第4話「遠回しの告白」

急接近した2人だが、小春はあることを感じていた。それは、蓮が自分のことを本当に好きになるはずがないということだ。小春は女ったらしの蓮の策略にハマるまいと自分を戒めていた。



卒業が近くなり上山先生が最後の席替えを自由にして良いと言った。すると蓮がすかさず小春に駆け寄った。



「俺の前の席おってな」と蓮はポンと軽く、いつものように小春の肩を叩いた。



小春はそのセリフに動揺してしまった。こんなストレートな人は初めてだった。蓮の想いは真っ直ぐだ。



しかし、小春は思案した末に蓮のことが気になってる静香に蓮の前の席を譲った。



小春は内心吹っ切れていた。嫌われたな、まぁいいや、と考えた。



だが、予想とは違った毎日がやってきた。



蓮は席が離れてる小春に毎日話しかけに行ったのだ。




(なんで、なんでなの…)



蓮の本心は分からない。だけど、蓮が話しかけてくるたびに胸が苦しく、鉛のように重たい。この先、こんな人と出会うことはないだろうな、と小春は思った。




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小春は好きなアイドル誌を読んでいた。


「嵐の大野くんのどこが好きなん?」蓮は興味深々に質問した。



「天然でやさしそうなとこ」



(なんなのよ…)



嬉しさ反面蓮の堂々とした態度に戸惑いを感じていた。



(蓮は自分を好きになるはずがない…)



そればかり考えて、やはり小春は、蓮のことを好きになることだけは避けたかった。



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「永瀬くん小春ちゃんのこと好きなんじゃないかな?」愛菜がそう小春に言った。



「まさか」



(そんなわけ…ないよね)




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木々を覆っていた氷が光り輝いていた。

真冬の風がひやりとして心地よい、ある休み時間での出来事だった。




いつものように蓮は小春の席に向かう。小春は蓮が近づいてくるのがわかった。



蓮は小春の真横に行き、ポンと小春の肩を叩いた。小春はそれにいつものように動揺してしまった。



「青木さんってほんとに男慣れしてないよなぁ」



普段と変わらないテンションで、蓮がからかってきた。



「永瀬くんは女慣れし過ぎなんだよ」



小春が答えた瞬間、



「なぁ、青木さん」蓮は急に表情を引き締めた。声には重々しさが宿っていた。いつになく、真面目な感じだった。



「はい」




「だったら、俺で男に慣れたらいいやん」




蓮は小春の目を見つめていった。





突然の告白に小春は一瞬固まった。あまりの唐突な言葉に、蓮としばらく目を合わすことができなかった。





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