさ、まだ近くにいれるわけだし、もっと待ってみようよ、それか、もしかしたら別の出会いがあるかもしれないし」
そうやって笑いかけてくる蛍さんに少し感情をなごまされた気がした。
「じゃあ、食べようか」
「うん!あっその前に少しお手洗いに」
「あ〜はい、行っていいよ…ちょっと待った!」
僕の声かけも虚しく二人の席の目の前を通って向かっていった。
さらにその時本人も分かったのか急に目を逸らして小走りで向かっていった。
「これはバレてるのか?」
しかし、帰ってくると斜め前の席の妹が立ち上がりこっちに向かって来た。
「お姉ちゃんでしょ?なんでここに…」
そう言って急に何故かこっちを見て少し驚いていた。
それを見ていた綾華さんがやってきた。
「どうしたの?知り合いでも見つけた?あら、隼人くん」
「あっ綾華さん」
こうして、尾行はばれたのである。
人気な君が僕に構う理由(わけ) クヨミ @kuyomitadasi
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